第3話 流しっこ

「坊っちゃま、そろそろお風呂に入りましょうか」


「は、はいっ」


 夕食後、後片付けを済ませた撫子がそう言うと智也は顔を赤くしながら上擦った声で返事をした。

 ふたりは毎日一緒に入浴している。撫子が下心全開なのは言うまでもないが、それは智也も同じだった。

 思春期の男子である彼が、とびきりの美人でスタイルも抜群(特に胸)な女性と一緒に風呂に入れることに魅力を感じないわけがなく、「断った方がいいのでは?」と思いつつも欲望に負けるというのがお決まりになっている。

 脱衣所に入ると、撫子はなんの躊躇いもなくメイド服を脱ぎ始める。それも、自分の体が智也にしっかり見えるように。その思惑は見事に成功しており、智也は撫子が動くたびに大きく弾む胸や扇情的に揺れるお尻をチラチラと見ていた。

 逆に智也は極力体を隠し、恥ずかしそうに着替えるのだが、肝心な部分は隠しきれない。


(坊っちゃま、また成長なされたのですね……)


 主人の身体の成長を喜ぶ撫子。とは言っても、大きくなったのは身長ではない。成人男性のそれすらも軽く凌駕する、20センチ級の男の象徴である。互いの非常に大きな部分を見ながらすっぽんぽんになったふたりは、大浴場へ足を踏み入れた。

 冴島家の屋敷は非常に広い。となれば、風呂もとんでもなく広い。面積は一般的なスーパー銭湯の3倍ほどで、ふたりで入るには明らかに広すぎる。


「お背中お流ししますね」


「よ、よろしくお願いします」


 そして、撫子が智也の背中を洗うのも毎度のことである。スポンジを泡立て、ゆっくりと小さな背中を擦り始める。


「坊っちゃまのお背中、相変わらず綺麗ですね。思わず嫉妬してしまいそうです」


「そうかなぁ……?」


「そうですとも」


 ある程度洗い終えると、シャワーで泡を流していく。そして次は、智也が撫子の背中を流す番だ。


「えっと、じゃあ……失礼します」


「ふふっ。よろしくお願いしますね」


 智也が撫子の背中をスポンジでゴシゴシと擦る。小さな体を懸命に動かすその姿を見た女性は、あまりの可愛さにノックアウトされてしまうだろう。

 しかし、本番はここからだった。


「んっ……はあっ……」


 智也がスポンジで擦るたびに、彼の口から艶めかしい吐息が漏れる。当然ながら本人にまったく他意はない。


(平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心)


 しかし、撫子にとっては理性を崩壊させようとする魔物だった。今でこそ堪えられるようになったものの、最初の頃は盛大に鼻血を出すという失態を晒してしまっていたのだ。


「ど、どう……? 気持ちいい、かな……?」


「はい、とっても(エロいエロいエロいエロいエロいエロいエロいエロいエロいエロい)」


「えへへ、良かった……」


(やっべ少し鼻血出た)


 どうやら、完全には耐えきれなかったようである。しかし、理性の崩壊を抑えているのは撫子だけではなかった。


(撫子さんのおっぱい、ほんとにおっきいなあ……。背中越しでも見えちゃうなんて……)


 撫子の大きすぎる胸は、背中を向けていてもその丸みを帯びた横乳が脇から飛び出している。そのせいで、背後からでも彼女のおっぱいがどうしても見えてしまうのだ。

 最上級の大きさと美しさを誇る球体に目を奪われた智也は、いつの間にか手を止めてしまっていた。


「坊っちゃま? いかがなさいましたか?」


「あっ、ごめんごめん! そろそろ流すね」


(もう......。触りたいのなら好きに触っていただいて構いませんのに)


 智也が撫子のおっぱいに釘付けになっていたことはバレバレだったようだ。

 その後、全身を洗ったふたりは湯船に浸かる。


「坊っちゃま。隣もよろしいですが、撫子の膝を使っていただけると嬉しいです」


「う、うんっ」


 一緒に風呂に入る時は、こうして撫子が膝の上に座るのを促すのがお決まりになっている。

 智也自身も撫子の膝の上に座るのは好きだが、自分からは言い出せない。そんな恥ずかしがり屋なところも、撫子は愛おしく思っていた。

 背後からそっと智也を抱きしめると、彼の背中に胸を押し当てる。背中でおっぱいが潰れる感触に、色々な意味で固くなってしまう智也であった。


「坊っちゃまの体、とっても柔らかいです」


「そ、そう......?」


「はい。ですが......私のおっぱいも、柔らかさでは負けてませんよね?」


 ボフンッと音が出そうな勢いで顔を真っ赤にする智也。それが入浴によるものか、撫子の妖艶な囁きによるものかは本人のみぞ知る。 

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