第52話 死んでも直らないものもある

「失礼、貴方はノア様とお見受けする。私は国王に命じられて貴方様を連れてくるように言われた使いの者です」


 俺が学校で次の講義のために廊下を歩いていたら、突然話しかけられた。

 急な出来事だったために、俺は混乱する。

 国王?なぜ俺にそんな人が。


「そう、ですが…。なにか?」


「王国に攻め入った魔人を倒した人物として王から直々に城に来て欲しいとの事です。そして、フェル様も同じように使いの者が来ているはずです」


 なるほど…。確かに俺は魔人を一体倒したが、数百はいた魔人を掃討したのはフェルだ。俺が呼ばれるのはおかしいと思うが、ここで王の使いの者を突っぱねたらめんどくさいことになるだろう。ここは城に行くしか無さそうだ。

 …フェルは面倒くさいって言って、使いの者を突っぱねてたらどうしよう。


「では、明日のお昼頃に城においでください。正装が無ければ我々の方で用意します」


 そう言うと、使いの者は颯爽と去っていった。

 …正装か。フロストベアのおかげでかなりの大金が入ったし、ちょっと高い服でも買って見ようかな。

 フェルに日頃の感謝も込めてフェルの服も何個か買ってあげよう。




 使いの者が来た日の午後、フェルといっしょに少々お高い服屋さんに来ていた。


「うーん、我は服なんて別に欲しくは無いのじゃが…」


「そう言うなよ。この国の王に会うんだぞ?適当な服で行ったら失礼だろ」


「ふん、まぁ我は適当に選んでくる」


 そう言うと、フェルは面倒くさそうに服を物色し始めた。仮にも女性の格好をしているのだ。服は気にしないとな。

 俺は俺で、いくつか気になる服を手に取っていく。

 しかし、俺は服のセンスが全くない。中学生と高校生の時は親が買ってきた所謂「親コーデ」と言うものを着ていて、流石にまずいと思い、大学からは自分で選ぶも友達にからかわれ結局マネキンコーデばっか買っていた。

 …言葉通り、新しい自分に生まれ変わったのだから、この機会に自分で服を決めてみるか。


 全然決めれなくて、色々手に取って試着室に向かう。店員さんが何やらチラチラ見ていたが、俺の選んだ服がおかしかったのだろうか?なんだか不安だな。

 …いや、この感情自体服を選ぶ時には不必要な感情だ。


 自分の選んだ服に自信を持て!俺!


「ふはっ!なんじゃその服は!ふふ、ふはは」


 やはり、俺の服のセンスは壊滅的だった。


「ほれ、我が選んでやるからその服を戻してこい」


 そう言うフェルはデニムとロゴが入った黒いTシャツの上に黒いオーバートレンチコートを羽織ったボーイッシュな感じの服を選んでいた。スタイルがいいとはこんなにもずるい事だったんだな。前世では気づけなかった。




「ほれ、これなんかどうだ?」


 俺はフェルから渡された服を試着室に持っていく。

 試着室の中で、服を着々と着ていく。


「そう言えば、使いの者が来た時に俺はフェルが突っぱねないか心配だったんだ。けど、ちゃんと受け入れてて良かったよ」


 そう言えば、と俺は心配だったんだと伝える。フェルは数千年も生きてる獣だ。何故人間に従えばならんのじゃと言わない保証はない。


「ふむ、このフェンリルを城に招くとは面白い、と思ったのでな承諾した。まぁ相手はそう思ってないだろうが」


 そうか、なら良かった。


 俺は服を全部着て、試着室を出る。そして、フェルに服装を見せる。


「なかなか良いでは無いか。買ってしまえ」


 近くにある鏡で自分の服装を確認する。

 タートルネックのセーターの上にジャケット、下はジーンズと俺の服装のセンスとは比べ物にならないほどに上出来な服だった。


「おおぉ、いいじゃん。フェルって意外と服のセンスもあるんだな」


 俺は照れるフェルを横目に、王に会うための正装を探し始めた。


 ―――


「王立魔剣学校1年Sクラスの皆さん集まって頂きありがとうございます。私は王より王立魔剣学校の1年Sクラスの皆さんをお連れするように命令され、連れてくるように命じられた王の使いの者です」


 次の講義はみんなで受けようと約束して講義に向かう途中に突然、僕たちSクラスの前に現れた王の使いの者となのる人が現れた。


「僕たち…が?なぜ?」


 みんなその言葉を聞いて唖然としていたので僕が使いの者に質問をする。


「魔人と勇敢にも戦って生きのびた貴方達を是非とも城に招待したいと、王が仰っています。是非とも来て頂きたい」


 なるほど、魔人の件か。断る理由もないがここで断ったら失礼になるな。


「なるほど、分かりました。いつ頃ですか?」


「ありがとうございます。明日の昼頃に来て頂ければと思います。正装でのお越しをお願いします、なければこちらで用意致します」


 そう言うと使いの者は突然消える。


「びっくりしたー!とゆうか遂に私たちも王に城に招待されるなんてね!」


「あぁ、そうだな。確かに俺たちは戦ったが…、殆どはフェルが倒したもんだろあれ」


 確かに!とSクラスは笑う。


 普通に生きていれば王に会える機会なんてそうそう巡っては来ない。折角だし、ちゃんとした服装で行こうかな。









 ―――

 作者の服装のセンスが壊滅的なので、服の描写はこれ以降はほぼ無いと思います。

 因みにフェルは可愛いと言うよりはかっこいい印象のある服装が好きです。







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