第3話 「対峙」
——東海村近海——
護衛艦隊からの総攻撃を受けて、爆炎に包まれるゴジラ。
各護衛艦は間髪入れず、次々に砲弾の雨をお見舞いする。
「撃ちまくれぇ!」
“あまぎ”のCIC(戦闘指揮所)にて、砲雷長は檄を飛ばす。
「ワイバーン発射用意よし!」
「発射用意......撃てぇ!」
VLSの蓋が立て続けに開くと、対獣ミサイル——ワイバーンが次々と天に向かい飛翔し、上空でゴジラへと進路を変えて突進した。
“あまぎ”に続く護衛艦もワイバーン対獣ミサイルを発射する。
全護衛艦から発射されたミサイルが着弾すると、ゴジラは咆哮をあげた。
さらに木更津駐屯地から出撃したAH-1S対戦車ヘリコプター部隊も戦闘に参加し、ゴジラに対してミサイルによる波状攻撃を開始した。
次から次へと打ち込まれるミサイル、砲弾の雨。
依然として進撃する怪獣王ゴジラ。
だが、これでは終わらない。
凄まじい轟音が突如として作戦海域上空に轟く。
三沢基地から発進してきたF-2支援戦闘機の編隊が対獣ミサイル4発を抱え、アフターバーナー全開でゴジラに接近していったのだ。
「ターゲット、ロックオン。フォックス・ツー!」
ゴジラをロックオンすると、各機は対獣ミサイルを4発一気にぶち込んだ。
ゴジラに向かい爆進していく数多のミサイル。
直後に凄まじい爆発音と共に、オレンジ色の炎がゴジラを覆いつくす。
F-2の編隊は攻撃を終えると、散開して飛び去っていった。
ゴジラはまた咆哮をあげると、海中に潜った。
「海に潜るぞ!対潜戦闘、用意!」
「目標データ入力完了。アスロック、発射用意よし!」
「アスロック、攻撃始め!」
VLSから発射されたアスロック対潜ミサイルは、ゴジラに向かって飛んでいくと、パラシュートを展開して海中に没した。
その後、アスロックはゴジラの追跡を開始し、一気に接近していった。
下総基地から発進した2機のP-3C対潜哨戒機も、対潜爆弾をゴジラへ投下した。
直後、全弾ゴジラに命中し、何本もの水柱が上がった。
しかし、それでも、ゴジラが止まることはなく、全長100メートルもの巨影は日本本土に近づいていったのだった。
「これほどの砲弾、ミサイルを喰らっても微動だにしないとは、何て化け物だ...。」
神宮寺艦長は艦橋にて、そう呟いた。
ゴジラ打倒は、陸戦部隊に託されることとなった。
——東海村沿岸 統合陸上部隊——
「司令部より陸上部隊へ。目標は海上の防衛ラインを突破し、なおも東海村へと侵攻中。各戦闘部隊は目標を確認次第直ちに攻撃を開始、総力をもってこれを撃滅せよ。」
東海村の沿岸地域に集結している陸戦部隊の元に、統合任務部隊から無線で連絡が届いた。
陸上自衛隊富士教導団と特生自衛隊第1メーサー戦車隊からなるこの統合陸上部隊は、陸上自衛隊の主力戦車である10式戦車と90式戦車、特生自衛隊の21式メーサー戦車が主力となっている。
さらにその後方には、99式自走155mm榴弾砲、12式地対艦誘導弾、多連装ロケットシステムMLRSにより編成させる火力支援部隊が構えていた。
「今、お前達の心の中には守らなければならない人達がいるはずだ。辛かったり怖かったりする時ほど逃げるな!戦え!いいな!」
73式大型トラックに乗り、作戦展開エリアに到着した普通科部隊の隊長が、部隊の隊員達を鼓舞した。
「よし、総員、降車!」
隊長の指示で、隊員達は、バズーカ砲を抱えてトラックから降りた。
その後も続々と作戦に参加する車両部隊が到着し、戦闘配置につく。
「決して油断はするな!奴は100メートルの化け物だ。」
メーサー戦車隊の隊長は、無線で隊員達にそう言い放った。
彼らの搭乗している戦闘車両——21式メーサー戦車は2021年に制式採用された特生自衛隊の最新鋭対怪獣兵器である。
この車両の最たる特徴は、無人化された砲塔に装備されている21式メーサー殺獣光線砲にある。怪獣の表皮組織を破壊して大ダメージを与える恐るべき兵器である。
車体は16式機動戦闘車のそれを流用しており、高い機動性を誇る。これにより、怪獣災害の発生現場に急行し、迅速に鎮圧することを可能にしている。
実戦配備が始まった同年に出現した怪獣に対して出動した際は、その機動性と攻撃力をもって素早く目標を撃破し、その性能を知らしめた。
「この装備で奴を食い止められるかは俺にも分からないが、何としてもここで奴の侵攻を阻止しなければならない!」
ちょうどそのころ、東海村近海上空を飛行していた自衛隊の偵察機はゴジラの急速な浮上を確認した。
「目標、急速に浮上!海上に姿を現します!」
その連絡は、すぐに陸戦部隊の前線指揮所に届いた。
「目標、急浮上!」
「各隊、迎撃態勢!」
通信員からの報告を聞き、統合陸上部隊の隊長である宮本第1普通科連隊長は各戦闘部隊に射撃準備命令を下達した。
命令を受け、全部隊は戦闘準備を開始する。
まもなくして、ゴジラはその巨体の上半身を海上に露わにした。
「で、デカい...」
「こんなやつ...倒せるのかよ...」
その巨体を目にした隊員のほとんどは恐怖にうろたえていた。
「戦車大隊、攻撃開始!」
宮本は、ゴジラの出現を確認すると、前線に配置している統合戦車部隊に攻撃命令を下した。
陸自の戦車が爆炎と共に砲撃し、メーサー部隊も水色のレーザー光線をゴジラめがけて発射した。
「よし、特科部隊も攻撃を開始せよ!」
命令を受けて、後方に展開する特科火力部隊による火力支援が始まる。
99式自走155mm榴弾砲——通称“ロングノーズ”がその特徴的な長い砲身の先端から爆音を轟かせ榴弾を発射した。
続けて、12式地対艦誘導弾が対艦ミサイルを、多連装ロケットシステムMLRS——通称“マルス”はその大きな長方形のランチャーから多数のロケット弾を発射した。
2度目の総攻撃を受けて、再び大きく咆哮を上げるゴジラ。
「こちらオメガ。全弾命中。しかし、目標の外傷は確認できない!」
陸上自衛隊のOH-1観測ヘリが地上部隊に無線で伝達した。
「了解した。各部隊は、引き続き攻撃を続行。原発に奴を近づけるな!」
「こちらメーサー中隊。目標照準完了。射撃用意——あっ!」
メーサー部隊が再び攻撃しようとしたところ、車長はゴジラの背鰭が青白く発光するのを目視した。——放射熱線の発射体勢に入ったのだ!
「まずい!全部隊後退せよ!」
連隊長は各戦闘部隊に退避を促した。そんな中、上空の哨戒機から、一本の無線が入る。
「海中より巨大物体の飛翔を確認!そちらに向かいます!」
「何だと!今度は一体何が来るというんだ!?」
前線指揮所は各部隊との通信により、大混乱に陥っていた。
「こちら戦車中隊。我は、第2警戒線まで後退する!」
富士教導団の10式戦車部隊は全速力で後進した。90式戦車やメーサー戦車、普通科部隊も後退する。
「正面、巨大生物、1班、対榴、撃て!」
戦車隊は、後退しつつも、攻撃を続けた。
東海村の沿岸は、戦闘車両のエンジン音と射撃音が鳴り響いた。
戦車隊の猛攻撃を受けたゴジラは、背鰭の発光を更に強めた。そして、その発光は、背鰭から口内へと到達した。
ゴジラの口が大きく開く——
「うわあああああああ!」
普通科の隊員が、恐怖のあまり絶叫を上げた。
しかし、ゴジラが熱線を発射しようとしたその時、巨大な「何か」がゴジラの左からジェット噴射によって高速回転しながら体当たりした。ゴジラは、突然の衝撃により、右に大きく跳ね飛ばされた。
そして、ゴジラを突き飛ばすと、その巨大物体は、尻尾、足、腕、頭の順にその真の姿を現した。
「何だ、あの''巨大な亀''は!?」
突如出現した大亀怪獣は、立ち上がったゴジラを睨みつけると、甲高い咆哮を上げた。
睨み合う2匹の大怪獣。するとゴジラは、再び熱線の発射体勢に入った。大亀怪獣も、口内をオレンジ色に発光させ始めた。
そして、ゴジラの放射熱線と、大亀怪獣の火球はほぼ同時に発射された。
両者の攻撃は中央でぶつかり合い、大きな爆発を引き起こした。
「うぐあぁ!」
その強力な閃光と熱風は、2匹の戦いを見守っていた自衛隊員達のところにも届いていた。思わず腕で顔を覆い隠す隊員達。
低く唸り、睨み合う2匹は、大きく咆哮を上げた。
そして、大亀怪獣は、両足のジェット噴射で上空へと飛び立ち、ゴジラは、大きく水飛沫を上げ、大海原へと帰って行った。両者の戦いは終結したようだ。
「なん...だったんだ...?」
「あの怪獣は、一体...?」
隊員達は、怪獣同士の戦いが終わると、各々ゆっくり立ち上がった。
「俺達を...助けてくれたのか?」
突然現れた、正体不明の怪獣に対する困惑は絶えなかった。しかし、自分達の命が助かったことの安心は大きかった。
「ゴジラの他に、まだあんな巨大怪獣がいたとはな...。」
海上から2大怪獣の戦いを監視していた神宮寺艦長は、そう呟くと、護衛艦隊に寄港の命令を出した。
突如激突した2つの巨大な存在——だが、それは、これから始まる怪獣と人間の長きに渡る、壮絶な戦いの幕開けに過ぎなかった——。
ゴジラ対ガメラ 大怪獣戦記 ——巨獣列島編—— イーグルプラス @syutosyousitu
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