第55話 褒美
俺の魔法「
「やっぱり。儂の目に狂いはなかったな。では、正式に褒美を渡そう。もう一度謁見の間へと来てくれ」
王はそう言うと、訓練場から出ていく。
息子が
魔人を倒したという情報を持っている王は息子や大臣たちが負けるのが目に見えていたのかもしれないな。
「卑怯者め…」
王子が手と足を体に縛りつけられて芋虫のような状態になっているのにも関わらず、真剣な顔でこちらを睨んでくる。
その光景を見て、再び笑いが込み上げそうになる。
…もしかして、この王子は俺たちを不敬罪として死刑にして殺すつもりか…?
なんという策士、やりおる。
なんて冗談はさておき。
「………」
余計なことを言うと更に怒らせそうなので、俺たちは何も言わずに闘技場を後にした。
―――
父上が見てるのは少し厄介だが、ここでこいつらとの模擬戦闘で事故を装って殺してやる。
いくら魔人とはいえ、俺には
ふっ、これで魔人たちは万事休すだな。
さて、さっさと姿を表せ、魔人たちよ。
「失礼ですが、鈍ら刀では無いのですか?」
1人の青年が話しかけてくる。
魔人が俺に話しかけるとは穢らわしいが、ここではまだ殺してはダメだ。
その場合魔人に逃げられる可能性がある。
ちゃんと模擬戦闘を始めてから確実に殺そう。
「あぁ、これが普…。いや、より実践に近い形で…、魔人と戦った時と近しい緊張感の中で模擬戦闘をしないと実力が分からないであろう」
そう俺が説明すると奴らは少し考えたあと納得した様子だった。ならばもう始めよう。
「では、ルールを説明する。ルールは動けなくなったら負け、ただそれだけだ。我らが勝ったら、帰れ。以上だ」
ふっ、帰すつもりは無いがな。
いちよ、ちゃんと説明しといてやる。
「では、審判こちらに来てくれ」
俺が呼んだのは賄賂を渡した審判。暗殺芸を得意としており、王の目を盗み相手を殺すことも出来るだろう。だが、これは俺の獲物だ。魔人を倒した功績で上り詰める為の俺の栄養だ。
「両者ともに構えて…、初めッ!」
その声とともに審判が毒針を投げつける。毒に苦しんで、そして俺に殺されて栄養にされることを誇りに思えよ、魔人たち。
だが、飛来した毒針は黒髪の風魔法によって吹き飛ばされる。
チッ、気づいていたか。流石は魔人と言ったところだろう。
だが、ここからが本番だ!魔人!俺の剣によってお前らを殺してやる!
「「拘束魔法」」
――瞬間、両手両足が動かなくなり地面に顔から激突して滑る。
拘束魔法だと!?
だが…!後ろには大臣がいる!
「
出たぞ、
「
だが、目の前に現れた巨大な鏡によって何故か反射され、大臣に向かっていった
な、なんだあの魔法は!?あの大臣の魔法を反射しただと!?
クソっ!これ程までに強大だったか、魔人め…。
「やっぱり。儂の目に狂いはなかったな。では、正式に褒美を渡そう。もう一度謁見の間へと来てくれ」
そう呑気に言った父上は、闘技場を後にした。
クソっ、何を呑気な…。
もしかして父上も魔人に操られているのか…?そうだとしたら納得が行く。
「卑怯者め…」
思わず口に出る言葉。
魔人たちは俺の方を見たのにも関わらず、無言で闘技場を後にした。
「くっ、解けません。ガイオス様、どうしますか?」
「誰か、奴らが変な動きをしないように監視しろ。数人は残ってこの魔法を解除しろ!」
クソっ、許さんぞ魔人共め…。
―――
「やはり、お主らの実力は魔人を倒すに値することがわかった。さて、褒美の件だ。何か欲しいものがあるなら儂ができる限り用意しよう」
俺たちは謁見の間に来て、王の提案に頭を悩ませていた。
褒美、かぁ。今欲しいものは特にないんだよなぁ。
王の前で失礼だと思うが、数分長考をする。他のみんなを見渡すとみんな決まったようで、俺だけが悩んでいた。
「ふむ、褒美が決まらぬか?」
俺の様子を見て、察してくれた王は話しかけてくる。褒美が決まらないんだよなぁ…。
どうしようか。
あ…、そういえば。
「お、決まった。かならば1人づつ言っていけ。出来る範囲で叶えてやろう」
1番右にいるフェルからかな?
「我は時には何も要らぬ。だが、お菓子1年分を所望する」
えぇぇ…?
まぁ、自分が欲しいものを貰えばいいと思うけど…、王にお菓子を強請るのはどうかと思う。
「私は特には何もやっていません。ですので何もいりません」
次のカルトがそう言うと、エマやエミリート、オーウェンが同じようにそう答えた。意外とみんな無欲なんだな。俺がその立場だったら何かしらは貰っていただろうな。
「そうか、ならばそれでも良い。次は?」
「自分は、モンド家を
「ほう、主はモンド家の息子であったか。確か男爵位だっか。わかった、そうしよう」
魔人討伐とは思った以上にとんでもない功績なんだろうな。フェルがワンパンして倒すから凄さが薄れるけど。
よし、俺の番だな。
「自分は…」
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