第115話 魔法の基礎
最近、神聖国がある少年を探し回っている、という情報を得た。
探しているその少年の特徴は、黒髪で悪魔に乗っ取られた人間と銀髪の少女と一緒に居て、悪魔をとてつもない神聖魔法で祓った、らしい。
「ノアじゃの。良かったな、有名人じゃ」
「いや、なんも良くねー!」
神聖国は鎖国状態で、他との関わりを絶っていたから、ここまで探し回っているとは思わなかった。
黒髪の少年と銀髪の少女…、この王国内で俺は割と目立った行動を俺の意志とは無関係に頻発しているため、すぐにバレかねない。
悪魔、と関連づけばいつかのあの王子様に今度こそ殺されかねない。
「どうしたらいい?」
「ふむ、ならノアの方から神聖国に出向けば良い。別に取って食おうって訳じゃないじゃろ。行ってやって、神聖魔法の1つや2つみせてやればよい」
「…絶対それだけじゃ、終わらない気がするんだけど…」
「ふは、確かにの。今のノアは全世界の魔法使いが喉から手が出るほどに欲しい知識を蓄えておるからの。神聖魔法も例外ではなく」
「………」
この世界に15…、いや16年近く生きていれば何となくわかってくるのだが、俺はこの世界でもかなり強い方に入るのではないだろうか。
驕ってはいない。
だが、俺より強い魔法使いを人間で見たことがないのだ。
魔力の総量も何故かフェルやジェンドマザーに匹敵するほどに増えちゃったし…。
世間一般では魔力の総量というものは生まれつきでほぼ決まっており、訓練や修行をしてもあまり総量は増えないのだが、俺の魔力総量は増えに増え続け、今なお増え続けている。
「まぁ、神聖国の奴らに見つかって王国で変に騒がれるよりも行った方がいいかもしれない。ちょうど冬休みも始まるしな」
「仕方ない…、のか?」
「ああ、仕方ない!行くしかないのじゃ!」
フェルのやつ、暇だから行きたいだけだろ…。という言葉は飲み込んで、俺はジェンドマザーとダーグに声をかけていつものメンバーで、神聖国へ向かうことにした。
―――
魔法というのは低級、中級、上級と3段階に基本的には分かれる。
この3段階に当てはまる魔法は今なお増え続けている。
例えば、ウォーターボールは空中から水の玉を生み出し、勢いよく対象にぶつける魔法だ。
しかし、ウォーターボールを大きくすればするほど魔法の階級が上がるし、追尾性能や泥水であればそれはもう別の魔法だ。
そんな3種類の階級しかない魔法であるため、個人によって今なお増え続けているというわけだ。
そして、かくいう私も、私の研究の果てに生み出した魔法がいくつかある。
そして、その枠組みから外れるのが、派生乃至強化された上級魔法だ。
派生はその元となる魔法の更に先の形態を見つけ、それを魔法にすることで派生魔法が生まれる。
強化はその名の通り、元となった魔法をただ単純に強化したのが強化魔法だ。
この2つは全魔法使いの「憧れ」である。
…だって、自分だけの魔法だぞ!?
それってすごくロマンがあるじゃないか!
ゴホン、それはさておき、先程は派生乃至強化魔法について話したが、今回は低級、中級、上級の3つの魔法を更に深堀していこうと思う。
低級に位置付けされるのは中級よりも威力や効果が低く、尚且つ簡単に誰でも魔法を放てる、というのが条件であり、この低級魔法が最も簡単に生み出せる魔法だ。
簡単と言ってもそれは糸をピンセットの針に入れる穴が数ミリから数十ミリに変わった程度の物だがな。
突然だが、私が生み出した低級魔法を少し発表しようと思う。
これなんてどうだろう、フレアミートという魔法だ。
これは肉を焼く時にちょうどいい温度を放てるという魔法。
ダサい?何を言ってる、これも正真正銘魔法だよ。
さて、次に中級に行こうか。
みんなも察しがついていると思うが、低級より難しくて威力や効果が高く、上級より簡単で威力や効果が低い物がここに当てはまるね。
中級魔法は意外に生み出すのは大変なんだ。
だって、低級より強くて上級より弱い…。
はっきり言って微妙だ。
だから私は研究をしていない。
生み出せない、では無いからな。
私は研究をしていないだけだ。
そして、上級だ。
これは中級よりも難しく威力や効果が高いのが特徴だ。
実質、普通の魔法使いが使える最上級の魔法ということになるね。
ここで私が生み出した史上最高の魔法を教えようと思う。
上級魔法、アクアヒールだ。
水のリングを作り、そのリングを潜ったものは身体の傷を癒す効果がある。
これは大発明だった。
だって水魔法と回復魔法を融合させたのだ。
前人未到だ。
当時の私は大興奮したね。
あの時思ったよ、私は天さ…。
「おい!何をやっている!」
おぉっと、公演中だと言うのに街の警備が入ってきちゃったようだな。
「では、さらば!」
私はそろそろお暇させてもらうとするよ。
どうだい?魔法は奥が深いだろう?
「はっはっはっはっ!」
―――
今は誰も使っていない廃ホールにて怪しい男が独り言を呟いて、何かしらやっていると通報があったが…、あいつは一体なんだったんだ?
警備員が、廃ホールに駆けつけたが、何やらしていた男を逃がして、客席にて小さい子供に声をかける。
「おや、君は…何をしてるんだい?」
「え?僕?」
「うん!そうそう。もしかしてあの不審者の公演を聞いていたのかい?なら良くな」
スパッ。
「あ、死んじゃった」
警備員の頭が吹き飛び、血飛沫を撒き散らして倒れる。
その返り血を浴びた声の正体は、血を拭き取ろうともせずに、とぼとぼと歩き出して廃ホールを後にした。
―――――――――
誰とも知らない人に魔法の説明をしてもらいました。
上級、中級、低級の魔法はこういう風に世間では認知されています。
この人も首チョンパした子ももうすぐ出てきます。
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