第152話
「本当に円堂社長が道明寺さんのパパンなの?年、そんなに変わらなさそうなんですけど」
みなみは胡乱げな目で限竜へ視線を向ける。
限竜の方はやれやれとでも言いたげな顔で肩を竦めた。
「失礼ね。これでもまだ20代だって言ったでしょ。まぁ、あたしが生まれた時は向こうも高校生くらいだったんじゃないの?」
「うわ、不良だ」
「ふふふ。当時24歳のOLが高校生に迫り関係を持つ。中々萌えるシチュよね」
「わぁぁ、何ですかそれ。どうやって二人は出会ったんです?それにやっぱり円堂社長の事、お父さんって呼んでるんですか?」
知らず、みなみも前のめりになっていた。
こういう話は大好物なので、興味津々である。
「さぁね。何か母親からそんな話聞きたくなかったから詳しくは聞いてないわよ。だって生々しい話になったら厭じゃない。ちなみにあの人を「お父さん」なんて言うわけないわ。止してよね。大体それを知ったのはハタチいってからだったから、今更肉親って実感、全然ないわよ」
「へぇ。何か複雑そうですね」
限竜は何てことないように緩く伸びをした。
「そうね。あたしもそれ聞くまではごく普通の家庭環境だと思ってたわ。それが足元から崩れたわけだからね」
「もしかしてグレちゃったりしたんですか?あ、それでオネエに転身したとか?」
すると限竜は笑った。
「あはははっ。あんた面白い事言うわね。言ったでしょ。聞いたのはハタチいってからだって。そんな年でグレたりするもんですか。確かにショックだったし、何でずっと秘密にしておいてくれなかったのかとか思ったかもしれないけど、それに反抗する熱量はなかったわね。それからね、この口調はね、ある事情があって、あんたみたいな男嫌いの子の面倒見る為に好都合だったからなの」
「男嫌い」という単語にみなみは身体を固くする。
「へ…へぇ、何で私みたいってわかるの?」
限竜はまるでお見通しとでも言いたげに笑みを浮かべた。
「わかるわよ〜。あんたあたしみたいなガタイのいい男が側に寄ると、ガチガチになるでしょ。あたしが面倒見てる子もね、あんたと似た反応するから」
「ぐっ……」
みなみは悔しそうに唇を噛んだ。
彼氏が出来て異性への緊張はかなり改善されたと思っていたのだが、やはりわかる者にはわかるようだ。
「…それよりもいいんですか、そんな秘密喋って。確か道明寺さんのプロフィールって公表されてないですよね?」
「ふふふ。まぁね。今回はトクベツよ♡だから口外しないでちょうだい」
「……言っちゃおうかなぁ」
みなみは楽しそうに限竜を見た。
だが限竜は余裕の表情だ。
「な…何ですか、そのニヤニヤは」
「ううん。何も。ただ、あんたとはもうちょっと早く出会ってたらなーって思っただけ」
「?」
限竜の意味深な言葉に困惑するみなみを楽しむように彼は肩を震わせる。
「さて。そろそろあたしは行くわよ。この後も打ち合わせがあるのよ。いやだわ。夜更かしはお肌の敵なのに」
そう言って限竜はあっさり部屋を出て行った。
一人残されたみなみは首を傾げる。
「道明寺さんが面倒見てる子って誰なんだろう……」
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