第12話 最後の別れ、また逢う日まで・拓郎視点

 職員室に向かい、先生に再テストを頼みに向かうことになった。


 凛子だけでなく、先輩二人もついて来てくれるみたいだった。人数が多ければ多いほど、恐怖心も和らぐのでありがたかった。

 こういったところが風紀委員の甘さだな。しかもどうせ、雪先輩は優しいから、おれが困っていたら代わりに話を進めてくれるだろう。ボーっとしておけばいつの間にか話が終わっているだろう。楽ちん楽ちん。


 風紀委員室を出ると、沖本先輩が立っていた。


「うおっ!」

 おれは声を上げた。目の前に、前髪で顔が隠れた女がいたらそりゃ怖いに決まっている。


「あなたに最後のお別れを言いにきたの」

「おれに?」

「ええ。前にも言ったけど、私、オトコを信用してないの……。でもあなたならっていう片鱗を見せてくれて、期待しちゃった。結局だめだったけどねぇ」

「はあ……」

「いえ、あなたを責めているわけじゃないのよ。オトコに期待しちゅう私も、オンナなんだなって改めて実感しただけ……。もう会うこともないでしょうけど、お互い幸せになりましょ」


 同じ学校なのだから会うこともあるだろう……。ツッコミを入れると面倒なことになりそうなので、何も言わなかった。


「私、あなたが後悔するくらいいいオンナに成ってみせるから」

「はあ……」

「今度会ったときを楽しみにしていることねぇ」

 もう会うことはないのではなかったのか。


 じゃあね、と沖本先輩は長い髪をなびかせながら去って行った。相変わらず個性的な人だ。言ってることがすぐ矛盾するし、やはり天然なのだろう。


「なんやったんやろうな――えっ」

 振り返って目を見開いた。凛子と雪先輩は、惚けた表情で沖本先輩の背中を眺めていた。

「やっぱかっこいいですね……」

「だね……憧れちゃうよ……」


 大丈夫だろうか、この二人。頭を修理してもらった方がいいのでは……。


 職員室ではなく、まず保健室に向かった方がいいかもしれないな。

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