第98話 成り行き、最強へ
「おーい、ジェンドマザー生きてる?」
ジェンドマザーが生きてる部屋へとやってきた。
仮にも八源厄災だから1週間放置されただけじゃ死なないとは思うが…。
「やぁ!ノアじゃないかぁ!寂しかったよぉ?」
うん、元気そうだな。
俺は縄を解きながら会話を続ける。
「しかし、八源厄災ってのはどいつもこいつも悪いやつかと思ってたら、お前みたいな友好的なやつもいるんだな」
縄を解かれ、背筋を伸ばして血流の流れを良くするような人間みたいな動きをするジェンドマザー。
人間みたいな容姿だから余計に思ってしまうが、こいつは中々に人間らしいやつだな。
「うーん、確かに私みたいなのは珍しいかもにゃぁ。まぁ、他の奴らはなんて言うか己の力に溺れたっていうか、神から借り受けた力を過信しすぎたっていうか…。事実、君みたいな八源厄災にも匹敵する人間もいるから驕りは身を滅ぼすって改めて実感するよ」
ふーん、ジェンドマザーが特別なんだな。
「この際だから色んなこと聞いてもいいか?」
「あんまベラベラ言うとフェンリルに殺されかねないから、言える範囲は言うよ〜」
「じゃあ、八源厄災は神に力を借り受けたって言うけど、本当に神なんているの?」
「あー、神ね。いると思うよ神は」
今までおちゃらけた雰囲気のジェンドマザーが少し変わったような気がした。
あまり触れちゃいけないところだったか?
「まぁ、私は見たことないけどねー。神に力を借り受けるって勝手にあっちから力をあげるって感じだから、私は見た事ないけど、フェンリル辺りなら知ってるんじゃない?」
自分が望んでいなくても力を貰うってことか?
しかし、フェルが神を知ってるってどういうことだろう。
「ふーん。気になってたんだけど、ジェンドマザーって元々はスライムだったの?」
「うん、そうだよ。ただのスライム。気づいたら八源厄災の一体に数えられるようになってた」
「そんな成り行きでなれるもんなの?」
「うんうん、君ももしかしたらなれるかもね」
…まじか。まぁ、なるつもりは無いけどな。
「ノア様、お客様が来ています。どうされますか?」
俺を探していたのか、フルティエがこちらに近づいてきた。
「そうか、なら応接室に連れてきてくれ」
最近ちゃんと部屋を分けて、役割を持たせたのだ。
早速、役に立つ時が来たな。
俺は応接室に入ると、手前の席に体毛が濃い人がいた。
人間じゃなくて、獣人族か。
「やぁ、俺に用があるのか?」
「あぁ、ここにチェリアがいるはずなんだが…」
するとちょうど飲み物を持ってきたチェリアがお辞儀をして応接室に入ってきた。
礼儀作法もほぼ完璧になってきて、流石フルティエだな。指導もしっかりできているようだ。
「あ、チェリ…ア。隷属…魔法だと…!!」
獣人族はいきなり俺にパンチを繰り出してきたので、俺は魔法の盾で防ぐ。
完全な不意打ちだったが余裕のガード。
うーん、スピードは並で力はそこそこありそうだな。
「お前…!」
「どうした?そんないきり立って」
「ノア様!」
「チェリア…?お前どうしてそんな奴に…」
うん?全然話が見えてこない。
いきなり攻撃されたし、どうしたもんか。
「ヴァレット様、その態度は失礼かと。もう一度ノア様に手を出したらお客様だろうと容赦は致しません」
…フルティエもこの数ヶ月でかなり心の方も成長したようだな。
「チェリアは、何故奴隷になってるんだ?」
「いや、分からん。俺は買っただけだからな」
「…そうか。貴方が我が妹を奴隷にさせたのかと思ってしまった。殴ってしまってすまない」
妹か、なるほどな。
そういうわけで、俺を殴ってしまったわけか。
「いや、いい。例え食らってたとしても痛くも痒くもない一撃だったからな」
獣人ヴァレット君も失礼を働いたのだ、これくらいは仕返ししても許されるだろう。
「…ありがたい」
「で、要件はなんだったんだ?」
「あぁ、実はチェリアに言うことがあってな」
「…?」
「使用人をはけさせた方がいいか?」
「頼む。貴方は大丈夫だ」
俺は立ち上がり、フルティエを外に出す。
ドアから出て外の廊下で小さな声で話しかけてくる。
「大丈夫でしょうか?」
「あぁ、完全な不意打ちでも殺されることは無いレベルだったから大丈夫だ。盗み聞きとかすんなよ?」
俺は再び応接室に入ると席に座る。
ヴァレットと呼ばれた獣人の隣にちょこんと座るチェリア。
こうしてみると結構似てるな、流石兄弟だ。
「実は、獣人族の里に危険が迫っているんだ」
「ほう?何故そんなことがわかるんだ?」
「村に占い関係のスキルを持った者がいて、その者が占いをしてわかったことだ。その者の今までの占いの的中率は100パーセントだ」
「なるほど。で、その占い師はなんて言ってたんだ?」
「その者が言うには、村には「大地の化身」が迫っていると、言っていた」
大地の化身…。
もしかして、八源厄災の1人…なのか?
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