第25話 ギルドマスター

「す、すまない。つい興奮してしまった。俺の名前はガイド、このリーフグリードの街でギルドマスターをしている」


 冒険者風のイカつい格好とは裏腹に、丁寧な挨拶をするギルドマスターと名乗ったガイドさん。


「よろしくお願いします、ガイドさん」


「あぁ。あと俺に敬称と敬語は不要だ。それと、俺の見間違いじゃなければその縛られてる奴はドワルト・ティーチーじゃないか?」


「あぁ、そいつは俺が各地を転々としてる時に拾った老人だ」


 そう説明するのは、ダーグだ。


「あの時の俺は兎に角、人手が欲しかった。だからそいつを使ったが、裏であんな機械を作っていたとは思わなかったな」


「ふむ…、やはりあの機械はドワルト・ティーチーが作った物か。君たちが戦ってくれたのだろう?感謝する」


「ふは、それほどでもない」


 そういうフェルは満更でも無さそうだ。

 俺は話題が本題から逸れていたので戻す。


「それで、ドワルト・ティーチーを捕まえたので、差し出しに来ました」


「あぁ、感謝する。確実に王国に送り届けよう」


 そういうと、ガイドは周りの職員に指示を出して、準備し始める。


「さて、君達には街を救ってくれた件とドワルト・ティーチーを捕らえた件で、冒険者のランクをあげようと思うのだが、どうだろうか?そうしたら鎌鼬のノルザさんもSに近づくでしょう?」


 ん?鎌鼬のノルザさん?


「ふっ、もうその名前は捨てたのよ。今は王立魔剣学校の校長よ」


「ほう、最近見ない思ったら学校長になっていたとは…。人生何があるかわからないな」


「そちらこそ、今はもうギルドマスターじゃない?」


 2人は知り合いなのか。いつも敬語だったノルザさんはガイドにタメで話している。


「鎌鼬?」


「はい、冒険者のころ風魔法ばっかり使ってたからか、鎌鼬っていう名前が付いていました」


 かっこいい通り名だなぁ。

 俺もそういうの着く時が来るのだろうか。


「あ、階級の話だったな。どれくらいまで上がるんだ?」


 そう言うとガイドに問うと、申し訳なさそうに話し始める。


「多分君たちが行ったことは、Aになってもおかしくない功績なんだが…、いちギルドマスターの俺は階級を上げる権限をCまでしか持っていない。直接王国のギルドに掛け合えばAに上げられると思うがその手続きもこっちでやっていいか?」


 なるほど。

 だけど、俺的にはそんなに急いで階級を上げる必要は無いと思っている。

 全て飛ばして、実質的な冒険者の最高階級に行ってしまったら、周りからの批判もあるだろうし、何より面白くない。


「いえ、取り敢えずはCに上げてください。そして、ドワルト・ティーチーさんを捕らえた人物が俺たちであることを言わないで欲しい」


「うぅむ…、そう望むのならそうするが…」


 まぁ、ガイドからすれば困惑するだろうな。

 だが、俺にはまず学校での生活があるからな。


「わかった。では君達の階級をCに上げるぞ」


 こうして、俺たちの冒険者階級はCになったのだ。


 ―――


「では、王国に向けて出発しましょうか」


 そのノルザさんの言葉にみんな頷く。

 リーフグリードを出て、王国方面にひた歩く。

 10〜15日間は完全に野営をすることになるから、リーフグリードで大量の食料を買っていく。

 俺の空間収納は時間は流れておらず、物を入れた瞬間から時間が停止しているので、生だろうが腐らず楽して運べるのだ。


「しかし、ノア様の空間収納はとても便利ですね。どんなに重いものでも運べて、時間も止まって食料も運べるから、ノア様がいなければ相当大変な旅になったでしょうね」


 そうノルザさんは笑う。

 俺も本当にそう思う。だってこの空間収納便利すぎるし、魔力量によって運べる量が決まるらしいが、俺はどんだけ入れても底が見えないから魔力量が人より多くて本当に助かっている。


「ところで、ダーグもCになったんだな」


 ガイドによって、俺とフェルは一気にCまで行き、ダーグに至ってはカード作成した時からCだった。


「俺はノアと一緒に行動すると決めたからな。で、王国に行ったら何をするんだ?」


 あ、そういえばダーグには言ってなかったか。俺とフェルは王立魔剣学校に通うし、どうしようか。


「そういえば、ダーグは何歳なの?」


「俺か?俺は21だ。まだまだ若いぞ」


「そうか。ノルザさん、王立魔剣学校って年齢制限とかあったりします?」


「残念ながら、あります。基本的には15歳からの5年間で卒業なのですが、20歳以下なら編入も何とか出来たのですが、20歳を超えた方を入れてしまうと他の人達も来てしまうので…」


 なるほど、そりゃあそうだ。

 知り合いだからといって、ダーグを編入させたら、他の通いたくても通えなくて歳を取ってしまった人達の対処もしないと行けなくなる。


「そうか、ノアは学校か。だとしたら俺は何をしたらいいか…」


 ふむ、休日や夜は俺たちと一緒に行動出来るが日中や平日だとそれも厳しいだろう。


 そうだ。


「まずは、冒険者としてAになってみるのはどうだ?」


 そう提案すると、ダーグは思考する。

 まぁ、ダーグの日中の過ごし方などの参考になればそれでいい。


「いいな、A目指すの。A目指しながら人を救いながら、気長に冒険者をやってみようか」


 …ノラさん、ダーグはちゃんと元の形に戻ったようですよ。


 俺達は雑談しながら、王国を目指すのだった。

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