第8章 第二夜の幕開け②
「ピンポン」
非現実的な幽霊や怪談話などを信用しない2人であったが深夜に鳴り響くインターフォンには恐怖を感じた。
「ピンポン・・・・・ピンポン・・・・・」
その後もインターフォンは何度も鳴り続け、深夜の訪問者を1人では確認ができない明子は夫の腕を引っ張り玄関モニターの所までやってきた。モニターには頭からフードを被り,口元をマクスで隠し,鋭利な眼差しでこちらを睨みつける女性と思しき姿が映し出されていた。2人には見覚えのない異様な雰囲気すら醸し出している訪問者に恐怖心は増長されていった。
「あの~、どちら様でしょうか」
明子は訪問者へインターフォン越しに問いかけた。
「・・・・・・・・・・あ・た・し」
長い沈黙の後、訪問者はフードを外すと名前の代わりに人称を告げてきた。
「あたし!?恐れ入りますがお名前を伺いたいのですが」
「アラ~、分からないんだ。そうよねぇ、この姿で会うのは初めてですもの分からなくても当然かしら・・・だけどあたしの声には覚えがあるんじゃないない」
「???」
確かに女性の言う通りで2人には以前ドコかでそれも親しい間柄の人物が同じような声質であったような気がしてきた。所が訪問者の異様な姿が2人の思考を邪魔して誰のことだか思い出せずにいた。
「それとこんな夜遅くにどう言ったご用件でしょうか」
明子は訪問者の詳しい情報を聞き出そうと畳み掛けるように問いかけた。
「どう言ったご用件ですって・・・マジ、イラつく!暫くブッチされている間に娘の存在すら忘れちゃったんだ」
「娘・・・!!!『あっ、そうだわ!この声、奈津子の声とソックリ』あ、あなたって奈津子、そうなんでしょう。とても心配していたのよ」
インターフォン越しに見える顔は2人が知っている奈津子の顔とはまったく異なり、髪型もここ最近家族にすら見せたことがないストレートのスーパーロングヘア,口調に至っては若者言葉を話している所など1度も見たことがなかった。しかし声質だけは明らかに奈津子本人のモノで間違いがなかった。
「心配って、ホントかしら」
「それは・・・」
朱美に[奈津子は私の勤め先に入院しているから私に任せて、2人は気にせず仕事に頑張ってね]と言われ結果的に見舞いにも行かずに蔑ろにしていた2人に弁解の余地はなかった。
「そのことは後で話しましょう。それより確か今、入院中だったのではないの」
明子は即答を避けるべく話題を変えた。
「もしかして帰ってきて迷惑だった」
「そんな訳ないでしょう、ここはあなたのお家よ。ま、まずは中に入ってちょうだい」
明子は奈津子と思しき女を迎え入れるべく玄関のドアを開けた。
「うふふふふー『開いた、開いた。これだからお母さんってば単純なんだから・・・これから新しいあたしをたっぷりと見せてあげちゃう』」
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