第72話 水着だッ!
「えぇ、ここの魔法の構築ですが…」
魔法構築の講義が進められていく。
季節は夏に差し掛かり、気温は高くなっていく。
日本の夏は常に湿っぽくて地獄だったが、この世界の夏は比較的乾燥していて日本ほどの暑さでは無い。
だが、暑い。どうしようもなく暑いのだ。
こういう日はアイスクリームをコンビニで買ってクーラーの効いた部屋で食べたいが、この世界にはアイスクリームもクーラーもない。
誰か、転移者はアイスクリームとクーラーをこの世界にも普及させて欲しいものだ。
「あら、もう時間ですね。今日はここまでです」
あ、余計なことを考えていたら講義が終わっていた。
まぁ、でもだいたい知ってるところだったし大丈夫だろう。
「暑いねー!ノア!」
講義が終わってすぐにカルトが話しかけてくる。
「カルトの方が暑苦しい」
「そうかな!」
「そうだよー、暑いー」
「ならさ!海行こう!海!」
「うーみー!!」
海いいね!海最高だ!海行きてぇ!
海行ったら何する?まず泳いで、美味しいご飯食べて、女の子とバレーボールなんかして…。
うぉぉぉ!なんか燃えてきた!
「海行くぞ!カルト!」
「おー!」
勢いに任せた会話は一旦終了して、俺たちは海に行く計画を立てていくのだった。
―――
ノアって魔法しか興味無いかと思っていたけど、海に行く提案は意外と乗り気で嬉しかった。
あー、本当に誘ってよかったよ。
海といえば水着だ。水着、トテモタイセツ。
ノアが色々計画を立てているが、全然頭に入ってこない。
私の頭は今水着に支配されている。
何色にしようかなぁ…。
「みんな誘うねー」
「…うん」
白はちょっと私には合わないような…、やっぱ赤かなぁ。
「うちの使用人たちもいい?」
「…うん」
水着のタイプはー…、ビキニは…だめだめだめ!流石にワンピースタイプで行こう、そうしよう。
「じゃあ、夏休み入ってから行こうねー」
「…うん」
あー、楽しいだなぁ。
―――
カルト俺が計画を説明してる時ずっとなんか考え事していたけど、ちゃんと聞いていたのか?
まぁ、いいや。
海といえば水着だよなあ。
水着、トッテモダイジ。
「使用人たちの水着は…、自分で選んでもらおう」
アウレナも行くかなぁ。
もう落ち込んではなさそうだったけど、楽しことすれば自ずと気分も上がるしいい気分転換になる。
「楽しみだ」
「今日はお前らの水着を買いに行くー。これは命令です」
「えぇ!?聞いてないわよ!」
「言ってないからな」
アウレナが自分のお腹を見つめてブツブツとなにか呟いている。
「フルティエはマイクロビキニなー」
「なっ!…ノア様、冗談は程々にお願いしますね?」
この殺気…!そしてあの鬼の形相!
怖すぎだろ、オークかと思った。
「嘘だよ、じゃあ行くか!」
俺たちはあの王国に行く前に来た服屋に来ていてた。
確か、服屋に水着のコーナーがあったのを思い出したのだ。
「各自、選んでくれ。高すぎるのは審議だ。では解散」
俺の貯金は今は金貨200枚程度しかない。マジックスクロールの件で割とお金は入ってきているが、使い所をちゃんと見極めていかないとな。
「ご主人様、私はこれにします」
アルトルが持ってきたのは、ごく普通の南国風の絵柄が書かれたトランクスタイプの水着だ。
「ご主人様…、私は、これにします…!」
チェリアが持ってきたのは可愛らしい、いかにも女の子っぽいフリフリが着いた水着だ。
「ノア様、私はこれにしようかと思います」
フルティエが持ってきたのは普通の白色のビキニだ。
「私はこれよ、いい感じじゃない?」
アウレナが持ってきたのはタンクトップビキニのような水着で、肌の露出は少なめの水着だ。
そして、俺はごく普通のトランクスタイプの水着である。
普通が1番なのだ。
「合計で、金貨10枚になります」
流石は高いお店だ。
水着だけで金貨10枚になるとは…。
だがまだ払える金額だ。
俺たちは自分の水着を手に取ると、家に帰るのだった。
―――
「カルト、ありがとう。誘ってくれて」
エマがいきなりのそう言ってきた。
え?私、ノアとふたりで行く予定だったのだけれど…。
私が疑問の顔でいるのがわかったのか、レオが話しかけてくる。
「あの時、魔法構築の講義に俺も参加していたが、ノアが計画をカルトに伝えてる時に、お前はなにか考え事をしているようで、適当に返事をしているように見えたぞ」
「えぇ!」
もしかして、私がどういう水着を着ていくか迷っていた時に話しかけられていたのか…。
…まぁ、みんなで行った方が楽しいよね!
「じゃあ、折角だしみんなで楽しもー!」
「いえーい」「そうだなー」
このふたりめ…、なんて誘いがいがない奴らだ。
取り敢えず、街に出て水着の準備だー!
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