閑話
閑話:漫画研究会
とある日、王立魔剣学校内の漫画研究会はある話題で持ち切りとなっていた。
その話題とは…、「今年のSクラスの生徒は綺麗な子が多い」という話題だった。
「誰推し?誰推し?」
「うーん、迷う!迷うけど…、エミリート君!あの声変わり来てない可愛い声と剣に一筋な感じがいいんだよなぁ。かっこかわいいっていうか?」
「私は、レオとオーウェンだなぁ…。あの日、あんなのを見せられちゃぁねぇ…」
「え!?何を見た…?教えろ、BL野郎」
「お?なんだその言い方は?教えんぞ?」
と、こんなふうに盛り上がっていた。
彼らはそれらの妄想を絵に変換して、他人に見せるということが可能であり、その絵を書く力を使って、日々自分の推しについて語り合い、妄想を見せつけあって楽しんでいた。
「あ、私の絵が…」
気づいた時には遅く、部屋の中を通った風に絵という名の妄想は窓から空を舞って、校舎下に落ちていった。
「ま、まずい…。私の絵がぁ!」
漫研の部員が急いで部屋を飛び出して、絵の落ちた場所に行くと、そこには1人の女の子が居て、落ちた絵を拾い上げてそれをまじまじと見ていた。
「あ、あの〜。その絵、わ、私のなんですけど…」
あまりにもじっくりと見ているその女の子に恐る恐る声をかける漫研の部員。
「え、あ…。これって…?」
「あ、す…。これは、漫研で描いてる絵で…」
「漫研ってこんなことしてたの!?」
「あぁー!バレたァ!終わりだ…」
王立魔剣学校の生徒とあろうものがこんなふしだらな絵を描いていると知られたら、間違いなく漫研は潰されて、部員の人生は終わる。
あぁ…。全く!いい人生だった!
「…私も入ってもいい?」
「あっ、す。誰にも言わ…。え?」
絵を拾った女の子に再び視線をやると、鼻血がタラーっと出てきていた。
何故…?
「あぁ!」
漫研の部員は思い出す。
自分もこの漫研に入った時は衝撃的だったことに。
そう、この王立魔剣学校は仮にも王国1の学校。故に真面目に育ってきた生徒は「性」に耐性が無いのである。
「ぜひぃ!」
漫研の部員の声が大きく木霊したのだった。
そして、数日後には漫研の部員の数は問わず倍以上になっていた。
だが、その生徒たちは全て「絵」に惹かれてしまった生徒たちであった。
「誰推し?誰推し?」
「拙者はフェル殿でごさるなぁ。ムフ、あの顔で踏みつけて欲しいでござるなぁ」
「分かってないな、君は。本当にキモイよ。僕はエマちゃんだ!エマちゃんのあの無表情な顔!最高!」
「カルトちゃんのあの元気っ子ぷりがカワイイなのに馬鹿なヤツらめ」
「「なんだと?」」
「はぁー、全く。男子は分かってないわね」
「えぇ、全くですわ。それにしてもノア様は黒髪が素敵ですわ…」
「いやいや、エミリート君の方が可愛いしかっこいいし素敵…」
「レオオウェが最高、異論は認めん」
「な、なんですの…。この絵は…えっちすぎる…。ノア様、流されてしまいそう…」
「あぁ!鼻血が止まらないぞ!だれか!助けてくれ!」
こうして、漫研の部員の語らいは一生終わることなく、ノアたち本人の知らぬところで進んでいく。
そして、出回った絵が教師に見つかるのも時間の問題であった。
―――――――――
息抜きパート1
次も閑話が続きます。
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