第39話 父親似

「アレクシス、あなた気付いてなかったの? どれだけオリバーの血を引いているのよ!」


「ソフィー、それはここで暴露しなくてもいい話じゃないかな?」


「えっ? そうね。

どうしましょう、オリバー私嬉しすぎて泣いちゃいそう」



 何も言わず呆然と立ち尽くしたままのアレクシスにジョシュアが、

「パパ」



「俺、避けられてた。部屋に入るなとか」


「つっ悪阻でちょっと体調がすぐれない時があったり」


「心配したんだ。絶対なんかやらかしたんだと思って」


「やらかしたんだよな」


 イライジャが笑いながらツッコミを入れた。


「そっそうだな、うん。そうだ、こういう時はどうしたらいい? 何をしたらいいんだ?」



「まずアレクシスが一番にしなきゃいけないのは落ち着くことね」



「落ち着いてるとも! 当然だろ」


 そう言ってアメリアに抱きついた。




 全員で乾杯した後アレクシスが、

「そうだ、刺繍は禁止だ! 今日から絶対やっちゃ駄目だ」


「アレクシス後で話しましょう、今話すことじゃないわ」


「いや、禁止だ」


 何度も言い募るアレクシスに、

「・・やるわよ、絶対に」


「体に悪すぎる、家の中から道具を全部片付けさせるからな」


「そんな勝手なこと許さないから」



「ランドルフ子爵への援助なら俺がやるって言ってるだろう!」


「だからあなたに話さなかったのよ! 何度も言うけど、ランドルフの事は私の問題よ」



「アメリアの家族なら俺の家族だ。俺が手を出してもいいじゃないか!」


「実家を援助してもらうために結婚したみたいに思われるのは嫌だって、何度言ったらわかるの」


「誰にもそんな事言わせるもんか!」


「私が嫌なの! ここに初めてきた時には、私はお金目当てで来たの。

だから二度とスコット公爵家のお金を利用したくないの」



「お前達、そんな事で揉めていたのか。その様子だと負債について最近ヘンリーと話をした事はないようだね」


「アメリア、あなたのノルマンディーレースがどれほどの値段がついてるか知ってる?」


「いえ、ありがたい事に高額でお取引頂いてるとしか」



「結婚式で来て頂いた時、色々話をしたの。今はもう大丈夫だって仰ってたわ。

あなたから届いた刺繍の売り上げはあなたの将来の為に貯蓄してるって」


「帰る前にアメリアには念を押しておくって仰ってたが聞いてないのかい?」



「お父様がありがとうって。でも私が結婚してしまったから遠慮してらっしゃるんだと思って」



「今度もう一度しっかり話し合うと良い。二人の喧嘩の原因になってると知ったら悲しまれるだろうね」



「アレクシス、妊娠初期はとてもデリケートな時期なのよ。そんな時に大声を出すなんて」


「ごめん、アメリア。体調は大丈夫か?」


「私も大声を出してごめんなさい。それにあの、黙ってたし」



 カサンドラが雰囲気を変えようと気を遣って、

「でも一番最初に気付いたのがジョシュアだったとは吃驚だわ。

ジョシュアが気付いたって、ロージーは直ぐに分かったのね」



「はい、少なくともアレクシス様よりゃジョシュア様の方が観察力に優れとると思うとったです。

イライジャ様はまだ妊娠の仕組みもよう分かっとられん気がしますし」




「「ロージー!」」


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婚約者候補の筈と言われても只の家庭教師ですから との @tono_k

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