第26話 王国にて

 野営1日目、見張り番だったダーグが寝てしまい、魔物に襲われる。

 ノルザさんに相当キツく怒られて、しょげていた。


 野営2日目、ダーグは見張り番をしなくてもいいと言われ、直ぐに眠りについた。

 おのれ、ダーグ。俺の横ですやすやと眠りやがって。


 野営5日目、ダーグと剣の打ち合いをした。

 ダーグの剣の腕は確かなようで、俺はボコボコにされた。

 やはり、エリーゼの森で少し剣をサボった事が悔やまれる。ちゃんとやっておけば良かった。


 野営8日目、フェルとダーグが喧嘩していた。

 原因は、お菓子の取り合いだったようだ。

 数千年生きるフェルもフェルだが、ダーグも大概だな。

 喧嘩の最中に、俺がそのお菓子をこっそり食べて、後でフェルとダーグにボコられた。


 野営12日目、みんな憔悴仕切っている。水魔法で体を洗えるし、空間収納からは贅沢な食事が出てくるが、約2週間も野営をしていると、流石に精神の方の疲労が溜まってくる。

 だが、ノルザさんの「明日には着くと思いますよ」の一言で俺含めみんな笑顔になった。


 そして、13日目の昼。俺たちはやっと王国に着いたのだった。


「着いたー!」


 門を通り抜け、眼前に広がるのは、西洋風の綺麗な街並みと、行き交う活気に溢れた人!

 人の交通量が多いということは、つまり美味しいご飯があるに違いない!

 相変わらずノルザさんのお腹の虫は煩いが、まずは美味しいお店を見つけるところからだ!




「ほう、「トンとこい!」か。いい名前をしている店だ」


 そう言って、俺は店の中に入る。

 俺が来ているのは、豚ズラの専門店である「豚とこい!」だ。

 みんなはと言うと、各自別々の食べ物屋さんを探しに行った。

 俺が豚ズラを食べたいと言ったら、フェルがスイーツを食べたいと言い、ノルザさんはヘルシー料理を希望し、ダーグは食えるだけ食いたい、と見事にみんなの意見がバラバラになり、別々の店にすることに決まった。

 しかし、俺はどうやら「豚ズラ」にハマったらしい。だって、日本にいた頃の豚にそっくりな味わいと食感なのだ。

 前は、豚ズラのスープと豚ズラの焼肉を食べたんだったな。

 さて、ここにはどんな豚ズラ料理があるのやら!

 ふむふむ、これは回鍋肉か?こっちは、角煮だ。これが、生姜焼きで、こっちは…。


「トンカツ!!」


 俺はガタッ!と思わず立ち上がる。

 この世界にトンカツを作ってくれた人物にぜひ、挨拶をしたい。


「あの…、お客様。もう少し静かにお願いします」


「あ…、すみません」


 俺は顔を赤くして、トンカツを頼んだ。


 ―――


 ノルザは、食事を済ませると王立魔剣学校に戻っていた。

 予め、ノア様に宿屋の場所を教え、そこにみんなと行くように指示を出した。

 だから、夜には戻ろうとノルザは思案するが、そうも行かないのが、学校長と言うものだ。

 副学校長に諸々の仕事を頼み、学校を出て日数にして1ヶ月ほど。

 そんな中で、副学校長とはいえ、自分の仕事と私の仕事を両立出来るはずもなく、私の元に来た、1ヶ月分の仕事としては少ない、大量の紙を前に早速仕事に取り掛かる。


 基本的には、それはどうでもいいだろ。となってしまう様な事への許可や、誰が何日に休むなどの書類を素早く印を押して行く。


 そんな、ノルザを見つめる影1つ。

 その影は、ノルザが仕事を終わらせるまでノルザを見つめていた。


 ―――


 昨日は、いいお店が発見できて良かった。

 さて、今日からは勉強の日々が待っている。ノルザさんは「エリーゼ様に魔法を教えて貰っていたノア様なら…」と言うが、それで調子乗っていて、落ちたら元も子もない。


 俺は、勉強するんだ!


「ノアー、我と遊ぶぞー」


 くっ…!第一の刺客がやってきたか…。

 こいつは、遊んでやらないと一生付きまとってくる。

 仕方ない、一瞬だけ構って、どっかに行ってもらおう。


「スピードで勝負じゃ!」


 スピードだと?ふん、俺に勝とうと練習してきたか。だが甘い!俺は友達とスピードをして負けたことがない!


「我の勝ちぃ!」


「なにぃ!?」


 くそ…。こうなりゃ、勝つまでやってやる。




「やっと勝った…!」


 151敗1勝で、遂に俺が勝った。

 気がつくと、周りの空はオレンジ色になり、太陽が沈む寸前だった。


「思考加速を使っている我に勝つとは、なかなかやるの」


 え?思考加速?


「まさか、先生…。ズルをしていたのか…?」


「ず、ズルではないぞ!消してノアに勝てないからと言って思考加速を…」


「それをズルって言うんだよ!」


 俺はフェルの食べかけのお菓子を全部口に放り込んだ。

 一日中スピードをやらされたのだ、これぐらい貰っても許されていいはずだ。







 ―――――――――

ノアはフェルに割と重いパンチを貰いました。

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