4章 褒美と奴隷編
第51話 理不尽の不満
支配のノーフェイスがボロボロと崩れ、完全に消えたあと、俺はSクラスのみんなを寮に運んで各部屋に寝かした。
みんなは支配はされていなかったようだが、不意打ちで気絶させられていた。支配のノーフェイスはみんなを殺そうと思えば殺せたのにそうしなかったのは、彼女が完全に悪では無かったってことだろう。
一方フェルは支配をした張本人が倒れたことにより、魔人が統率が取れず更に暴れ回っていたので、引き続き掃討して貰った。
フェルならば、そろそろ魔人を倒している頃だろう。
「ノアー、倒したぞ」
コンコンとドアをノックして部屋に入ってきたのはフェルだ。全て魔人を倒してきたのだろう、流石はフェンリルだ。
「……」
「なんじゃ、腕は気にするな」
俺の視線がフェルの無くなった左腕に無意識に行っていたのか、フェルがフォローをしてくれる。
ノーフェイスを倒した時に、俺はフェルから俺が支配されていてフェルと戦ったことを聞いた。俺が「
これを気にしない奴は人間じゃないだろう。
「まぁ、不便じゃが大したことは無い。我はフェンリルぞ?片腕が無い如きハンデですらないのじゃ」
そう言われるが、左腕が無いのは不便で仕方ないだろう。出来る限り、俺がサポートしなきゃいけない。左腕が戻る訳では無いが…。
「ふむ、まぁ腕をくっつける方法はこの世には無くはない。それを当ってみることにするのじゃ」
切断された腕を戻す方法!?そんな魔法の域を超えた神の領域に踏み込むような行為が可能なのか。
「その方法は、神聖国にあるという回復魔法の最上位の魔法で、切断された手足を生やしたり、持病すら治す回復魔法が保管されているという噂がある。それを最悪奪えばよい」
…さすがフェンリルだな。片腕が無い如き本当にハンデだと思っていそうだ。
神聖国にある回復魔法を奪いに行く時は、俺も全力で手伝おう。
「さて、そんなしんみりした雰囲気はあまり好まない。あと2ヶ月ほどで夏休みとやらが始まるではないか!」
そっか、もう5月なんだな。
…そうだな、取り敢えず今は魔法と剣を特訓してフェルの横に並べるように、頑張らなければ。
こうして、支配のノーフェイスを倒した俺達は暫くの安寧を手に入れた…、と思っていたが。
―――
「王よ、報告致します」
王国の影であり、隠密隊の「影之腰刀」の一員である男が国王…、ライリー・ジーグボルトの前に突然現れて跪く。
ライリー・ジーグボルトは驚きを見せることなく、影之腰刀を見据える。
「支配の雷のことか?それとも魔人のことか」
今までの短期間でとんでもない量の問題が突如として現れて、それの対処にライリー・ジーグボルトは少し窶れていた。
そして、影之腰刀の報告。
新たな問題が起こらないで欲しいという現実逃避が言葉に遂、漏れる。
それは、影之腰刀を本当に信頼している証でもあるのを影之腰刀の一員である男は気づき、表情には出さないが喜ばしく思う。
「いえ、支配の雷と魔人の両方を対処したものを発見致しました」
「ほう!」
ライリー・ジーグボルト、今年入って1番の吉報であった。その影之腰刀の言葉はつまり、今までに起こった問題が全て解決したことを意味する。王としては情けない限りだが、その者らがいなければ、王国は滅んでいた。
「そうか。では、その者らに連絡を取り城に連れてこい」
「はっ」
影之腰刀は再び消える。
ライリー・ジーグボルトはまだまだ王としては未熟だと自分を省みるのだった。
―――
支配のノーフェイスを倒して数日が経った。Sクラスのみんなは誰1人怪我なく復帰した。
だが、この学校でも生徒は何十人も怪我をして、死人も少なくない数を出した。
魔人の軍が襲来したことを顧みればこれでも相当少ない被害だった。
だが、死人が出た以上そんなことは言っていられないだろう。
「おい!!Sクラス!俺の友達を…、何故助けなかった!?」
俺たちに向かって怒号が飛ぶ。あれは…、1年のBクラスだろうか。
「はぁ?あれは…」
「レオ、無視だ」
そして、Sクラスは非難の対象になっていた。誰だってSクラスのせいじゃないと分かっているが、人間は溜まった不満を何処かに向けて吐き出さないと理不尽な出来事に対応出来ない。
「愚かだな、寧ろ俺たち…、否全学年のSクラスがいなかったらもっと死人が出ていた」
「そうだね、だが言ったところで非難してる奴らは理解はしないだろうね」
エミリートの言う通りだな。今はただ、この現状に耐えるしかない。無駄な諍いを生んで更に溝が深まったらもっと取り返しのつかないことになる。
「さ、今日はノアに魔法を教えてもらうんだろ?行くぞ」
よし、気持ちを切り替えないとな。今は魔法のことを考えよう。俺が強くなるために。
そして、フェルの力になれるように。
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