第85話 A階級冒険者

「…冒険者ダーグ、破竹の勢いでA階級冒険者に昇級。人を助けることを目標として突き進んできたら、いつの間にかA階級に…」


 俺はギルドで依頼をこなそうと思い、色々見ていたが、なかなか決めれずに悩んでいる時に、掲示板に目線が行った。

 そこには冒険者ダーグがA階級冒険者になったという記事が記載されていた。


「まじか…、いくらなんでもはやすぎるだろ…」


「彼奴もノアだけにはそれは言われたくないだろうな」


 なんかフェルが言ってるが無視だ。

 しかし、確かに俺はダーグに目標を提示したが、それはなんと言うか…、産まれたばかりの赤ちゃんに「将来は野球選手になって欲しい」みたいな俺の願望に近かったのだが、もう既にクリアしたみたいだ。


「お、坊主もダーグのファンか?すげぇよな、数ヶ月前にはこんな名前のやつはいなかったが、今じゃもう冒険者界隈の中でも有名だぜ?優闇ゆうやみのダーグって言う名がな」


 優闇…、つまり人を救う=優しいって言うのと、闇魔法を剣に纏わせて使うから、優闇って言うことか?

 しかし、通り名というと鎌鼬のノルザさんや闇纏のゴルバルドのようにかなり実力のある人物に付くことが多いが、ダーグもこの数ヶ月でかなり強くなったんだろうか。


「へぇ、そうなんだ。ダーグはすげぇな」


「おう、坊主もダーグみたいになれよー」


 ふむ、今どこで活動をしているのか分からないけど、会った時に話してみようか。

 取り敢えずは依頼をこなしていこう。


「おー、ノア。これなんかどうじゃ?PSYって言う大型の肉食の魔物じゃ」


「うん、それにしようか」


 俺たちは、その依頼書をギルドに提示して、PSYという魔物がいるという森に歩みを進めた。


 ―――


「久しぶりって言っても、数ヶ月ぶり、か」


 俺はA階級冒険者になったあと直ぐに王国に向かった。


 A階級冒険者に上がるきっかけになった依頼は山奥の小さな村が大蛇の出現で住めなくなってしまったから助けて欲しいというものだった。

 当然、そこで生活出来ないから農業などでの金稼ぎも出来ないから依頼書の報酬金額は1銀貨だった。

 恐らくギルドの仲介料などで差し引かれているだろうが、森奥の大蛇を銀貨1枚でわざわざ行くという冒険者はゼロ人だった。

 そりゃあそうだ、依頼主も必死だろうが、冒険者も生きていくために必死なのだ。

 俺はそのことには何も思わずに、その依頼書を即決して現地に向かった。

 そして、山奥の小さな村に居座っていたのは頭が八つある八岐大蛇だった。

 八岐大蛇はA階級上位に入ってくる危険な魔物だ。

 だが、俺は死ぬ気で倒した。

 それがギルドに認められたのか、直ぐにA階級に上がったのだった。


「さて、ノアは確か学校に行ってるとか言ってたな」


 ノアに提示された目標をクリアしたから、早速報告に行こうと思い、学校に向かう。

 学校内はかなりの敷地で俺は人を探し回ってやっと見つかった学校の関係者に話しかけた。


「この学校にノアって人がいませんでしたか?」


「のあ?あぁ、Sクラスの子…かな?でも今は夏休みで私も何処にいるのか分かりません…」


「そうですか、ありがとうございます」


 俺は行く宛てが無くなり、街を歩きながらノアをさがすことにした。


 ―――


 俺たちはPSYを倒してギルドに帰ってきていた。

 PSYっていう魔物は容姿は地球にいたサイと一緒だったけど、肌は黒くて、魔法を使う魔物だった。

 まぁ、つまり魔法を使うサイを倒してきたわけだ。


「お疲れ様でした。ギルドマスターから話があるので、時間があれば是非応接室の方へ」


 ん?話ってなんだろう。


 俺は疑問を抱きつつも時間は幸い死ぬほどあるので、案内された応接室に入った。


「ゴルバルドか。要件は?」


「まぁまぁ、座って座って。フェルさんも座ってください」


 俺はそれに促されて、椅子に座る。

 椅子というよりソファに近いようなふわふわとした材質で流石王国のギルドの応接室だと感心する。

 そして、椅子で少し触った後にゴルバルドの方を見るとゴルバルドは怪しいものを見るような目でこちらを見つめていた。


「…もしかして、あの超巨大スライムを倒したのは、2人…ですか?」


 ゴルバルド以外に人は…、外に1人か。その者も特に反応はしていなさそうだ。


「取り敢えず、応接室の外にいる人をはけさせてくれ。話はそれからだ」


「わかった」


 ゴルバルドは立ち上がると、外に待機していた者をはけさせて、再び俺たちの前の椅子に座る。


「すまない、気が回らなかった」


「いや、構わない。それでさっきの話の返事だが、答えはYESだ」


「やはり…」


 ゴルバルドは分かっていたが、確信が欲しかったのだと言うような顔で、頷く。


 やはりS階級冒険者になれるような男は他の者とは一線を画す何かを持っているようだ。


「その件を何故?」


「えぇ、これは私の独断だが、貴方を無条件でB階級に昇級させたいと思っている」


「それとジェンドマザーの件が何故引っ付く?」


「秘密裏にあの超巨大スライム…、ジェンドマザーを倒したのに何も報酬が無いのはおかしいと思って…。それで私の判断だけでは無条件A階級冒険者にさせるのは無理だが、B階級冒険者までなら出来るという判断で、昇級させようという魂胆だ」


 なるほど、な。

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