第10話 マナー講習開始

 スコット公爵家の3人息子は途方に暮れていた。


 アメリアが最初に言い出したのは、毎日決まった時間に3人揃って食事をする事。



「俺は仕事が忙しいんだぞ」

「朝起きれるわけないじゃん」

「・・」(人が多いのはやだ)


「時間を意識すれば、仕事の切りをつけることなど簡単な事です。

突発的な状況ならばご連絡をお願いします。


夜更かしを控えていただけば、朝は気持ちよく起きられます。


人が多いのは・・慣れれば大丈夫です」



 使用人達にも食事の時間を守らせる為の声かけを頼んだ。


 当日の夜アメリアが食堂に行くと、


・イライラした様子のイライジャ

・時間を然りに気にしているアレクシス

・ソワソワと周りを見回しているジョシュア


の3人が座っていた。


「遅いぞ、お前が言い出した事だろう?」


「貴族のレディは一番最後に入るものです。

皆さん席をお立ちくださいませ」


「なんで? 時間ないんだけど」


「レディが入ってきたら、一旦席を立ちレディの着席を待ってから座ります。

さあ、立ってくださいな」


 ガタガタと音を立てて渋々席を立つ3人。


「慣れてきたら、音を立てないでお立ちになれるよう練習してくださいませ」


 アメリアが使用人の引いた椅子に腰掛けると、3人がホッとしたように座り始めた。


「もしかして、食事の後も今のをやるのか?」


「はい、勿論ですわ」


「はぁ」

「・・」(最悪だ)



 アメリアはにっこり笑って、

「習うより慣れろと言いますから、頑張ってくださいませ」



 3人は食事のマナーもなっていなかった。音を立ててスープを啜り、ナイフやフォークをガチャガチャ。



(気長にやりましょう。後11ヶ月もあるんだもの)



 アレクシスは約束があったようで、食事の後大急ぎで飛び出していき、ジョシュアはその影に隠れるようにして出て行った。



 食堂にはアメリアとイライジャが二人で残された。



「お前、傷物だって?」


 アメリアは首を傾げ、

「どなたからお聞きになりましたの?」


「ジョシュアが言ってた」


「もう何年も前ですが、婚約破棄されてしまいましたの」


「理由は?」


 アメリアは眉間に皺を寄せ、

「そう言う事をレディに聞「構わんだろ、話してみろよ」」



「数年前、お父様が事業で多額の借金を背負ってしまいましたの」


 その後が続けられなかったアメリアの代わりに、

「それで相手が逃げ出したのか」


「よくある話ですわ」


 イライジャはワインを手酌で注ぎ、

「それで貴族の令嬢が家庭教師か」


「それもよくある話ですわ」


「お前がせっせと作ってるやつは?」


「趣味と実益を兼ねてますの。結構評判がいいので」


 イライジャは笑いながら、

「だろうな、お前はやるとなったら徹底的にやりそうだ」


「あら、今日はかなり手加減しましたのに。明日はご期待に沿わなくては」



「いや、それは堪忍してくれ。

俺が言いたかったのは、あれだ。

ジョシュアの事礼を言っときたくてな。


あいつが人前に出てくるとか、俺達は諦めてたんだ」


「仲の良いご兄弟ですね」


「何があったのか聞かないのか?」


「こちらから聞き出す事ではありませんもの」


「それもレディの嗜みか?」


「はい、将来の為に覚えておかれた方が宜しいかと」


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