第38話 想像通り鋭いジョシュア

 ドアが開き食堂の中の人達が一斉にアメリアを見つめた。


 今日のアメリアは、母が送ってきた新しいドレスを身につけている。


「遅くなりました」


 入り口で挨拶をしてテーブルまで歩いて行くアメリアは、髪を緩くロールアップに結い上げ大きめのバックルで留めている。


 襟元を肩口まで広く空け、ハイウエストで切り替えられたスタイルは最新流行のもので、ローヒールの靴を履き少しだけ裾を引いている。



 男性陣が席を立ったが、アレクシスはポカンと口を開けたまま座り込んでいる。

 隣にいたイライジャに頭を叩かれてアレクシスが慌てて立ち上がり、アメリアが席につくのを待った。



「あなたが参加するのをアレクシスには内緒にしていたの。面白い顔が見れたわ」


 ソフィーとカサンドラがハイタッチしながら笑っている。



 料理が運ばれてきたが、アレクシスは気もそぞろのようでアメリアをチラチラと見ながら料理を突き回している。



「なんだか初めてみんなで食事をした時みたいだわ」


 カサンドラは意味が分からなくてポカンとしている。


「あの時もね、アレクシスったら今みたいにアメリアに見惚れて食事どころじゃなかったの」



 くすくす笑う女性陣とニヤつく男性陣に見つめられたアメリアは真っ赤な顔になり、隣に座っているアレクシスを睨んだが、アレクシスは周りの声が聞こえていないようだった。


 アメリアは小声で、

「アレクシス、お食事を召し上がってください。皆さんが見ておられます」


「えっ、ああ・・うん。確かに美味しそうだ」


「ごほっごほっ、アレクシス・・おま」



 アレクシスの隣のイライジャには聞こえたようで、アメリアは離れに逃げ帰りたくなった。



 ジョシュアが斜め前の席からじっとアメリアを見つめていたが、

「ロージー?」


「はい、その通りです。よう分かりなさったですね」



「「えっ? 何が分かったの?」」


「何でもありませんわ。どうかお気になさらず、お食事をお続け下さいませ」



「ジョシュア? 何が分かったのか教えてくれるかい?」


 珍しくオリバーが口を挟んだ。



 アメリア以外が全員ジョシュアを期待の目で見たが、

「教えない、アメリア」(が言うと思う)


「このような場所でお話しするようなことではございませんの。どうかお気になさらず、折角のお料理が冷めてしまっては申し訳ありませんし。

カサンドラにぜひ最近の王都の様子をお聞かせいただきたいと思っておりましたの」



「アメリアが長文で話し始めたわ。緊張しているってことね」


「そうなの?」


「ええ、この半年で分かったことの一つよ。アメリアは緊張すると家庭教師に戻るの」



 じっと見つめる12個の目の迫力に耐えきれなくなったアメリアは、

「あの、大したことではありませんの。ちょっと妊娠したと言うか」




 ガタガタ、バタン。今日は6つ全てのの椅子が倒れた。


「「「ちょっと妊娠?」」」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る