第101話 古より蘇る大地の化身 その参
約1日走り続けて、辺りはもう真っ暗になっている。
この近くには街や集落はなさそうなので野宿することにする。
俺は空間収納から巨大テントと人数分のベットを取り出す。
5つのベットは巨大なテントにギリギリ収まって足の踏み場が無くなった。
…流石にベットはやりすぎたな、普通に寝袋を出そう。
「よし、これで寝る準備は完成だ。さて、見張り番はどういう順番でやる?」
野宿においていちばん重要なのが、見張りである。
俺は一応気配の感知で寝ていても何となくは分かるのだが、高位の魔物が気配を消す術などを持っていたらやばいし、割とこの世界は人間を欺き殺そうとしてくる魔物が存在しているので、テントでぐっすり寝た日には、本当に永遠に眠ることになりかねない。
「なら我が見張りをしてやろう。1日くらいなら眠る必要は無い」
「そうか、なら頼むよ」
俺たちは明日に備えて、ベットに潜り込むとぐっすりと寝てしまった。
数時間後、喉の乾きにて目が覚めた俺は空間収納から飲み物を取りだした。
「あ、これコーヒーだ」
いつのか分からない(空間収納の中は時間は経過しない)魔法瓶に入った暖かいコーヒーを1口飲んでしまう。
「…目が覚めちゃったなぁ。フェルはちゃんと見張りはしてるか、な」
テントの外に出ると、今日は満月のようで辺りは夜にもかかわらず結構明るい。
辺りを見渡して、倒れた木を椅子代わりにして座るフェルを見つける。
「なんじゃ、寝ないのか」
「いつのか分からないコーヒーを飲んじゃってな。目が覚めた」
「人間はよくそんなヤバそうなのを飲み食い出来るな」
「いや、空間収納は時間経過しないだろ。とゆうかフェンリルだって魔物モリモリ食うだろ」
確かに、と鼻で笑うフェル。
なんだか、この状況エリーゼの森から出る日の前の夜にもあったな。
エリーゼとグライドは元気にしているかな?
まだ別れて半年も経っていないけど、思い出すと急に寂しくなるもんだな。
「何を考えておる」
「父さんと母さんのことだよ。会ってないから少し寂しいなぁと」
「ふむ。そういえばあの夜…あの二人は性行為をしていたが、ノアにも兄弟が生まれるのではないか?」
性行為って…。まぁ、確かにそうだけど。
しかし、兄弟、か。
俺は前世も一人っ子だったから兄弟が出来たら嬉しいかもしれないな。
「けどどうだろうな。あの二人は俺を産んだとは思えないスタイルだけど、俺を産んでから15年も経ってるんだぞ?」
「人間にとってはそれは長いのか。我にとっては一瞬の出来事じゃからそれぐらい普通かと思ってたのじゃ」
まぁ、100年生きられるかどうかの人間と数千年生きてるフェンリルの時間の感じ方は違うだろうな。
「そういえば、先生はどうやって生まれたんだ?」
「ふむ、我はただのグレートウルフとして生まれてきたのじゃったかな?果てしなく遠い過去だからあまり覚えてはおらぬが、我のスキル「威風凛然」と風魔法への異常な適応によって、グレートウルフを支配しておった」
「…で、そこからニンリルに力を授かった、と?」
「そうじゃな。気づいたらそうなっておった。寿命が果てしなく長く伸びて、力も強まった。そして関わった者の悉くは先に死んでいく」
フェルはそういう別れの時に辛くなったりしないのだろうか?
それが通りとして受け入れて関わりを持ってきたのか、苦ということを知りながらも関わりを持ってきたのか。
「…何故あの時先生は俺を弟子にしたんだ?」
「気に入った、と言ったではないか。それ以上の理由はないぞ」
「ふーん」
「なんじゃ、お主から聞いてきたではないか」
「いやぁ、なんか本当の理由があるんじゃないかなあって思っただけ。いい暇つぶしになったよ、俺は先に寝てるから見張りはよろしくな」
こうして、俺はテントに戻って無事ぐっすり眠れたのだった。
そして、翌日。
朝日が昇り始める前に全員起床して移動を開始する。
現時点で、獣人族の里まで10分の1も進めてないからもう少しスピードを上げてもいいかもしれない。
その場合、昨日せっかくヴァレットがステップウィンドを覚えたのにまた俺が抱えていかないと行けなくなるけどな。
…まぁ、これもヴァレットの練習と思ってゆっくり行くか。
俺たちは空中を走りながら獣人族の里へひた走る。
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