第43話 歪みて堕ちた、支配の核 その弐

 夜、俺は常に発動していた「探知する危険マリシャス・サーチ」に反応があった闘技場に向かった。

 すると闘技場で何やら魔法で拘束されてるノルザさんとその魔法を放ったであろう生徒がいた。


「おい、何やってんだ変態野郎」


「ノア様!?」


 ノルザさんは後ろを向いて驚きの顔をしている。生徒の方もこっちを見て驚く。


「お、お前だな!俺の計画を邪魔したのは…!」


 なるほど、表彰式の時に探知する危険マリシャス・サーチ引っかかったのはこいつか。


「邪魔したって…。お前が悪意を持ってたから事前に防いだまでだ」


「う、うるさい!お前は死んでもらうからな!!」


 すると、何やら闇魔法っぽいものが放たれる。俺は金剛石の要塞ダイヤモンド・フォートレスの簡易版を展開する。


「ノア様!それは拘束魔法です!!」


 ノルザさんが叫んだ。拘束魔法か、なら不味いな。

 俺は身体強化の魔法を行使して、サイドステップで避ける。


「なんで!?なんでノルザさんは僕の物だ!あんな奴にアドバイスなんてするな!」


 激情を声に出して、感情を露わにする生徒。なんだあいつ、ノルザさんの事が好きなのか?

 だが、拘束して無理やり愛を強制するのはダメなんじゃないか?


「取り敢えず眠っててくれ」


 俺はアクアバーストを放ち、それと同時に駆け出す。


「僕には魔法は効かない!」


 ダーグ戦の時に使ったテクニックを使う。

 アクアバーストは生徒に当たった後に弾かれる。だが俺を隠すカーテンとなり、後ろに回り込み、剣で攻撃する。


「ぐあぁぁ!!卑怯だぞぉ!」


「女性を拘束しておいてどっちが卑怯だよ」


 生徒は俺の放った木剣の一撃で気絶して、その場に倒れ込む。

 それと同時にノルザさんを拘束していた魔法も解除される。


「ありがとうございます、ノア様。助かりました。ところでなんでこの場所に?」


「いや、探知する危険マリシャス・サーチっていう害意を敏感に探知してくれる探知魔法を強化した魔法が何か察知したんで、ここに来たんですよ。そしたらノルザさんが捕まってました」


「なるほど…。しかし、ヒューゴ君は何故こんなことを…」


 うーん、確かに。いくらノルザさんのことを好いているとはいえ、こんなことをしたら嫌われるのは必定。

 つまり、考えられるのは…。

 誰かに操られているとか?


「分かりませんけど、敬称をつけてますよノルザさん」


 そう言うとノルザさんは忘れてました…と言った。バレたらやばいんだから、ノルザさんがちゃんとしてくれないと…。


「じゃあ、帰り…!?」


 後ろからとてつもない殺気が飛んでくる。

 まさか…、ヒューゴという生徒が起き上がったか!?

 そう思い、後ろを振り向くと明らかに先程とは雰囲気が違うヒューゴがいた。


「ぐぁぁぁ!!」


 発狂じみた叫びを上げたヒューゴは突然心臓を抑え、苦しみ始めた。


「ヒューゴくん!?」


「拘束魔法!」


 俺は拘束魔法を放ち、ヒューゴの動きを止めようとするが、ヒューゴは拘束魔法を弾く。


「ノルザさん!離れて!」


 俺はそう言って後ろに下がり、その後にノルザさんも後ろに退避する。


 ヒューゴの体がボコボコと膨れ上がり、体が変形していく。体が変形していき、体の色が変色して黒色に変わっていく。腕は蟹のように変形していき、盾のように分厚くなり、体は蜘蛛のように変形していく。

 背中のやどは巨大な人間のドクロのような模様になっている。

 全長20メートルくらいにもなる巨大な蜘蛛のような、蟹のような生物に変わってしまった。


「なんだあれ…」


「ノア様!来ます!」


 倒すしかないか…!!


 ―――


「やっと、スレイブドクロックになったか」


「あぁ、やっとだな」


 魔人たちは中央の水晶を眺め、呟く。


「あの魔界の生物を倒せるか見ものだな。倒されたら我々魔人が直々に、あの者らを殺しに行かないと行けないな」


「スレイブドクロックはそんなやわな魔物ではない、大丈夫だろう」


「ふ、そうだな」


 2体の魔人は水晶を見て、まるで娯楽かのように観察する。人の死は彼らにとっては愉悦なのだ。


 ―――


 あの蜘蛛蟹野郎は意外と素早いのに、外皮が硬すぎて魔法も剣も通らない厄介すぎる魔物だ。


「あッ!ぶねぇ!」


 腕の攻撃をギリギリ避けて、体勢を立て直す。しかし、攻撃手段がないと倒しようがない。どうすればいい?考えろ俺、敵を観察しろ。

 あいつは魔法を受ける時に腕に付いている盾で顔をガードする。剣もまた同様に盾で受け流している。

 つまり、顔が弱点なのか?

 だが、そうだとしても俊敏すぎてそんな隙は生まれないぞ…。


 いや…、その考え方が間違ってるな。隙が無いなら隙を作ればいい。


「ノルザさん!今出来る最大の火力をお願いします!」


「分かりました!」


 俺はノルザさんに指示をして、魔法の準備をする。


「8連ウィンドバースト」


「3連アクアバースト」


 蜘蛛蟹は魔法を受け流さんと、腕の盾でガードをする。

 俺はウィンドバーストとアクアバーストと一緒に駆け出し、短剣に炎を纏わせる。


 ズゴンッ!と計11発の上級魔法が魔物の腕の盾に炸裂する。


 今だ!!


 俺は蜘蛛蟹の側面に回り込み、腕の盾の内側に潜り込む。

 そして、放つのは俺の得意な水魔法!


「6連アクアバースト!」


 5連から1個増えて6連だ!

 現在俺が放てる最高威力の魔法だ!

 超近距離から6連アクアバーストが炸裂する。その衝撃で俺は後ろに飛ばされる。


「グガガアァァァア!!!」


 蜘蛛蟹は発狂じみた叫びを上げると、動かなくなる。倒した…のか!


「やりましたね!ノア様!」


 俺は喜ぶノルザさんとハイタッチして、蜘蛛蟹を空間収納に押し込んだ。









 ―――――――――

 蜘蛛蟹こと、スレイブドクロックは「クラブ」「スパイダー」「ドクロ」「ロック」を混ぜたような魔物です。


※スライブドクロッグからスレイブドクロッグに名前を変更しました



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