第28話 魔人 前編
「ふぅ、ここが屍毒の沼地か」
屍毒の沼地、その名の通り屍から出る毒で毒沼が形成され、汚染された平原の名称だ。
ここには、毒を多用する魔物が多く生息しており、解毒薬や解毒魔法、そもそも魔物と遭遇しないなどといった対処法をしないと入ることすらままならない、そんな土地だ。
だが、そんな沼地だろうが、俺の魔法の前では無意味である。
「
俺から半径約10メートルの範囲を常に浄化するこの魔法は、状態異常の回復をする魔法:キュアオールの魔法を、派生させ強化させた魔法だ。
この神秘の重盾の範囲内にいれば、毒を食らったとしても瞬間的に回復する。
「相変わらずノアの魔法はなんでもありですね」
遂に敬称無しでも違和感が無くなったノルザさんがそう言う。
言うほどか?こんなの魔法を覚えてる人なら誰でも思い付くだろうに。
「なんでもいいから、先行こうぜ。魔人が移動してたら厄介だ」
「あぁ、そうだな」
こうして俺たちは、屍毒の沼地へと足を踏み入れた。
「ノア、もうすぐ俺が魔人を見た場所に着く。いるか分からないが、警戒はしろ」
小声で伝えてくるダーグ。
ここら辺か…。大きい魔力は特には感じないが、移動をしたのか?
「魔力が見当たらない。ノルザさん、この周辺に街とかは?」
「そうですね…、ここを真っ直ぐ行ったら確か小さい町があった覚えがあります」
だとしたら、その魔人はその町に向かったか。
一足遅かったか、急ごう。
俺たちは駆け足で、町に向かうことにした。
屍毒の沼地を抜けて30分程進んだところに街を発見した。
「チッ!襲われてる最中だったか!!」
町に着くと、魔人が暴れていると人目でわかった。
ダーグは熱くなって周りが見えていなく、1人で魔人に突っ込んだ。
「
魔人は魔法で短剣を作り出し、ダーグの剣と相殺する。
ダーグのあの攻撃を初見で防ぐか…。
不味いな、魔人の注意がダーグに向く。
「ノルザさん!町の人の手当をして、避難させてください!」
「はい!わかりました!」
よし、町の人達は取り敢えず大丈夫だろう。
俺は自信に身体強化の魔法を行使して、跳躍する。
その際に、短剣を取り出し炎を纏わせる。
突進するスピードを利用して、一気に畳み掛ける!
「おらぁ!!」
短剣が、魔人の首にヒットする。
だが、首は斬れることなく短剣が俺の手元から弾かれる。
くそ、短剣を拾ってる時間はないか。
そう思考し、咄嗟に後ろ方向に跳躍する。
その瞬間、俺がいたところには黒色の炎が燃え上がった。
「ふぅ、危ねぇ。あれはヤバそうだ」
「ノア、どうする?剣撃は通らなそうだが」
「ふむ」
俺は徐に準備しておいたアクアバーストを魔人に放つ。
魔人は手を翳したと思ったら、払い除けるような動作をした。
その動作とともに、アクアバーストは霧散した。
なるほど、魔法を構成する魔素を弄ってただの水にしているのか。
つまり魔法は相手が魔素を弄れる状況だったら魔法は効果は無いということか。
なら、魔素を弄る時間なくアクアバーストを撃ち続けたらどうだろうか。
やってみるか。
「5連アクアバースト」
魔力の消費はちょっとヤバいが、試してみる価値はある。
魔人は1つ目に飛来したアクアバーストは魔素の弄りで霧散させる。
その次のアクアバーストも同じように霧散。
その次のアクアバーストは腕を盾にして防ぎ、4つ目のアクアバーストは避け、5つ目は追尾するとは思わなかったのか、魔人に直接当たる。
ふむ、数発程度なら魔素の弄りで対処出来るが、それ以降は厳しく、腕っ節で何とか乗りきった。
だが、僥倖なことに最後の1発は当たった。
さて、どれくらい効いているのか…。
「グカァァァァァア!」
怒ったか?
どれどれ?お、ちゃんと腕は壊れているな。
なら、魔法での数攻めが魔人には有効か。
「はは、種が割れればこっちのもんだ。ダーグ、奴には魔法が効く。数発程度なら消されるが、対処が間に合わなかったらあいつもちゃんと当たってくれる」
「わかった。魔法は苦手だが、やってやる」
「よしいくぞ!」
ドガン!と魔人が俺たちのいた場所に突っ込んで来て、家が崩壊する。
魔人だから魔法を使うのかと思ったけど、脳筋タイプかよ!
「5連
よっしゃ!俺の得意魔法3点セットだ!
喰らえ魔人!
「纏うは闇、
お!あれは闇魔法だな。
闇魔法を刀身に纏わせて使うのか。
俺の炎を纏わせた短剣と同じようなものか。
計15発の強力な魔法が魔人に殺到する。
魔人は全てを対処しきれなくなり、逃げようとするが追尾水銃がそれを許さない。
逃げるところを追撃する。
そして、俺の魔法が全て魔人に当たった頃合で、ダーグが動き出す。
身体強化の魔法を行使して、ダーグは突っ込み、首を狙う。
「おらぁぁぁ!!!!斬れろぉぉぉ!!」
ブチッ!
ダーグが通り抜ける。
魔人の首から上は無くなり、青い血が溢れはじめる。
首が真上に飛んで宙を舞う。
だが、その瞬間首が無く周りが見えていないはずの魔人が自分の首をキャッチして、無理やり首にねじ込む。
おい、嘘だろ。
そこには、無造作に首が繋がった魔人がいた。
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