第4話 変態の部屋

 夕食までに行う仕事を全て終わらせた撫子は、自室でパソコンと向かい合っていた。

 彼女の部屋の壁と天井にはびっしりと智也の写真が貼られている。この部屋を見れば、誰もが「ストーカーじゃねえか」とドン引きするだろう。

 そんなヤバすぎる部屋に入ってしまったことがある智也は、自分の写真が所狭しと貼られている光景を見たわけである。当然ながら戸惑う智也であったが、撫子が「坊っちゃまとの思い出をいつでも見られるようにしたのです」と言うとあっさり納得してしまった。

 さて、そんな異様な部屋で彼女が何をしているかと言うと、智也の隠し撮り写真の仕分けだ。

 笑顔、驚き、涙目、R18などのカテゴリに分けられたフォルダに写真を素早く振り分けていく。

 真剣な眼差しで作業する撫子の鼻にはティッシュが詰め込まれていた。ゴミ箱には鼻血で真っ赤に染まったティッシュがいくつか捨てられており、この作業がある意味で過酷なことを物語っている。


(笑顔、エロ、困惑、エロ、エロ、涙目だがエロいのでエロ……むっ、これは抱き枕カバーに使えそうだな。後で作るか)


 このように、写真によっては智也グッズの素材として使われることもある。

 撫子が現在使用しているマウスパッドも、智也がお尻を向けている写真を素材にした「坊っちゃまのお尻マウスパッド」である。見た目だけでなく、触り心地も智也の尻に極限まで近づけた渾身の一作だ。

 そんな写真どうやって撮ったんだという突っ込みは今更である。

 そうして作業に没頭していると、気づけば夕方になっていた。


「んっ……ふう。そろそろ坊っちゃまがお帰りになる時間だな」


 グッと背伸びをすると、胸元のボタンがギチギチと悲鳴をあげている。

 メイド服の前立てを必死に繋ぎ止めるべく奮闘しているが、撫子の110センチ超えの爆乳はそんな抵抗などものともしなかった。

 バツン!という音と共に限界を迎えたボタンが弾け飛ぶ。幸いにもエプロンによってガードされ、どこかに飛んでいくことはなかった。


「やれやれ、またか……」


 何度目かのボタン飛ばしに辟易とする撫子。

 過去に何度かメイド服を自分の胸の大きさに合わせて自作したが、撫子の爆乳は未だに成長し続けているらしく何度もボタンを弾けさせた。

 今はもう諦め、ボタンが飛ぶたびにササッと直している。

 しかし、胸が大きくなること自体には否定的ではない。

 智也は巨乳好きのため、胸が大きくなればなるほど彼が喜んでくれると思っているからだ。


(坊っちゃまがお帰りになる前に直しておくか)


 小さく溜息をつきながら裁縫セットを取り出す撫子であった。

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