7章 洗脳③
いつの間にか背後へと回り込んだ通り魔はワンピースに付いているフードを口裂け女に被せると耳元まで顔を近づかせて囁き出してきた。
「鏡に映った姿をもう1度よーく見なさい。今夜のお前は赤ずきんちゃんになったの」
真っ赤なフードが頭巾のような役割を果たし、文字通りに口裂け女を赤ずきんちゃんへと変えた。
「赤ずきんちゃんがおばあさんの所へお使いに行ったのは知っているかしら」
「・・・」
奈津子は無言で頷いた。
「これからお前にも童話と同じくおばあさんのお家まで行ってきてもらいたいの。だけどお家には怖いオオカミさんがお前を食べてやろうと待ち構えているわ、怖いでしょう。童話だと猟師さんが助けてくれるんだけど、こんな夜遅くだと猟師さんも寝ちゃってて助けに来てくれないわ。だからお前は自らの身を自身の手で守らなくちゃいけないの。そこで護身用に持たせてある刃鎌でオオカミさんのお腹を切り裂いてやりなさい・・・分かったかしら」
「・・・」
口裂け女は再び無言で頷いた。
「賢い子だこと、それとおばあさんのお家がドコにあるのかも知っているかしら」
「・・・」
口裂け女が再び無言で頷くと通り魔は口裂け女の側を離れて病室のドアを開けた。
「さぁ、今夜も行ってらっしゃい、私の可愛い口裂け女ちゃん」
「コツン・・・コツン・・・コツン・・・コツン・・・」
1歩ずつ,優雅に,様になった歩き方を披露しつつ、今夜も1人の少女が口裂け女として外界へと解き放たれた。
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