第105話 古より蘇る大地の化身 その漆
空中を走って1日、俺たちは北の海岸線にやってきた。
そして、そこにはボロボロで今にも崩れそうな塔がそびえ立っていた。
「ふむ、かなり強力な結界が貼られているようじゃ。並の人間じゃ侵入はおろか、近づくことすらできないレベルじゃろうな」
ここの塔に伝説の剣とやらが眠っているのか?
確かめないことには分からないな。
「フェルはあの結界を破壊することは出来るのか?」
「出来るがそれをやるとこの塔が壊れてしまうようじゃ。この結界はどうやら塔の補強もしておるようで、結界がなかったらもう既にボロボロに崩れておろう」
まじか、侵入は不可能か。
どうしたもんか。
「私に任せてぇ、せいっ!」
ジェンドマザーがその掛け声と共に塔の入口らしきところに何かを撃ち込んだ。
すると、入口のところだけ結界が無くなっており、入れるようになっていた。
「…せいっ!の掛け声でやっていいレベルの技術じゃないだろ…」
結界を壊さずに穴を開けるなんてどうやるんだ?
魔法関連で全くやり方も理論も何もかもが分からないなんて初めてだ。
「どぉ?凄いっしょ!」
「尊敬度が一気に100くらい上がった。さすがジェンドマザー」
「えへ、えへへ。それでいま尊敬度はどれくらいなのぉ?」
「マイナス9900」
「わっつ!?なぜ!それもはや尊敬してないよねぇ!?」
…無視だ無視。
とにかく伝説の剣を見つけよう。
塔の内部は特に特徴はなく、イメージした通りの黒と白を基調としたデザインで美しい。
1回層の広さは縦横50メートルほどの大きさで、かなり広い。
だが、特に何かを置いている訳でもなく殺風景な景色と奥にある上に続く階段があるだけだった。
「なにも、無いな…」
早速2回に向かおうとして、階段を目指していたが、その途中何やら声が聞こえてきた。
【あーあー、マイクテスマイクテス、あー】
「!?!?」
これは…、日本語…!
「よくのこの塔に侵入した。私がこの塔を管理するサトウである。まず第1回層目はキメイラだ」
前半は普通に日本語を喋っていたが、後半はこちらの世界の標準語に変わったな。
しかも、サトウっていう名前は佐藤さんなんだろうな。
この世界に来て3人目の日本人、か。
ぜひ会ってみたい。
「その前にまずはキメイラ退治からだな」
塔の中心に召喚されたキメイラはもう既に臨戦態勢に入っており一触即発の状況だ。
「尻尾攻撃と爪での攻撃は注意してくれ。尻尾の蛇には毒がある。爪は鋭くて引き裂かれたら致命傷になっちまう」
本で数回見た程度だったからこの情報はありがたいな。
さて、相手はどう来るか…。
「…!早い!」
キメイラは一瞬のうちに加速して、爪を用いて一撃必殺を狙ってくる。
その巨体ゆえ、目で追えないほどではないが、油断すると一瞬で殺されかねない。
「3連アクアストーム!」
二重詠唱×3!
3つの暴風雨はキメイラに向かって一直線に飛び出す。
そして、嵐から出てきたのは無傷のキメイラであった。
「まじかよ、どんな魔法への耐性をしてるんだ…」
「
ダーグの神速の一撃はキメイラの皮膚を抉り、血飛沫が噴水の方にして放散される。
なるほど、魔法への耐性は物凄く高いらしいが、物理への耐性はほとんど無いらしい。
フェルとジェンドマザーはそれでもなお魔法を撃ち続ける。
フェルは剣の腕はからっきしだし、ジェンドマザーも剣を扱うようには見えない。
ここは俺たちが頑張るしかないな。
「ノアは左にいけ!俺は右から狙う!」
「了解!」
「いくぜっ!」
俺 の
だが、限界突破には大量の魔力を使うから使う場所が限定される。
じゃあ、身体強化の魔法を使おうにもスピードが足りない。
そんなことではダメだと考え、俺は限界突破をしなくとも超加速出来る魔法を考えたのだ。
「身体強化:雷」
身体強化の魔法に属性を付与することによって、その属性が持つ特徴を一部借り受けることが出来るのがこの属性身体強化の強みである。
そして、雷が持つ特徴はスピード!
「
「
俺の一撃が、キメイラの首へ。
ダーグの一撃が、キメイラの体へ。
「グガァァァア!」
キメイラは最後の雄叫びをあげると、力なく倒れ消滅した。
すると、どこからか声が聞こえてくる。
「流石、結界を破った者たちよ。2階層へと進むがいい」
なるほど、本当にRPGみたいな感じだな。
「速攻で攻略してやるから待ってろよ!サトウ!」
「………」
俺も乗ってやったのだがサトウという男は返事はしなかった。
なんか俺が恥ずかしいやつみたいになるからやめて…。
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