第219話

色々なモヤモヤを抱えたまま、季節は初夏から本格的な夏を迎えた。


トロピカルエースの活動も活発化し、夏のイベントや歌謡フェス、学園祭の打診も増えていく。


そんな中で陽菜は以前から話のあった夏の特別番組で放送する単発ドラマの撮影で神奈川県の由比ヶ浜に来ていた。


スタジオ等屋内ばかりで仕事をしていたから気付かなかったが、外はもう夏の空気に変わっていた。


メイクさんに日焼け止めを塗ってもらいながら、陽菜は台本をチェックしていた。



「あれ、「宗馬」役の飯島颯斗って降板したんですか?」



新しく配られた台本を見て、陽菜は後の内藤へ確認する。



「それだいぶ前に言ったよ。飯島颯斗がバイク事故で足を複雑骨折して全治3ヶ月だって」


「うわぁ、痛そう。それってプライベートですか?」


「仕事の帰りだったみたいだよ。怖いよねぇ。流石にバイクは乗らないだろうけど、陽菜も事故には気をつけるんだよ」



「はぁい。……で、代役は…と、……え?えええぇえええー、あり得ないんですけど!」



台本の配役を見た陽菜が奇声を上げる。



「今度はどうしたの?」



内藤は半分呆れた顔で陽菜の手元を覗き込む。



「新しい「宗馬」役、支倉翔なんですけど!」



「それも前言ったんだけどなぁ。陽菜、全然僕の話聞いてないよね。良かったじゃないか。支倉翔ならトップアイドルで人気もあるし顔もいい。良い話題になるよ。そういえば今回のドラマはキスシーンもあるよね」



「へ?嘘でしょ」



「何で僕がこれだけ台本読み込んで今日に備えてたのに、肝心の陽菜が全然見てないんだよ。大丈夫?」



「だってだって、もう映画のクランクアップのイベントとかレッスンとかで頭一杯だったんだもん」



陽菜は頭を抱えて蹲る。



「ああぁあぁっ、それよりキスシーンだよ。そんなの無理過ぎる」



「キスシーンなら今まで何度もあったじゃないか。何を今更嫌がってるの?」



「そうじゃなくて!違うの!全然っ。あぁあー、もう神様、お家帰りたいっ、お腹痛いっ、胃が痛いっ!」



「陽菜…、ちょっと落ち着こうか」



陽菜は時計を見た。

そろそろ撮影が始まる。


この数時間後に支倉翔とのキスシーンが撮影

されると考えると陽菜は余計憂鬱になるのだった。













218話に入れたかったのをここに219話として入れておきますが、短っ!


スミマセン。

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