第47話 歪みて堕ちた、支配の核 その陸
「エミリート!避けろ!」
「言われなくても、避けるよッ!」
レオに言われて、ギリギリのところで避ける。筋肉透視を使っていても、魔人の身体能力が高すぎて、思考が体に追いつかない。
さぁ、どうするか。
「エマとカルトは魔法を確実に撃って魔人の体力を削れ!オーウェンとエミリートは隙をみて攻撃だ!」
そうレオに言われ、魔人と交戦しながら、質問をレオに飛ばす。
「ねぇ!レオは何するの!まさか休憩とは言わないよね!」
「少し、時間をくれ!」
はぁ、全く。自分がいい所を持ってこうとする気だな。レオが準備する前に倒しちゃおうかな。
「おい、余計なことを考えてるなエミリート。魔人に集中しろ」
オーウェンからのお叱り。全くその通りだな。今はレオを信じよう。
―――
昔、兄貴に聞いたことがある。
最強の剣って何って。その頃は子供で、何が最強か分からないから。
だから俺は兄貴に聞いた。
その答えは、「自分の力の全てを使った剣は最強だぞ」だった。
俺の全ての力…か。
あれを試してみるか。
俺は得意では無い魔法を行使して、自身の剣に魔法を纏わせる。
纏わせるのは、炎と雷。
剣に付与する魔法の統合は半端じゃない難しさだ。だが、今の俺には出来る気がする。
いや、目の前にはあの魔人がいるのだ。今出来なきゃ、いつやるんだよ。
「相反する魔の理よ。我が命に従いて、顕現せよ。統合付与魔法:
剣に纏ったのは炎と雷。迸る2つの魔力はバリバリと音を立てている。
剣に負荷がかかってるか…。
そんなことは後で考えればいい。待ってろよ、魔人。てめぇの首を真っ二つにしてやる。
俺は炎雷大剣を片手に、魔人に飛び出す。
「オーウェン、エミリート!どけ!」
オーウェンとエミリートは、その言葉を理解して、魔人から離れる。
エマとカルトもその意味を理解して、魔法を撃つのをやめる。
「覚悟しろ魔人」
身体強化を行使して強化された腕に、力を込めて、一撃。
「
刹那に飛び出した炎と雷の斬撃は魔人の首を丁寧に狙い、跳ね飛ばした。
「流石、だね」
「全くだ」
その2人が、一瞬のうちに輝いた刹那の花火を見て、思わず見惚れる。
だが、驚くべき再生能力で魔人は首から再生を始めた。
しかし、認識さえ不可能な目にも止まらぬ早さの拳が魔人を貫いた。
―――
「フェル…、お前横取りかよ」
疲弊しきったレオがフェルに話しかける。怒ってはいなそうだが、少々呆れたような顔をしてフェルを見る。
「今の技は凄くかっこよかったが、魔人は再生するのでな。仕方なくグーパンで倒した」
「…完敗だな。流石はフェルだ」
「お、Sクラスの奴らは全員揃ったな」
確かに、そう久しぶりって訳でもないけど、この状況で仲間がいるってのはかなり安心出来る。
「しかし、聞いたか?街にも魔人が何体も出現したようだぞ?」
「何が起こってるのかな」
「わかんないけど、なにか異常が起きてるってことは分かる」
「うん、どうにかしないとね」
どうにかしないとと言っても、俺が知ってる中で今、現状魔人を倒せるのはフェルか、
俺のは使ったらぶっ倒れるデメリット付きだ。自ずとフェルにしか任せられないが…。
「我が一体ずつ倒して回るのは現実的じゃない。だが、我ぐらいしか倒せるものが居ないのもまた事実。仕方ないが、我が掃討してくる。お主らは怪我人を助けたり、パニックになってる奴らを安心させるように動け」
「あぁ、任せろ」
フェルは魔人の掃討、俺たちSクラスは国民を助けるために動き出した。
―――
「あァ、なんて愚かなのかフェンリル…」
嘆く支配のノーフェイス。
だが、その声色は喜びに満ち溢れていた。
「あの人間の子供と引き剥がすのが1番の難所だと思ってたのですが、自ら離れていくとは…」
支配のノーフェイスはその言葉と共にその全てを支配せんと動き出した。
支配の手はもう既に王国を持ち上げて握り締めていた。
―――
「ふむ、割と人間にも戦えるやつはおるんじゃな」
我は空中に足場を作って王国中を移動して、魔人を沈めて回る。
その道中に、割と魔人と渡り合っている人間がチラホラいるのに気が付いた。
パァンッ!
パンチが炸裂して、魔人は力なく地面にフラフラと落ちる。
ふっ、魔人とはなんと軟弱なことか。
魔人と交戦していた人間の恐怖の対象は次に、魔人をワンパンチで沈めたフェルに向く。
「お、お前は何者だ!!」
我はその人間を見て呆れる。
我は助けてやったのだぞ、と言いかけた言葉を飲み込む。今はそんなことをしている場合じゃないのだ。
「あ、まっ…」
人間が何か言っていたが、無視して次の魔人に向けて、空中を走り出す。
しかし、支配のノーフェイスはいくらの魔人を用意したのやら…。
これは、確実に王国を堕とそうと画策していたな。
フェルはそう確信する。フェルにとっての魔人は単なる魔物と同然だが、人間にとっては強大な敵だ。
パァンッ!
再び、拳が魔人を貫く。
一体何体を倒せばいいんだ…。
そう思った瞬間に、フェルはノアの魔力が感知出来なくなったことに気づく。
「な、にがおこった?」
どこを探してもノアの魔力が感知出来ない。何故だ?何が起こった?
何処ぞの人間の命より、ノアの命の方が何万倍も軽いと感じているフェルはまだ魔人が暴れている中、直ちに王立魔剣学校に空中を走って向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます