第36話 半年後の二人・・
「最近つまんないんだよな。なんかいい事ないかなぁ」
「結婚してまだ半年なのに、お前もう去勢されたいのか?」
「ばっ、馬鹿。違うったら。アメリアが最近冷たいんだよ」
「いつも」(冷静だと思うけど?)
「刺繍ばっかりやってさ、全然構ってくれないと言うか。
もしかして俺避けられてる? みたいな」
ーー 時は少し戻り、ーー
豪快な結婚式の後、動揺しすぎて放心状態のアメリアはそのままスコット公爵のタウンハウスに拉致された。
「二人とも邪魔だから。アメリアが正気に戻るまでに既成事実を作る!」
「えっ、アレクシスお前まだ何もしてないのか?」
「当然だろ、家庭教師アメリアだぞ。こないだのパーティーでちょっとキスしたら張り倒されたんだからな」
イライジャとジョシュアの頭の中には、ついさっき教会で聞いた二人の会話がリプレイされていた。
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「この間俺達が何をしたか、ここで話そうか?」
「脅しても無駄よ」
「俺の事が嫌いならあんな事しな「煩いわね、黙って頂戴」」
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「・・お前、その程度でアメリアを脅せたのか? ある意味凄いな」
「勇者」
「五月蝿い。ぽやぽやしてるうちにアメリアが作戦立て終わったら俺には勝ち目がない」
「お、おう。頑張れよ」
「よ」
こうしてタウンハウスから追い出されたイライジャとジョシュアは、仕方なくランドルフ子爵邸に事の次第を報告に来ていた。
「つまり、その・・アメリアはアレクシスと結婚してスコット公爵のタウンハウスにいると?」
「はい、俺達も急展開でちょっと吃驚していますが」
「既成事実」(作るって張り切ってた)
「ゲホッ、ごほっごほっ」
ヘンリーがお茶を喉に詰まらせ咳き込んだ。
「あなた、落ち着いて。アメリアにはそのくらいの勢いがないと無理かもしれません」
まだ涙目のヘンリーが、
「ろっロージー、後でアメリアの様子を見て来てくれないか?」
「行くなら明日か明後日くれぇの方がええと思いますです。お嬢様はそん頃にならんと正気にゃ戻られませんで」
「そっそんなにかかるかな?」
「はい、往生際の悪さは天下一品ですけん」
「そうか、そうだな」
「アレクシス、大変そうだな」
「禁欲」(期間継続中かも)
「だな」
三兄弟とアメリア、ロージーの五人は領地に戻り、スコット公爵夫妻に結婚の報告をした。
ソフィーは大喜びでアメリアに抱きつき、オリバーは柔かにアレクシスの肩を叩いた。
その一時間後、唖然とした父親と仁王立ちして怒りまくってる母親に挟まれたアレクシス。
「なっ何ですって、無理矢理教会に拉致して結婚した? しかも正気に戻るまで、タウンハウスに監禁した?」
「ジョシュア、頼むよ。こういう時は文章喋らなくていいから」
全ての経緯をジョシュアに暴露されたアレクシスは、結婚式のやり直しが済むまでアメリアの半径1メートル以内に近づくことを禁止された。
「母上、それは酷くない?」
「酷いのはアレクシスよ。結婚というのはね、ちゃんとウエディングドレスを準備して、ご家族の方に見守られてするものよ」
「父上」(とアレクシスは一緒だね)
「ジョシュア、何で知ってるの?
ええ、そう。あなたのお父様も同じようなことをなさったのよ。
こんなことで血のつながりを感じるなんて」
ソフィーは額を抑え、
「やり直すわよ、それまでアレクシスはアメリアには近づかないで!」
そしてラヴェンナで盛大な結婚式を挙げ直したのが半年前。
今日もアメリアは自室に篭り、せっせと刺繍を編み続けている。
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