#84 ヒマワリのウエディングドレス





 式場に到着し受付を済ませると、ヨシムネさんとは別々にメイクルームへ案内された。

 父はラウンジに残り、母とコトネさんが私と一緒に来てくれた。


 コトネさんが手配してくれていた美容師さんにヘアメイクをしてもらい、ウエディングドレスに着替える。


 鏡で自分の姿を確認する。


「うほっ 超恥ずかしいんですけど」


 母は「見てくれはなんとかなったわね」と言い


 ボスは「すっごい綺麗だよ!」と言い写メをパシャパシャ写していた。


「私も記念に写しとこっと」と、自分のスマホで姿見を使って数枚自撮りした。


 

「我ながら、化けたね。これなら誰も私だって判らないかな?」


「そんな訳ないでしょ!またバカなこと言って!」


 コトネさんがヨシムネさんと父を呼んで来て、二人にも私の晴れ姿を披露した。



 父は「ウンウン」嬉しそうに頷いていた。


 ヨシムネさんは『無理矢理でも式することにして正解だった』と満足そうだった。




 着付けが終わり、会場に移動してプランナーさんと簡単なリハーサルを行い、控室に待機した。


 本家の伯父さんと伯母さんもやってきたので、仲人の挨拶をして貰うお礼を改めてした。




 開場時間になったので、バッグからお義父さんとお義母さんの遺影を取り出し、コトネさんに渡し、式の間持っていて貰うお願いをすると、喜んで引き受けてくれた。


 私とヨシムネさん以外は会場に移動して、時間まで待機。


 待っている間に、ヨシムネさんに今朝見た夢の話をした。



「お義父さんにはお礼を言われて、お義母さんには、これからもよろしくって言われました」


『そっか、僕の夢にはちっとも出てきてくれないんだけどな。 きっと父さんも母さんもヒマワリさんのこと気に入ってくれたんだね。 僕よりもお嫁さんのが大事なんだよ』


「そ、そうですかね? だったらいいんですけど。 あ、そういえば、夢には5歳くらいの男の子と3歳くらいの女の子も一緒でした。 まさかとは思いますけど、将来二人の子供に恵まれるかもしれませんね?」


『ほー、それは中々縁起が良い夢かもだね。 男の子かぁ、野球一緒に出来るかなぁ』


「ふふふ、私、その子とキャッチボールしてましたよ」


『え?僕じゃなくてヒマワリさんが?』


「はい、私の投げ方も板についてましたね」


『そっかぁ でも子供出来たら楽しいだろうなぁ』




 時間になり、会場まで案内される。

 ヨシムネさんと別れ、私は式場(チャペル)の扉の前で待機。

 父も待機していて、プランナーさんに促されて父の腕に手を回す。


 チラリと父の横顔を見ると、真っ白い顔してガッチガチになっているのが分かった。


「お父さん、今日は飲みすぎないようにね。 悪酔いしたらお母さんに怒られるよ?」


「お、おう」


「ふふふ、今日までありがとうね。 それと、ブスでいじけて色々心配かけてごめんね。 何とかお嫁に行けたよ」


「うん。父さんの方こそありがとうな。 ヒマワリの花嫁姿見れて、凄く嬉しいよ」



 プランナーさんが無言で頷くと、式場の扉が開いた。



 ブルーの絨毯が真っ直ぐに伸びていて、両脇に座る沢山の人たちが私を見ていた。


 みんな笑顔で迎えてくれて、逃げ出したくなるのを必死に我慢して、父の歩調に合せて背筋を真っ直ぐ伸ばして、正面に立つヨシムネさんを見ながら歩いた。




 なんとかヨシムネさんの所まで歩いたけど、緊張しすぎて、ココからの記憶がほとんど残らなかった。


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