第102話 古より蘇る大地の化身 その肆
時には野宿をして、時には宿屋に泊まって空中をひた走ること11日目。
ようやく獣人族の里がある森までやってきた。
ヴァレットが王国まで来るのに15日程度かかっているためかなり早く来れたのではないかと思う。
最近は移動が多くなってきたし、そろそろ空間転移の魔法を使えるようになりたい。
初日の出来事で、少し親の顔が見たくなってしまったし、2年生に上がるまでには覚えたいな。
「ここから数時間のところに獣人族の里がある。まずはそこに行こう」
「分かった。早く向か…」
「おい、弱虫ヴァレット。逃げ出したかと思ったら人間なんて連れてきやがって。獣人族以外は立ち入り禁止と知ってるだろ」
森に入ろうとしたら上の方から声がして、そっちに視線を向けると猿っぽい獣人族がいた。
「すまない、無視してくれ。早く里に向かおう」
ヴァレットはそういうが、あっちは臨戦態勢だな。
大丈夫か?これ。
「無視するな」
鋭い殺気がヴァレットに向かって弾丸のように飛ぶのが分かった。
今は仲間割れをしてる場合じゃないんだが…。
「
ダイヤモンドのように硬い魔法結界が俺たちを囲うように展開される。
ヴァレットを狙っていた猿の獣人族は弾かれて、木に退避する。
「なんだ…、これは」
「これは結界か。人間は俺の思ってたよりも器用なんだな。助かったよ、ノアさん」
「いや、いいよ。とにかく里に向かおう。里はこんな奴ばっかじゃないんだろ?」
そういうとヴァレットの顔は険しくなる。
おいおい、里の全員がこんな感じで襲ってきたら流石に面倒くさいぞ。
「…金剛石の要塞をずっと展開させとけばよい。ノアなら数十時間単位で展開させていられるだろ?」
「ま、そうだな。取り敢えず里長に話をして俺たちが来た理由を話さないとな」
俺たちは金剛石の要塞を展開しつつ、里に向かうのだった。
―――
ノアたちが去って数分後、イラつきを隠そうともしない態度で呟く猿の獣人族。
「チッ、なんなんだあの人間…」
自分の一撃はヴァレットを殺す程の威力は余裕であったはずなのに、あの魔法結界という物に容易に弾かれて驚き半分怒り半分であった猿の獣人族は思考を巡らせる。
「このままでは、あの人間共が里に入ってきてしまう。先に里に戻って警備団に報告しよう。殺すにはまずはあの硬い結界をどうにかしないとな…」
猿の獣人族は一直線に里へ器用に木を伝って向かう。
―――
数時間後、あの猿の獣人族は1回も襲ってこずに獣人族の里へ着いた。
獣人族の里は森と一体化したような緑溢れる里で、木の上に家が建っていたり、中央に物凄くデカい巨木があったりする。
周りは3〜4メートルくらいの塀に囲われており、目の前には門がある。
「ふむ、かなり潜伏しておるの。どうするか」
「金剛石の要塞は相当なレベルの者じゃないと破壊できないような強度まで強化してあるからあの猿の獣人族が1として、潜伏している獣人族が100だとしても壊されないだろう」
この金剛石の要塞内に入れば取り敢えずは大丈夫だ。
とにかく、早く里長に俺たちの存在を里の獣人族に認知させてもらわなければ。
「今だ!殺せッ!」
俺たちが門に向かって歩き出して、数百メートルのところで一斉に獣人族が襲いかかってきた。
気配感知で数十人いることが感知できたが、こんだけの人数をよく数時間で集めたものだ。
「ダーグは反撃しようとするなよー」
「しねぇって。俺もそんなにバトルジャンキーじゃねぇよ」
体験はしたことないけど、ハチを駆除する人もこんな気分なのかな?
四方八方から槍や剣、魔法などで攻撃を受ける光景を見てそう感じる。
「な、なんだこれ?」
「攻撃が通らない…」
「どうなってんだ!!」
俺たちは攻撃されながらも、里に入り1番巨大な魔力を持つ者へと目指す。
「おいおい、あんたら。あまり里を騒がせないでくれよッ!」
1番巨大な魔力はいきなり俺たちの目の前に現れて拳を振り抜く。
すると、その拳は結果内に侵入した。
それを歪みとしてパリパリと金剛石の要塞は破壊されてしまう。
「まじかよ、この結界を壊すか…」
目の前に堂々と立ち塞がったのは、狼のような獣人であった。
「おう、そこら辺のガラスより脆かったぞ?で、あんたらは何をしに来た?ここは人間の立ち入りは禁止だぞ」
ふーん、そうかよ。
言ってくれるじゃないか。
「里長、俺が連れてきました。例の大地の化身を倒す為の、人間の援軍です」
「はっ、その硬いだけの人間が大地の化身を倒す為に役立つのかよ?なぁ、ヴァレット」
あれは、森の入口であった猿の獣人族か。
とゆうかさっきから俺や金剛石の要塞を馬鹿にしてるけど、獣人族はそういう性格なのか?
「俺はチェリアの保護者であり、ご主人様でもある。使用人の故郷を守る為に王国から来た。役に立つかどうかは戦いになった時に分かる」
「ほう?あのチェリアの…。あいつは元気か?」
「あぁ、元…ゴバッ!」
なんだ…?いきなり顔の左側に痺れが…。
俺の体は勢いよく飛ばされ、近くの木にめり込む。
そうか、殴られたのか。
目で追えなくて何が起こったか分からなかったな。
「てめぇ…」
「里長!な、なんてことを…!」
「落ち着け、ダーグとヴァレット。クールに行こう」
「だがノア…、ノア?」
あぁ、2人にクールになんて言ったが、俺が1番頭に血が上ってるな。
「チェリアは俺の娘だ。なにが保護者であり、ご主人様だ?舐めてんのか」
この里長がチェリアの親だったか。
確かに、チェリアの面影が少しある気がする。
「俺はいつも冷静に戦うことを教訓にしてるんだ。怒ると周りが全く見えなくなるからな」
「ふっ、そうかよ。だが周りを本当に見てるのか?この状況を」
「ふはは、そうだな。見えていなかったよ。だってよぉ…」
「
刹那の一閃。
「血に染って見えないからなぁ…」
鮮血が噴水のように溢れ出す。
誰もがその光景に声を上げることすら忘れ、恐怖する。
自分たちの中で1番強い里長が、棒立ちのまま動けずにやられたのだから。
―――――――――
※タイトルを変更しました。
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