第116話 服従魔法
神聖国、それは荒野の中心にポツンと建つ不気味な白色の街。
邪悪なる者を退ける結界を常に張っているため、魔人や悪魔には有名な場所でもある。
「4〜5ヶ月ぶりだな、神聖国は」
あの時一瞬だけ来た街だが、この立地が異様過ぎて頭から一瞬たりとも忘れたことは無かった。
さて、わざわざ来てやったが…、どうやって入ろうか。
「正面突破は不味いだろうな。となると、前と同じ方法で忍び込む方がいいのか…?」
だが、前回侵入を許した神聖国側が更なる対処を練っていないとは思えない。
前回とは違う正面突破以外の侵入方法をしないといけないか。
「そう言えばここら辺はイミテスゴーストが生息している地域じゃなかったかな?」
「ん?急に何の話だ?」
ジェンドマザーが侵入とは無縁そうな意味のわからない単語を言うもんだから、思わず聞き返す。
「イミテスゴーストというのはモノマネする実体の無い魔物でね?そいつを捕まえてこれば正面から行けるんじゃないかなって!」
「ふむ、いい案かもしれないが、誰の真似をするんだ?しかも4人分モノマネする人物を見つけ出さないといけない」
「げぇ、確かにそうだ」
イミテスゴースト、モノマネをするアンデットの魔物か。
確かにジェンドマザーの案はかなりいいところを突いていると思う。
問題はモノマネをする人物…。
「取り敢えず、そのイミテスゴーストを捕まえに行こう。そして、1人はここに残ってどんな人物が普段出入りするから見張っていて欲しい」
「いい案だな、それで行こうぜ!で、誰が残るんだ?」
「………」
そうダーグが言った瞬間に、4人の中に沈黙が訪れる。そして、それぞれは視線を目配せた。
「「「「最初はグー!ジャンケン!」」」」
「パー」
「チョキ」
「チョキ」
「チョキ」
「…我か。仕方ない見張っておいてやるから早急にイミテスゴーストを捕らえて来るのじゃ」
こうして、ジャンケンで負けたフェルは正門から出入りする人物の観察をして、俺たち3人はイミテスゴーストを捕まえに行くのだった。
イミテスゴーストというのはこの荒野地帯にてごく稀に見られるという希少性の高い魔物だ。
何故、そんなに希少性が高いのかと言うと、ゴーストという実体の無い魔物の亜種であるからだ。
ゴーストは普通は物や人に擬態する術を持たず、襲われたら一溜りもない。
だが、そんな環境で生き残ったゴーストは次第に物や人に化けるようになる。
これがイミテスゴーストが生まれる原因である。
実際はゴーストが長く生きた個体であるので、その本質はゴーストなのだが、生体が大きく変わるため、亜種個体として区別されている。
「長く生きた個体、ねぇ。そんな簡単に見つけられるわけないよな」
探し始めて3時間ほどが経ったが、イミテスゴーストは一体も見当たらない。
「
しかし、この荒野はかなり広くて一通り探すにも一苦労だな。
なにか特徴でもあればいいんだが…。
「探すしかないよなっ!フェルの為にもな」
―――
「ふむ、大体一日程度経ったか。出てきたの6人だったな」
1人目は、ノアたちが去ってから数十分後に出てきた一般的な兵士で、魔力量は人間にしては高かった。
そいつは門番にいた人間と入れ替わって、門番を続ける。
門番を任される程だからある程度は強いだろう。
そして、6時間後くらいに黒づくめの2人組が、正門を出ると北東に向かって走っていった。
北東方面は王国があるから、恐らくノアの捜索の人手を増やしたのだろう。
4人目は12時間後くらいに出てきた交代の門番。先程出てきた男と同じくらいの魔力量で強さも同じように見える。
20時間後くらいに再び黒づくめの2人組が北東に向かって走っていった。
神聖国はそうとうノアを見つけ出したいのだろうな。
これが出てきた6人の概要である。
12時間毎に門番が交代していく事が分かり、どういう基準か分からないが、黒づくめの2人組が間隔を開けて王国に向かっていく。
これ以上特に情報がないなら、黒づくめの人間を利用しよう。
―――
「こうやって何時間探してるんだか…」
イミテスゴーストはなかなか見つからずに一日が経ってしまった。
そう言えば、魔物をテイムする「服従魔法」を試して見たのだが、本当に魔物をテイム出来た。
そして…。
「え?イミテスゴーストがいたって?」
テイムした魔物と会話ができるのだ。
会話と入ってもフェルと同じように念話という形で意思の疎通が出来るだけだが。
「やるなぁ、ゴッス。早速連れてってくれ!」
俺のテイムした魔物、ゴーストのゴッスを先頭に俺はイミテスゴーストがいたという場所まで歩みを進める。
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