#87(最終話) セフレからお嫁さん




 結婚式の翌日から新婚旅行に出かけた。


 隣県の山間やまあいにある有名な温泉街と更にお隣の県の観光地や美味しい蕎麦屋さん巡りなどを二泊三日の日程で車で周った。


 運転はほとんどヨシムネさんがしてくれたけど、たまに私も交代した。


 お土産は、お蕎麦セットや野沢菜などのお漬物、あとは洋菓子なんかを色々買いこんだ。





 新婚旅行から帰ると、ヨシムネさんは翌日の1日だけ休んで、二人で親戚やご近所さんへお土産を配って周り、ご両親のお墓詣りをしてきた。




 お墓詣りの帰り道、二人で手を繋いで歩いた。


 お喋りしながら歩いていると、初めてヨシムネさんと手を繋いで歩いた日のことを思い出す。


 あれからまだ1年経っていない。

 当時は、ヨシムネさんとの結婚を夢見るセフレだった。


 心を通わせることが出来ずに、体の関係だけで何とか繋がっていた。

 ヨシムネさんに会えることを喜びながらも、毎日寂しい思いもしていた。


 ヨシムネさんのご両親のことを知り、更にヨシムネさんの心の傷を知って、私がヨシムネさんの家族になって、ヨシムネさんは一人ぼっちじゃないよって言いたくて、ここまで頑張って来た。




 私の左隣を歩くヨシムネさんの顔を見上げると、ヨシムネさんも私を見ていて、ニッコリと優しい笑顔を見せてくれた。


「ヨシムネさん、なんかこうやって手を繋いで歩いていると、初めてお家にお邪魔した時のこと、思い出します」


『ふふふ、そうだね。僕も丁度あの時の事を思いだしてたよ。 あの時、ヒマワリさんはストーカーだったんだよね?』


「ううう、それは思い出さないでぇ」


『ははは、冗談だよ。あの時も今もストーカーだなんて思ってないよ』


「もう・・・そうだ、ヨシムネさん」


『うん?』


「久しぶりに、オムライスが食べたいです。あの日、初めてヨシムネさんが手料理食べさせてくれたオムライス」


『おっけおっけ。なら帰りにスーパーに寄って行こっか』


「はい、そうしましょう。ふふふ」





『ヒマワリさん、あの日、僕に会いに来てくれてありがとうね。 きっとあの日、ヒマワリさんと話せたから、今僕はヒマワリさんと結婚できたんだって思うよ』


「そうなんですかね・・・でも、そうですね。 私もあの時にヨシムネさんの本音を聞けて、気合入りましたからね!」


『そうそう、気合はいったねぇ』







 スーパーに寄って家に帰ると、早速ヨシムネさんがオムライスを作ってくれた。


 ヨシムネさんのオムライスは、いつもと同じで、どこか懐かしい味がした。










 お終い。







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純愛はセックスの後で バネ屋 @baneya0513

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