第87話 教え

「クイズー!俺の懐にはどれくらいの金があるでしょうか」


 俺はダーグとすれ違いがおきた翌日に使用人たちやフェルを集めて、会議をしていた。


「会議をするんじゃないのか」


「会議兼クイズだ」


 ジト目でみんな俺を見てくるが、適当でいいんだよ、こういうのは。


「はい、ノア様は結構お金の管理が甘い気がするので、100金貨」


「ぶぶー、罰でミニスカメイド服な」


「んなっ!?」


 相変わらず反応が新鮮で面白いやつだな、フルティエは。


「…はい、500金貨…、くらい?」


「おぉ、ほぼ正解ー。ご褒美のなでなでー」


「ふふ…」


「そんなことしてないで、なんでそんなことを聞いたんじゃ」


「よくぞ聞いてくれた!実は使用人を増やそうと思いまーす」


 一瞬の沈黙の後、疎らな拍手が響く。

 うーん、反応が悪いな。

 もしかして、新人が来るのが嫌とかあるのかな。


「まぁ、取り敢えず今考えているのは清掃担当2人と、アルトルの補助担当、ついでに庭担当の4人だ。なにか質問とかある?」


「はい」


「じゃあ、フルティエ」


「清掃担当ってことは、私は…」


 まぁたしかにそう言われたら解雇かも、なんて思うかもしれないよな。


「この前、セリアが襲撃してきた時にフルティエが割と戦闘も出来ることが分かったから、戦闘訓練重視で清掃の時間を減らそう、と思ってな」


「なるほど!」


 うん、いい笑顔。


 人が増えると、トラブルの原因にも繋かねないが、まぁそこはしっかりとやって欲しいものだ。


「じゃあ、フルティエとアルトルは奴隷市場で役に立ちそうな者が居たら連れてきてくれ。無理に4人も連れてこなくてもいいから能力がありそうな奴を頼む」


「了解です」


「分かりました。それでご主人様は一体何をするつもりで?」


「あぁ、ちょっとな」


 ―――


 私はご主人様に連れられて、ギルドにやってきた。

 ギルドには筋肉が凄い人や大きい人、かっこいい女性の人なんかがいっぱいいて新鮮な気持ちだった。


「じゃあ、まずは冒険者登録するか」


 ご主人様が受付の人になにやら話して、しばらくすると変な機械を持ってきた。


「じゃあ手を翳してくれ」


 私はその言葉に従い、変な機械に手を翳した。

 すると変なカードの様なものが機械から出てきた。


「・チェリア、・年齢12歳、・階級F」


「うん、ちゃんと出来たな。これがチェリアの冒険者カードだ」


 これが私の冒険者カード…。


 私は冒険者カードを手に持って上に翳して、見つめる。

 なんだか、ノア様とお揃いのカードを持ってるってなんだか嬉しかったから。


「の、ノア様とお揃いですね…!」


 私は今までご主人様と呼んできたのをノア様とわざと呼んでみた。

 ノア様は優しいから怒りはしないだろうけど、不機嫌になっちゃったらどうしよう…。


「お、そうだな!早速依頼受けに行くか!」


 …そんな細かいことで悩んでいるのは私だけだった。

 私の中のノア様の印象が少し変わったような気がした。


 そこからギルドで依頼を受けて、平原にやってきた。

 討伐対象はスライムで、打撃攻撃に対して高い耐性を持っている、とノア様に道中に教えてもらった。


「お、あそこにスライムがいるな。じゃあ、剣をまずは構えて、戦ってみてくれ」


 私はノア様に言われた通り、剣の訓練を雇われた日からずっとやってきた。

 ノア様に褒められるためにも頑張らないと。


「ってい!」


 スライムに接近して剣を振り下ろす。いつもは木剣だが、今回は真剣だから少し感覚が違ったが、ちゃんとスライムに当たりスパッとスライムが真っ二つになる。

 だが、真っ二つになった片方のスライムが動き始めた。


 斬るだけじゃ、ダメなのかな。


 私は助けを求めようと、ノア様の方へ視線を向けるが、ノア様はじっとこちらを見て、教えてくれるような雰囲気ではなかった。


 …私自身で考えないと。


 スライムは動きは遅いから、取り敢えずゆっくり観察してみよう。

 スライムはうねうねと動きながら、反撃をしようとゆっくりと私に近づいてくる。

 真っ二つにして、動き出した方とは別の動かずにドロドロと形を保てなくなったスライムの方へ視線を送る。

 そちらは魂が抜けたように動かなくなっていた。

 再び、動いているスライムの方へ視線を送る。

 こっちのスライムはちゃんと動いていて、私を攻撃しようとする意思があるようだ。

 そして、動くスライムの方には体の中心に何か、ガラスの様な透明な多面体が浮かんでいる。


「やぁっ!」


 私はそのガラスの多面体に攻撃をした。日々の訓練のおかげかちゃんと心を捉え、破壊された。

 すると、スライムは動かなくなった。


「うん、よく観察したな。あれはスライムの核で、スライムの心臓だな」


「…ふふ、やったぁ」


 私が喜んで、褒めてもらおうとノア様の方へ近づくと、顔は真顔で少し怖い感じが見て取れた。


「だけど、途中で俺のことを見たり、倒したと思って油断するとチェリアが今度は攻撃されて痛い思いをするかもしれない。相手が強かったら死んでしまうかも。だから、魔物との戦闘中は絶対に油断しないことを覚えような」


 …確かに、私はノア様が何とかしてくれると思って油断してたかもしれない。


「…はい」


「分かれば大丈夫。しかし、よくやったぞ。残りの討伐もやってこう」


「はい!」


 私は再びスライム討伐に向かった。

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