第10話 初めての声出し
そして、2日目からは2次選考を伴うレッスンが始まった。
朝食を済ませると、9時ごろからボイストレーニングが始まった。
2グループごとにレッスンの時間割が異なるようであり、朱莉たちEグループとFグループの他参加者たち5名は
8時に朝食、
9時から発声練習を1時間、
歌唱レッスンを2時間、
昼食と自由時間を2時間取り、
14時からダンスレッスンを2時間半行う。
そのあと一時間は、30分ずつ分け合ったグループレッスンの時間となる。
本日のメニューは以上となる。
そして、最終日の5日はグループごとの担当楽曲のパフォーマンスが審査対象になるという。
発声練習では彼女たちの声の状態を講師が確認した。
若林と春日Pは別室でモニター越しに彼女たちの取り組みを見学している。
「春日さん。これってEグループ以外の子達ってなんか日程めちゃくちゃじゃないですか?公平さに欠くように思えるのですが」
若林の指摘は適格だ。グループによってはダンスレッスンが1時間しかとられていなかったり、発声練習を2時間半も行ってる組が存在した。
「まあ、E以外は特段私は期待してません。Eグループの子達の対抗馬になりそうかなって子をFに突っ込んでいるだけで。あとは、皆さんが一人ずつ選んだ子を適当に振り分けしただけです。」と悪びれることなく説明した。
若林は理解した。つまりこれは出来レースであるという事を。
しかし、春日Pは誤解が生まれないようにこう付け加える。
「しかし、Eの子達が本命であることに違いありませんが、私たちはまだ彼女たちの実力は分からないですよね?もし、選んだ子たちのレベルが酷い様なら」
「酷い様なら?」
「他グループの才能ある子を引っ張てきますかね。朱莉ちゃん、真緒ちゃん、あいかちゃん。それと智恵ちゃんは私の中であまり外すことはないと思うんですが」
やはり、優美はまだ、確定に入っていないのかと少し残念に思う若林であったが
「今回の合宿次第では見方が変わるかもしれません。つまり、他のグループの候補生たちには技術や才能。歌唱力やダンスなどのレベルを見ていく形です。しかし、このEグループだけは別。技術面よりかは3日しかない練習期間をどう活用するかが審査基準です」しみじみとした顔で春日Pは語った。
一方、そうとも知らないE、Fのグループ達は、先生から言われた通りに、「あー」であったり、「ほー」などを発声していた。一人ずつ講師たちが参加者たちに近づき声質を確認していく。講師たちのイヤホンは実は小型の盗聴器が仕込まれており、講師が確認しているように見えて別室の春日Pのイヤホンに音が伝わる。春日Pはマイクで講師に指示を出していた。要するにこの講師も影武者である。
春日は一人ずつ声を出すよう影武者に指示を出す。
まずは、朱莉からであった。女子高生にしては少し声質が野太い印象があった。音域も若干低めに思える。
次に、真緒が声を出す。真緒の声は可愛らしく、癒されるような小動物観のある声色であった。しかし、華奢な体格通りの声量であり、線が細い印象があった。
元気よく、あいかが続く。やはり、女の子にしては掠れたハスキー声であった。しかし、声量は強く、大きく、芯が太いような聞いていて圧倒されそうなものであった。
次に、優美。なんでもそれなりにできるタイプなのだろう。朱莉ほどではないが若干低い声質であったが、しっかりとした声であり、どもるような発声では無かった。良くも悪くも、春日Pにとっては普通といった印象であった。
最後に智恵。高くもなければ、低くもない。中性的な声色。声量もあいかほどの強さは無いが、春日Pからは合格点を挙げても良いものであった。
Eグループが終わると、Fグループに順番は移る。朱莉たちは圧巻される。
若林も耳を見開いたような顔になり、春日に尋ねる。
「この子達、すごすぎませんか?」
「だから言ったでしょ?対抗馬になりそうな子を選んだって」
「でも、1次選考は自己紹介と質疑応答だけですよね?他の場所で聞いてたとかですか?」
「いやいやいや。なんとなくなんですけどね?一次審査聞いてて直感が働いたというか」若林は春日Pの才能は本物であるのだと改めて思い知らされた。
個人別のレベルが理解できたところで、姿勢改善から取り組んだ。ラックスした状態で、安定した姿勢をとることを目的とした。
全身を垂直に保ち、両足を平行にして安定のできる歩幅を取る。両肩の力を抜き、どこにも無理な力を入れずに、身体の重みを両足の上に平均にかけるよう心掛けた。
そして、グループごとに今の発声に足りない感覚や意識を入れる練習となる。
声質が低いEグループはエッジボイスの練習。真緒以外のメンバーは皆低めであった。真緒も学校の音楽の授業以外に歌う機会はなかったとあった為、基本を理解するためにも参加した。
Fグループは特に欠点も無かったため、課題曲の練習をしてよいと指示があった。
個人別となって課題曲の練習を行う。その横でEグループ達は初回から悔しく思えていた。
悔しさを抑えながらも喉の奥を締め「あ゛あ゛あ゛あ゛」とまるでホラー映画に出てくるような声を出していた。
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