105.被虐待児は転生して家族に囲まれ

 僕達は急いで、アカバネ商店王都支店へやってきた。


「クロウ様、お待ちしておりました。只今貴賓室にてセシリア・・・・様という方にお待ち頂いております」


「セシリアさん?? ありがとう! フランさん」


 それを聞いたリサが少し驚いた顔になった。


 そして僕達は全員貴賓室へ急いだ。



 トントン



 中から「どうぞー」と声がした。


 どこかで聞いた事ある声だった。


 そして扉を開けた。


「アリサ!? ――ってクロウくんまで?」


「お母さん!?」


「えっ? おばさん??」


 そこには何とリサのお母さんがいた。


 どうしておばさんがここにいるのだろう……。


 驚きながら僕達は貴賓室へと入って行った。



 リサとおばさんは、何処となく落ち着かない様子だった。


「お母さん? ……どうしてお母さんがここにいるの?」


 重い雰囲気だったが、最初にリサが口を開けた。


 覚悟を決めたかのようにおばさんは話した。


「この商会の名前がアカバネだったから……気になって訪ねてみたの」


「アカバネ……?」


「ええ、私が探している人の―――、名前だから」


「え? お母さんアカバネを知っているの?」


「……、ええ」


「お母さん……? アカバネの……誰を……探して……い……るの?」


 リサが泣きそうになっていた。


「アリサ……ごめんね、今まで黙っていて……私には探したい人達がいるの、その名前は……」






















「アカバネクロト、アカバネリサよ」


 その言葉を聞いた僕は雷に打たれたかのような衝撃だった。


 何故、セシリアさんが前世・・の僕達の名前を知っているのか……。



 大きな涙を流しながらリサが話した。


「私がアカバネ……リサだよ?」


 それを聞いたセシリアさんは大きく動揺し始めた。


 そしてセシリアさんが大泣きしながら、リサの前に土下座をした。


「り……リサ? ……本当にあの子なの? ごめんなさ……い! 本当に……ごめん……なさい……」


 そう泣き崩れるセシリアさんを見ていると僕も張り裂けそうな感情が込み上がって来た。


 リサも同じく大泣きしていた。



「もしかして……由美ユミお母さん?」


 それを聞いたセシリアさんは増々泣き崩れた。


 それを見た僕もまた…………。






 ◇






 それからしばらく泣き崩れた私達三人は漸く落ち着きを取り戻した。


 それでも止まらない涙を抑える事は出来なかった。


 そして僕が黒斗クロトだと言う事も話した。


「クロト、リサ、私は本当にダメな母親です……ごめんなさい……」


 そう謝る前世のお母さんだった。


 しかし、どうしてもお母さんが僕達を見捨てたようには考えられなかった。


「お母さん、どうして僕達を捨てたのか、聞いても、いいですか?」


 そう言うとまた大きく泣きお母さんは前世であった事を語ってくれた。




 ◇




 お母さんの話は衝撃的だった。


 まさか、暴力で負っていた怪我が元となり記憶喪失になって十年間僕達が死ぬまで思い出せなかったと話してくれた。


 僕はお母さんを信じたい、だから、だからちゃんと向き合いたいから……卑怯だけど『精霊眼』を発動させた。


















 前世のお母さんの言葉には何一つ嘘偽りが無かった。


 それが本当に嬉しくて、安心した。


 僕達はわれて捨てられたんじゃないって分かったから。


 それだけで僕は救われた気がした。



 それからリサにも全て本当の事だと伝えた。


 勿論リサも全部信じると言った。


 だって、リサは現世でもお母さんの娘として十二年間一緒に暮らしたんだから、彼女がどんなに素晴らしいお母さんなのかわかっているのだから。



「お母さん、僕は、僕達は一度もお母さんを恨んだ事なんてありません。だからお母さんも……もう過去に囚われずに前を向いて欲しいです」


 リサも大きく頷き、それを見たお母さんは「ありがとう」と言い、また泣いた。



 今日が生まれてから一番泣いた日かも知れない。


 こんなに幸せな気持ちになれるなんて……。


 僕を……僕達家族をこの世界に転生させてくれた神様、本当にありがとうございます。




 こうして、虐待され続けた僕達家族は、転生した世界でまた巡り逢えた。




 ◇




 ◆セレナディア・エクシア◆


 私は魂の記憶フラッシュバックを甘く考えていた。


 そして、その魂の記憶フラッシュバックがどれだけ大きな事なのか今日目の前の出来事で実感出来た。



 私の最愛の弟、クロウティア。


 子供の頃からずっと魂の記憶フラッシュバックで苦しんでいた。


 本当は何でも出来る子で、今では王国内一番と言っても過言ではない商会の唯一オーナーでもある彼は、前世の記憶から時折激しい落ち込みを見せる。


 あんなに周りから慕われているのに自分なんてが口癖だった。



 そんな弟が今日前世の妹と出会った、それも私の目の前で。


 いや、どちらかと言えば、私の目の前で出会ってくれて本当に良かった。


 私の知らない所で……弟が遠くに行っていまう……そんな気がしていたからだ。



 前世の妹さんは、同級生のアリサさんという女の子だった。


 この子……実は『現聖女様』の娘さんだ。


 現聖女様が王国にいる事は極秘らしいけど、私は最上級職能『剣聖』だから極秘を知る事が出来た。



 しかし、それはまだ序の口だった。



 あれからアカバネ商店王都支店にやってくると、その母親である現聖女様セシリア様がいらっしゃっており……。


 彼女が弟の前世のお母さんだと言う事だ。



 泣き崩れるセシリアさん、アリサさん、そして弟。


 私はディアナちゃんと一緒に見守る事しか出来なかった。


 彼らに私が入る隙は一切ないとそう感じたからだ。


 だから、しっかり見届ける事にした。


 ディアナちゃんもそう決めたようだった。


 私達はそんな彼らを見て、何も出来ない自分の悔しさと、出会えた彼らの喜びに一筋の涙を流した。




――後書き――――――――――――――――――――――――――――――――

『被虐待児の最強転生して優しい家族に囲まれ』をここまで読んで頂き誠にありがとうございます!


実は……この話で………


続きは近況ノートにて説明致します!

因みに全然終わりませんから!まだまだ続きますから!


ここまで読んで頂いた多くの方へ、一つお願いがございます。

もし面白かったと少しでも思えたのならお手数ですが下にございます

https://kakuyomu.jp/works/16816452221187191644

から更に下にある『★で称える』を最大三回押して頂けると作者にとても力になります!


これからも面白い小説を書けるよう頑張っていきますのでこれからの新しい話も読んで頂けたら幸いです!

再度になりますが二十五万字以上読んで頂き誠にありがとうございました!

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