第86話 才能

 ノアがギルドマスター、闇纏のゴルバルドから2階の応接室で提案を受けていた頃、ダーグは1階のギルドに来ていた。


「おいおい、まさかあれって…」

「え、嘘だろ…!」

「きゃぁ、割とカッコいいかも…」


 口々にヒソヒソと話し始める冒険者たちは次第に増え始め、挙句にギルドは大盛り上がりになった。


「いつの間にこんな有名になったんだろうな」


「知りませんよ。ダーグさんが活躍してるからじゃないですか?」


 ダーグは王国のギルドで受付をしてくれた受付嬢のアリッサは呆れたように答える。


「…あの女冒険者、ダーグさんをいやらしいで見やがって…」


「うん?なんか言った?」


「い、いえ!何でもないです!それで今日は何故王国のギルドに?」


「いや、小さい黒髪の男の子を探してるんだけど…、なかなかこの王国の広さじゃ見つけられなくてな。ギルドに来たら何か分かると思ってさ」


「小さい男の子…」

「お、おい!どうしたお前!誰か!」


「…あの女…!私のダーグさんでいやらしい妄想をしやがって…」


「アリッサってそうやってブツブツ呟くこと多いよな。なんでだ?」


「へ!?いや、呟いてました?私」


 ダーグは一通り受付嬢のアリッサと話終えると、ギルドでは自分がいると迷惑になると察して、ギルドを出ていった。


「さーて、これは少し長くなりそうだな…」


 ―――


 俺はゴルバルドと話して、B階級冒険者に上げてもらうことにした。

 それだけじゃ、足りないって言われて、更に金貨100枚近くを貰って、俺の懐はかなり潤ってきた。


「あれ?なんでこんなに騒がしいんだ?」


「あ、坊主!さっきな優闇のダーグが来てたんだぜ!?」


 さっきの話しかけてきたおじさんが、再び話しかけてきた。

 優闇のダーグが来ていたってことは、もう既にギルドにはいないのか。

 ダーグは王国に戻ってきていたんだな。綺麗にすれ違いになってしまったが…。


 繋魔の探知パーション・サーチで探そうと思ったが、この数ヶ月で魔力量も上がったのか、ダーグが見つからないな。

 しかし、この繋魔の探知パーション・サーチは対象の魔力が変化してしまうと探知出来なくなるんだな。

 新しく情報が知れて嬉しいな。

 改善点が見つかったから、近いうちにでも強化させておこう。


「今から歩いて探すとなると時間がかかるな。わざわざ探しに行かなくても、王国内だから見つかるだろ」


 俺はダーグを探すのを諦めて、日が暮れてきたので、豪邸に帰ることにしたのだった。


 ―――


「うーむ、白銀の獣…」


 ライリー・ジーグボルトはあの日見た光景を思い出していた。

 あの時、王国は終わったと思った。だが、何故があの白銀の獣があの超巨大なスライムを追っ払ってくれたのだ。

 その獣は空から隕石を降らせるし、超巨大な大竜巻を発生させたりと、この世の理を超えているとしか思えない程に強かったのだ。


「しかし、予言にはそのような予言はなかった。しかも予言には王国を飲み込むと言われていたが、王国はすんでのところで救われた」


 ライリー・ジーグボルトは考えを巡らせる。

 今まで得た知識であの白銀の獣の情報はないかと、脳の引き出しを開けたり閉めたりを繰り返して、情報を引き出す。


「…もしかして、あの白銀の獣って…」


 ライリー・ジーグボルトの頭の中ではその情報が引き出しから取り出されたのだった。


 ―――


 俺は豪邸に帰った後に、アルトルのご飯を食べて、豪邸のクソデカベットにて眠りについた。


 だが、数時間後俺は寝苦しさを覚えて目を覚ました。


「…お前、なにやってんの」


 そこには俺の体の上でくねくねと蠢いているジェンドマザーが居た。


「目の前にスライムの女の子いるんだよぉ?興奮するでしょ」


「しねーよ、スライム野郎。どけどけ」


 俺はくっついてくるジェンドマザーを引き剥がして、再び眠りにつく体制に入る。


 だが、ジェンドマザーは手を触手に変えて俺の体を弄ってくる。


「ちょっ!おまっ…」


「ふへへ、おおおこれがっ!」


「…おい、何をやっておる」


 その瞬間、背筋も凍るような鋭い殺気が俺とジェンドマザーを貫いた。


「助かった…」


「全く、ジェンドマザーは監禁じゃな。ノア、縛りつけろ」


「御意」


 俺は魔法で縄を作るとジェンドマザーをぐるぐる巻きにして、ベットから蹴り飛ばす。


「ぐへ」という鳴き声と共に床にぶつかるジェンドマザー。


「け、蹴る必要あった…?」


「あぁ、今のは死刑でもおかしくなかったんだぞ。感謝しろ」


 ジェンドマザーは縛り付けられ縦足をグネグネと芋虫のように器用に使って逃げ出そうとする。


「ほら、猿轡じゃ」


 ジェンドマザーに思いっきりガッと咥えさせるフェル。アイツはやっぱSクラスなだけにSの才能もあるようだ。


「ほら、こっちじゃぞ」


 猿轡の後頭部のところを掴んでジェンドマザーを引きずるようにして部屋の外に出ていったフェル。


 あぁ、ジェンドマザー。良い奴だったよ。


ひんはほほにふるなー死んだことにするなー!」


 なんであいつは俺の心の中を分かってんだよ。


 まぁいいや、ようやく俺の快眠タイムがやってきたな。


 俺はその夜はぐっすりと寝れたのだった。








 ―――――――――

 ジェンドマザーの「おおおこれがっ!」って言うセリフはご想像にお任せします。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る