第37話 ロージーが怒ってる
「アメリア様、そろそろ覚悟を決めにゃいかんです」
「ロージー、ジョシュアが寂しがってるんじゃないかしら? きっと庭の一番端でキョロキョロしてると思うわよ」
「アメリア様が行かれるんならお供しますで?」
「・・行かない。ジョシュアに今会うのは不味いわ」
話しながらもアメリアの手は一向に止まる様子がない。
「そりゃそうですわ。あん三兄弟の中でジョシュア様がいちばーん鋭いですでねぇ」
「・・」
「ちゃーんとアレクシス様と話し合うべきだ思いますで? アメリア様が後悔しとられると思われてもええですか?」
「・・」
「アレクシス様はちょいちょい突拍子もねぇ事を考えなさるで、そろそろおかしげなこと考え「分かった。今日は一緒に食事します」」
「では、料理人に伝えてきますで」
「アレクシスにも伝「ご自分でどうぞ、赤子じゃあるまいに、御亭主様との会話くれえご自分でなせぇまし」」
ロージーはアメリアの意気地のなさにかなり腹を立てているようで、最近はどんどん冷たくなっている。
アメリアは久しぶりに刺繍の手を止め、恐る恐る部屋のドアを開けた。
屋敷の中は静まりかえっているので、アレクシスは母家にいるか仕事で出かけているのだろう。
アメリアとアレクシスが住んでいるのはスコット公爵邸の離れだが、敷地の一番端に建てられているので母屋が小さく見える。
初夏の日差しを浴びた庭は明るく輝き、爽やかな風が花の香りを運んできた。
そっと母家に近づくと、ソフィーとカサンドラが邸から出てくるところに出くわした。
アメリアはカーテシーをしながら、
「お久しぶりです、キャンベル公爵夫人」
「まあ、カサンドラと呼んでちょうだい。私達親戚になったんだから」
「ありがとうございます、カサンドラ」
「今ね、アメリアを誘いに行こうと思って出てきたのよ。
良かったらみんなで夕食に集まったらどうかと思って」
「ありがとうございます、私も夕食の件でアレクシスを探しに来たところでしたの」
「そろそろアレクシスを許す気になった?」
「は? あの・・」
ソフィーが笑いながら、
「アレクシスがまた何かやらかしたんでしょう? この間から一人でぶつぶつ言ってるわよ」
アメリアは今日もレンブラントの絵画を見つめている。
「やっぱり何度見てもレンブラントは凄いわ。レンブラントはね画家には珍しく若いうちからその才能を評価されたのよ。
どんどん新しいことにチャレンジして、二股の彫刻刀を自作して版画にも手を出「アメリア様も新しいことに挑戦せんと」」
「うっ・・そうね。うん」
アメリアのガッツポーズした手がふるふると震えていた。
食堂の入り口に着くと従僕がにっこり微笑みドアを開けてくれた。
(今日は唖然とされなかったわ。よし)
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