第73話 海だッ!

 夏休みといえばなんだろうか?


 ゲーム、虫取り、アイスクリーム…。色々あるが、海と答える人が多いだろう。


「そう、俺は今海に来ている!」


「急にうるさいの」


 浜辺では色んな種族が入り乱れて楽しんでいる。

 これが平和と言うやつか。


「拠点はここだよー!」


 カルトが巨大なパラソルを砂浜にぶっ刺して、その日陰の中に椅子やら机やらを置いて、拠点作りを始める。

 その両隣にも同じくパラソルをぶっ刺して日陰を作る。

 今回来ている人数が人数だけに、かなり幅をとっているが大丈夫だろうか。


「今日来たのが…、11人か。俺も友達が増えたもんだ」


 この世界に来て15年とちょっと、こんなに知り合いが増えて、前世より暮らしやすいまであるこの世界。


 …タケルも環境に恵まれれば薬毒牙に入らずに幸せに暮らせたんだろうな。


「なにしんみりした顔してるのじゃ、さっきまでうるさかったくせに」


「いや、もっと騒ぐから覚悟しとけよ先生」


 今日は楽しむぞー!




「に、似合いますか…、ご主人様…」


 チェリアが早速水着を着てきて、照れながらも俺に見せにきた。


「おう、いい感じだな。それにしても獣人って個人によって体毛の濃さは変わってくるんだな。チェリアは獣人の中でも人に寄っている気がする」


「はい、その通りです。私は…、少し体毛が薄い、かなって感じてます」


 そうなのか。人間とのハーフだったりするのかな?とゆうか他種族間での生殖活動は出来るのだろうか。


 いや、全くやましい気持ちはないけど気になっただけだ。


「ノアも早く来い、あんだけはしゃいでたお前が1番遅いぞ」


 おっと、レオが海の方から俺を呼んでいるな。

 レオの方にはSクラス全員がいる。


「チェリアはどうする?海に行くか?」


「大丈夫…です。私は、砂で遊んでます」


 そうか、なら早速海に行くか。


 俺はわざわざ身体強化の魔法を行使して、勢いよくみんながいるところへダイブする。

 水が思いっきり飛び散りまるで爆発が起きたかのような水しぶきが上がる。


「やったな?僕もッ!」


 今度はエミリートが身体強化の魔法を行使して一気に飛び上がり、落下する勢いで水しぶきをあげる。


「俺たちは泳ぎの勝負をするか、オーウェン」


「望むところ。負けたら飲み物1本奢りだ」


「ほう?まるで自分の負けは無いと言わんばかりの物言いじゃないか?」


「負けるのが怖いかレオ」


「ふっ、言うなぁ!じゃあ勝負だ!」


 レオとオーウェンは泳ぎ対決をやってるようで、バチバチだ。

 よし、じゃあ俺たちは違う遊びをするか。


「バレーボールやろうよ、1人審判でさ」


「バレーボールって…?」


 あ、そうか。この世界にはバレーボールっていう概念がないのか。


「バレーボールってのはな…」


 ―――


 ノア様はいつも以上にはしゃいでいるように見える。

 やはり、海で気分転換は凄く効果的のようだ。


 ノア様は常日頃から魔法の研究をしていて、恐らく毎日疲れが溜まっている。


 しかし、この前ノア様の魔法の少しを見せて頂いたことがあるが、今まででも見た事がないような魔法ばかりであった。

 それらは全て、ノア様自身が既存の魔法を強化したり派生したりして作り出したり、自分で生み出す場合もある。


 ノア様のおかげで、魔法は何世紀分発展したのやら…。


 海で遊んでいたかと思いきや、今度は砂浜でボールを跳ねさせて遊んでいる青年を見れば、普通の人はそうは思わないだろうな。


「ほら、フルティエも食べろよ。肉串だ」


 アルトルが肉串を焼いて持ってきてくれた。流石ノア様の使用人、気遣いが凄い。


「えぇ、ありがとう。アルトル」


 アルトルはある日から、ノア様の前では性格が変わったかのように敬語を貫き通すようになってしまった。

 何かあったのだろうか?


「チェリアも食べるか?」


「うん…、ありがと」


 最初はあまり関わる気はないと思っていたが、私たち使用人の絆も少し深まってきたのかもしれない。


 そもそも、奴隷を買う奴は腐っていると思い込んでいた私はノア様と絆を結べたことも少し感動を覚えている。

 だから、掃除以外でもノア様の役に立って褒められたいと思うのだけど、私は料理はアルトルのようには出来ないし…、何か役に立てるものがあればなぁ。


 …海に来ているのに考え事はおかしいわね。

 今日はそういうことも含めて一旦忘れて楽しみましょうか。


「ほら、あなた達に飲みのも持ってきてあげたわよ」


 アウレナが全員分の飲み物を用意してくれていた。

 この子も色々過去がありそうだが、今はこの子とも仲良くなっていきたいな。


「あなた、どういう経緯で使用人に?」


「い、言わないわよ!」


「え?なんだその反応気になるな?」


「う、うぅ…」


 肉串に飲み物で私たちは大いに盛り上がったのだった。


 ―――


 時間はもう既に6時くらいを回っており、辺りの空は夕焼け色に染まっていた。

 この海で遊ぼう計画と名ずけた計画は1泊2日を予定しているから明日も遊ぼうと思うのだけど、体力が持つか心配だな。


「はぁー、バレーボールっていうのは楽しいね!ノアの故郷にはこんな遊びがあるんだー!」


「うん、楽しかったね。明日もやりたい」


「あぁ、スマッシュ?じゃったか。それを放つのが爽快じゃ」


「いいね、バレーボール。明日もやろう」


 みんな楽しんでくれたようだ。俺たちがやっているものを真似て周りの人も何組かやっていたようなので、それで楽しんでくれたのなら何よりだ。


「さぁ、今日はもう宿屋に行こう。奮発して少し高級な宿屋を貸切にしたから枕投げやりたい放題だぞー」


「枕投げってなにー?」


 あ、あれ?枕投げも知らないか。


「枕投げっていうのはな…」


 俺はみんなに枕投げのことを教えながら、宿屋に向かうのだった。







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