第7話 解放

 目が覚めると、そこにはお母さんとメイドのリーナさんとお姉さんがいた。


「あ、あぅ…………」


 何となくだけど、俺はようやく家族と向き合うことが出来た。そんな気がする。



 - スキル『感情無効(呪)』が『感情無効』へと進化しました。-


 『感情無効』

 所有者の感情による被害を無効にする。



 感情無効スキルの呪いがなくなった。


「クロウティア!」「くろうてーあ!」「坊ちゃま!」


 起き上がると三人から一斉に抱きしめられた。


 まだ少し怖いけど、とても温かい。


 俺は生まれて初めて涙を流した。――――――でも顔は笑顔になった。




 数日後、俺は屋敷内を歩けるようになった。


「クロウティア様、おはようございます」


 屋敷内を歩いていると、通りすがりのメイドさんが挨拶をしてくれる。


「おはーよございます」


 思うように話せるようにもなっている。


 実はスキル『感情無効(呪)』の呪いが解けたとき、スキル『言語変換(聞)』がスキル『言語能力』に進化した。


 おかげで聞こえる言葉、話す言葉が全て前世の日本語のままである。



 それと最近頻繁にお兄さん達とお姉さんが遊びにくる。


 お兄さん達は『剣士』を開花したおかげで、毎日稽古が忙しいみたいだけど、時間が空くと直ぐ遊びに来てくれるようになった。


 さらにお姉さんは毎日屋敷内の冒険に誘ってくれて、お母さんお父さんも毎日会いに来てくれる。


 恐らく以前からも毎日会いには来てくれたと思うけど、ずっと寝ていたから気づかなかっただけかも知れない。




 お父さんが書斎で俺が読んでいた魔法の本と、いくつかの魔法の本を持って来てくれた。


「クロウは魔法に興味があるのか? それならお母さんが凄い魔法使いだから、分からないことはお母さんに聞くと良い」


 と話してくれた。


 でもお母さんが凄い魔法使いなのはもう知っている! なんせお母さんの魔法を真似て魔法覚えたからね!




 それからさらに数か月が経ち、魔法の本のおかげで魔法についてはある程度知る事が出来た。


 ただ、どの魔法の本にも書かれているのは、



 『魔法は資質ある者しか使用出来ず、スキルがあるだけでは全ての魔法を使用するのは不可能である。魔法は数百にもわたり、その職能によって覚えられるスキルも決まっているので、先ずは自分の才を理解するべし』



 と書いてある。


 でも不思議な事にスキルって職能で覚えるらしいけど、俺はどうしてスキルを覚えられるのだろう?



 何となく――――『レジェンドスキル』の『#&$%』と『#!$&』のこの項目のおかげなのかも知れない。あくまで予想なんだけどね。



 本には色んな魔法が記されていた、回復系統下位魔法には『ヒール』以外もあった。


 攻撃魔法、補助魔法、空間魔法、召喚魔法等、多数の魔法があり、それぞれ下級、中級、上級、最上級の魔法があるそうだ。


 とても興味深いのは、その中でも〇級が付かない特別魔法が存在するそうだが、どうやら賢者のみが覚えられる魔法のようだ。




「ねぇ! クロウってば!」


 呼ばれる声がして、思考の海から出てみると目の前に頬っぺたをぷくっとして怒っているお姉さんが見える。


「おねーさん」


「またぼーけんにいくんでしょ! はやくべっどからおりて!」


 あの事件から三か月、こんな感じで毎日お姉さんが遊びを誘いにくる。


 ベッドを降りると直ぐに手を繋がれ歩き出す。


 そんなお姉さんからほんのり甘い香りがする。恐らく稽古の後に風呂に入ったのだろう。


 あの日からお姉さんは強くなりたいと言い、お兄さん達に交じり剣術の稽古に参加しているとの事だ。


 ただお姉さんはまだ職能を開花していないので、午前中のみで軽めの稽古だという。



 今日もまた屋敷内を冒険する。


 毎日が充実で楽しくて幸せだ。


 でもお姉さんと手を繋いでいると、ふと前世の妹を思い出す。


 以前は妹がどうなっているか心配だったが、俺ですらこんな幸せになっているんだから、きっと妹も幸せな家庭に産まれた事だろう。


 もう少し、大きくなったら必ず探しに行くと誓った。



 そんなことを思っているうちに、お姉さんといつもの厨房に辿り着く。


 いつも屋敷中を歩き回って必ず厨房に寄る日課になっているからね。


「お嬢と坊ちゃん今日も来たな」


 そこには三十代くらいのダンディーなおっさんがいる。


 この屋敷の料理長のブルックだ。


 ブルックは料理が上手いだけでなく、色んな各国の料理を経験してバリエーション豊かな料理を作れる。


 そんなブルックだが、階級差別の酷い領主の地域で働いていたのを、お父さんが招待を受けて参加したパーティーであまりの美味しさにこっそりスカウトしたそうだ。


 ブルック曰く、お父さんって仕事は真面目だし、領民国民を大事にしているのでとても評判が良いからすぐに承諾したそうだ。


「ぶるっく! きょうもでざーとたべたいわ!」


「はいよー、今日のお嬢達にはこれだな」


 慣れた手付きで冷蔵庫と思われる箱から皿二枚を取り出す。


 その皿には綺麗に盛られたのは、フルーツケーキだった。


「おいしそ! くろう! さっそくたべましょ!」


 目をキラキラさせながら、厨房の脇に作って貰った俺とお姉さん専用の子供用テーブルに座る。


 目の前の美味しそうなフルーツケーキを無我夢中で食べる。


 甘酸っぱいながらそれぞれの果物がしっかりと味を主張して、お互いを邪魔しないとても美味いケーキだ。


 ブルックの手腕が良く分かる。


「ごちそうさまでした!」「ごちそーさまでした」


 今日もデザートを食べてお姉さんも俺も上機嫌になって、また屋敷内を冒険した。


 俺たちはそんな毎日を送るようになった。




 名前 クロウティア・エクシア

 年齢 2歳

 性別 男

 種族 人族(幼)

 職能 未開花

 レベル 1

 HP 3/3

 MP 650/650

 力 10×0.1=1

 速 10×0.1=1

 器用さ 10×0.1=1

 耐 10×0.1=1

 魔力 10×0.1=1

 精神 10×0.1=1


 『レジェンドスキル』

  #&$% 、#!$&


 『魔法系統スキル』

  下級回復魔法


 『スキル』

 痛覚軽減レベル10、感情無効、言語能力、魔法強化レベル1、睡眠耐性レベル9

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