第128話 狂い燃える炎、相対すは正義の心 その拾
スキル、それは魔法ともまた別の部類にある特別な力。
かつてその力を使い、大金持ちになった者や世界最強になった者、一国の王になった者などその力だけでそこまで登り詰めることが出来るのがスキルだ。
俺は祈りを捧げたあと、立ち上がった。
そこで、俺に備わったスキルの備考が頭にインストールされるように流れ込んできた。
スキル名「紫瀾洶湧」。
その力、大海の波の如く。
その力、波が唸りて捻れるが如く。
全ての水系統魔法の威力強化、詠唱完全破棄、魔法統合簡略化。
性質変換・水、風。
「!?」
な、なんだこれ…。
多分、いや…、絶対これぶっ壊れてる。
何だこの量!スキルってなんか1個だけ強化するとか、1個だけ特別な力を使えるとかそんなんじゃないの!?
…少し整理しよう。
まず1つ目だ。
水系統魔法の威力強化、完全詠唱破棄、魔法統合簡略化…、これは単純に俺を強くしてくれるスキルだな。
完全詠唱破棄はもしかして、
それってオリジナル超えてないか…?
ジェンドマザーが「スキルは絶対的な力みたいなところあるよねぇ」なんて言ってたから有り得るのかもしれない。
そして2つ目。
性質変化・水、風。
このスキルは無機物限定で、性質を水or風に強制的に変化させれるようだ。
俺は試しに、近くにあった花瓶に性質変化・水を試して見た。
「きゃっ!なに!?」
花瓶は水みたいにドロドロと溶けていき、次第には完全に水に変化した。
「あ、ごめんなさい!」
物質を強制的に変化させるスキル…。
俺に使いこなせるかは分からないが、慣れるまではあまり使わない方が良さそうだな。
しかし、この「紫瀾洶湧」というスキルは名前的に水を表しているのは間違いない。
なのになんで、オマケみたいな感じで性質変化・風も付いてきてるのだろうか。
ないよりあった方がいいに違いないけど、何だか不思議である。
「あら、もう帰られますか?」
「はい、今日はありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ。街を救って頂いた方にこれぐらいしか出来ないのが残念くらいです」
俺はシスターと適当に雑談をしながら、教会を後にした。
さて、あとは王国に帰るだけだな。
準備…、と言っても空間収納に持ち物をしまうだけだが、ちゃちゃっと準備しちゃって、俺たちは神聖国を出ようとしていた。
感謝をされて気持ちはいいが、長居するつもりもないしな。
「あ!ノアさん!待って!」
声のした方へ視線を向けると、こちら側に走ってくるピエロ面の男がいた。
「あ、あの!ありがとうございました!」
ピエロ面の男は頭を深々と下げて、俺にお礼を言った。
「それでぇ、あのぉ…」
ん?なんか急にモジモジし始めたぞ。
ピエロ面のおっさんがモジモジしたって気持ち悪いだけだ。
「なんですか…?」
「ノアさんのあの反射する鏡の魔法を教えてください!!」
俺はその言葉を聞いた瞬間、帰るのはまだ後でいいかなぁ、とそう思った。
「よし!!じゃあ、取り敢えずピエロさんの家に行こう!今夜は語り合おうぞ!」
「やったー!!大魔法使いに魔法を教えて貰えるなんて!」
大…!大魔法使い!
俺がそんなにふうに呼ばれる時が来るなんて…!
「おい、3人も来いよ!なんなら俺がお前らにも教えてやるぞ!」
俺は上機嫌で、ピエロ面の男の家について行ったのだった。
「…あいつって魔法になるとあんな豹変するんだな」
「あぁ、森で鍛えてた時は普段よりテンションも高かった」
「余程魔法が好きなんだろうなぁ」
3人は呆れるようにノアを見つめるのだった。
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