第3話 密室の詳しい詳細

 次の日のお昼休み、わたしたち風紀委員は林先輩のもとへ向かった。雪さんが三年一組の教室に顔を出し、先輩を呼んだ。


 廊下の窓際に立ち、話を聞くことになった。ラブレターのことは三年の大半の生徒に知られており、林先輩が渦中の人物であることも周知されているため、風紀委員が勢ぞろいで話を聞いている光景は注目を集めた。みな興味があるのだ。目的が騒動を起こすことであれば、犯人の狙いは的中している。


「なんだか注目されてるね」

 と林先輩が言った。

「でも風紀委員がきてくれたもう安心だよ」

「そう言っていただいて光栄です。ね、みんな!」

 雪さんは喜び破顔した。

 その通りだ。風紀委員に信頼を寄せてくれているのならば、必ずこの謎を解かなければならない。期待に沿えなければ。


 わたしは一歩前に出ると、

「ロッカーにはちゃんと鍵をかけていたんですよね?」

「うん、それは間違いないよ」

「例えば、鍵を開けたところで友達に呼ばれ、ちょっと離れたってこともありませんか?」

「なかったよ」

「今まで鍵を落としたことはありませんか。それで複製されたりなんてことがあるかもしれません」

「ないよ、落としたこと」

 林先輩は首を振った。

「じゃあ、自分のロッカーの前に不審な人物が立っていたとか……」

 林先輩はもう一度、首を振った。そうすぐには尻尾を見せないか。


 ロッカーを見せてもらうことになった。

 乱暴にこじ開けた形跡もなく、鍵穴周辺を確認してみても傷などはなく、道具の形跡はない。

「郷田先輩なら無理にこじ開けることってできますか」

 とわたしは尋ねた。

「むろんだ」

 郷田先輩は断言した。別に胸を張り筋肉を強調する必要はないですよ?

「殴ってでも放ってでも扉を引っ張ってでも開けることはできるが、何もなかったかのように修復するのは不可能だ」

「ですよね」

 力だけでなく、修繕できる『技』もあれば驚きだ。


「ピッキングはできないかな?」

 と雪さんは言った。

「素人が開けれるとは思えません。ピッキング技術を持った中学生がいるとも思えませんし」

「そうだよね」

 林先輩にロッカーを開けてもらうように頼んだ。中は綺麗に整頓されており、壁や天井などに穴が開いている形跡はない。外から入れるのは一見、不可能に思える。

 わたしはロッカーから振り返り林先輩を見た。


「この人が送ったんじゃって思う怪しい人はいますか?」

「ええ……どうだろう? ううん、特にいないかなぁ……」

「伊藤拓郎はどうです……?」

「ん、だれ?」


 ほっと胸を胸を撫でおろした。拓郎くんと接触はないみたいだ。だが拓郎くんが臆してしまい、声をかけられなかったとも考えられる。気持ちは伝えたいため、ラブレターを送った。

 ない話とは言えない。わたしだってない話だって断定したい。


 ラブレターを見せてもらったが、素敵だとか好きだとか、誰にでも当てはまるような散文的な内容だった。相手のことを考え綴ったとは思えなかった。

 イタズラなのだろうか?

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