第100話 古より蘇る大地の化身 その弐

 俺はギルドにそぉっと入り込んで、俺を担当してくれる受付の人からこっそりと大陸の地図を買ってギルドから出てくる。


「もう流石にほとぼりは冷めたんじゃないか?あれから数日は立ってるし」


「分からんけど、ここで囲まれでもしたら面倒だろ。ほら、早く王国を出るぞ」


 俺たちは王国を出て、獣人族の里を目指す。

 人がいるところだと、空中を走るのはあまりにも不信すぎるので、遠くに行ってから飛ばすことにする。


「獣人族の里ってかなり大陸の端っこにあるんだな。こりゃあ遠いわけだ」


 南西方面の端っこに森があり、そこが獣人族の里らしい。

 この地図にも乗ってないことから、あまり人間が訪れない場所のようだ。


「人間の街で獣人はなかなか見ないが、そういう奴はかなり珍しいのか?」


「あぁ、俺も生まれてこの方里を出たことがなかった。だから、最初も金の価値も全然わからず、結構ぼったくられたこともあったな」


「それで、人間を嫌いになるなよ?そういう奴も人間にはいるんだよ」


「分かってるさ。獣人族の里にもそういうずる賢いやつはいるからさ」


 ま、そんなもんだよな。

 悪いことを考えるのに種族は関係ないもんな。


「とゆうか、チェリアの居場所がわからずに探し始めたのか?」


「いや、獣人族ってのは繋がりがあるんだ。それは血縁になるほど強くなる。赤の他人だとあまり感じとれないが、家族となると居場所はなんとなく分かるんだ。これをテレパシーって言うんだ。まぁ、獣人族の特徴だな」


 なるほどな。

 俺とフェルの念話には劣るが、それでも便利なことには変わりなさそうだ。


「…逆に聞きたいことがあるんだが、チェリアはどんな環境で働いているんだ?」


 恐らく、ヴァレットには奴隷は雑に扱われるみたいな偏見があるようで、不安なようだな。


「昔…、つっても数週間前まではあの豪邸の清掃と冒険者になれるように訓練。最近は訓練の割合が多くなってきているようだな。あと、給料も出している。貰ってる額は少し少ないが、自分の趣味を充実させれるくらいはあげているつもりだ」


「なっ!?…妹はかなり恵まれた環境で生活出来ているようだな」


「おーい、早く行くぞ。お主の里が危なかったんじゃないのか?」


 フェルが、長話に辛抱切らしたのか急かしてくる。

 確かに、急がないとまずいな。


「すまない。先を急ごう…、ってまじかよ」


 俺たちがステップウィンドで空中に飛び出したら、ヴァレットが驚いて棒立ちになっている。


 もう空中を走ることが普通になってきたから分からなかったけど、普通の人は歩いていくと思うよな。


「取り敢えず俺が運んでってやるよ。今日の夜にでもステップウィンドを教えてやる」


「あ、あぁ。ありがたい。よろしく頼む」


 こうして俺たちは空中を走りながら獣人族の里に目指すのだった。


 ―――


「では、セリアは豪邸内の清掃をしてください。分からないことがあれば聞きに来てください」


「はぃ…」


 セリアは未だに私のことを怖がっているからこっちもなんだか落ち着かない。


「クレランスは庭の手入れをお願いします。無理をしない程度で、休憩を入れつつしてくださいね」


「はい、分かりました」


 クレランスは私の指示を全て受け入れて、そつなくこなすからあまり感情が理解出来ない。

 私もノア様から「フルティエっていつも無表情だよなぁ」なんて言われるが、私よりクレランスの方が無表情な気がする。


「チェリアは私と訓練をしましょう。厳しく行きますよ」


「はい…!お願いします」


 チェリアは素直に私の言うことを聞いてくれて、感情がわかりやすい。

 私の指示が不満な時は言葉にはしないが、表情には出してくれる。

 奴隷にとってはそういうところは欠点になってしまうが、ここにいる限りは欠点なり得ないので、やはりここでの使用人として働くのはとても幸せなんだと実感する。


「では、庭に行きましょうか」


 庭に置いてある木剣を装備して、チェリアと向かい合って構える。

 ダーグ様がここに来てからチェリアと一緒に訓練をしているが、日に日に技術を吸収して強くなっていって凄いと思う。

 やはり獣人族は私たちエルフや人間より戦いに特化した種族だからだろうか。


「始め!」


「やぁっ!」


 チェリアは小さい体型を生かした軽いフットワークで動き回るトリッキーなタイプだ。

 実際、速さと変則的な動きによってどこを攻撃するか分かりにくいが…。


「ここです」


「くっそー、当たらない…」


 跳躍して後ろに下がったチェリアは油断してしまったのか、汗を拭く動作を木剣を持っている手でしてしまう。


 私のゆっくり振り下ろした木剣が、チェリアの頭にコツンと当たる。


「油断しすぎです。この暑さなら仕方ないかも知れませんが、魔物はそんなこと気にかけてくれませんよ」


「うぅぅ…。分かってますよ…」


 この訓練でチェリアとの仲も結構深まったように感じる。

 最初の頃は返事くらいしか会話がなかったが、言葉を交わしての会話が多くなってきた。

 最近はなんだか妹と話しているような気がして…。

 いやいや、私何言ってるんだろう。


「隙ありです!」


「ないですよ」


 いつの間にか後ろで木剣を振りかぶっていたチェリアの攻撃を軽く受け流して、木剣を弾く。


「うぐぅ…。フルティエさんは強すぎます」


「チェリアもこれくらいになってもらわないと行けないですからね。ビシバシ行きますよ」


 チェリアとフルティエの訓練は昼時までずっと続いたのだった。






 ―――――――――

 とゆうわけで、100話目です!3桁!

 それと、投稿された時には変わっていると思いますが、初投稿44日目にして1万PVも突破しました!読んでいただきありがとうございます!


 そして、物語的には半分くらいはもう来てるかなぁって感じです。

 完結まで頑張って書いていきますので、よろしくお願いします。


 ※タイトルを変更しました。

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