#83 結婚式の朝
夢を見た。
いつもの公園で、5歳くらいの男の子と私とでゴムのボールでキャッチボールをしていた。
ベンチにはお義父さんとお義母さんが座ってて、ニコニコしながら私たちのキャッチボールを眺めていた。
お義母さんはチロルをだっこしていた。
ヨシムネさんは3歳くらいの女の子をブランコに乗せて、ゆっくりと前後に動かしていた。
男の子が大げさなフォームで投げると、ボールは私ではなくベンチの方向へ飛んで行った。
私はボールを追いかけベンチへ駆け寄ると、お義父さんが
「ヒマワリさん、ありがとうね」と言った。
お義母さんは
「これからもよろしくね」と言った。
私は何故だか分らないけど、その場で立ち止まってボロボロ泣き始めた。
男の子が私のところに来て、私の服を引っ張り
「今日は忙しいから、そろそろ起きた方が良いよ」と言った。
顔上げると、チロルと目が合い
「式の前に写真撮影があるのだろ? 今泣くと不味いですぞ」と言われた。
「そうですね、先輩。 そろそろ準備します」と私は答え、目が覚めた。
起きると自分の部屋のベッドの中で、チロルも一緒に体を丸めて寝ていた。
時計を確認すると、6時過ぎだった。
チロルを起こさない様にそっとベッドから抜け出して、着替えを持ってバスルームへ向う。
キッチンで包丁の音がするので顔を出すと、母が朝食の準備をしてくれていた。
「おはよう、お母さん。 朝早くからありがとうね」
「あらおはよう。 気にしなくていいから準備してらっしゃい」
「うん、分かった」
バスルームへ向かう前にお座敷に行き、仏壇の前に座る。
初めてココに座った時のことを思い出した。
「お義父さん、お義母さん、お蔭様で追川家の嫁になれます。 どうか今日一日見守って下さい」
そう呟いてから立ち上がり、二人の遺影をそっと取って風呂敷に包み、今日持っていくバッグに仕舞った。
シャワーを浴びてから着替え、ヨシムネさんを起こしに行く。
自室のベッドで寝ているヨシムネさんに、軽くキスをしてから
「起きて下さい。朝食食べましょう」と体を揺すって起こす。
『おはよう、ヒマワリさん』そう言って体を起こし、私を抱き寄せ再びキスをした。
「母が朝食の準備をしてくれたので、食べましょう」
『うん、了解』
父も起きてきて、4人で朝食を食べながら今日のスケジュールを確認した。
8時半までに式場に入り、メイクや着替えなどの準備を始める。
10時に写真撮影と会場での簡単なリハーサル
10時半に開場で11時に挙式がスタート
11時半に式が終わり、全体写真の撮影
12時から披露宴の開始
14時に披露宴終了
15時に着替えを済ませて一旦帰宅
17時から2次会のレストランへ行き19時にはお開き
「うへぇ~、ハードスケジュールだぁ。 私、留守番しててもいい?」
「あんたナニ言ってるのよ! ホントにこの子は!もう!」
『まぁまぁ、今日1日頑張れば、また明日から自宅警備員なんだしね?』
「ヨシムネさんはヒマワリに甘いのよ! もっと厳しくしていいんですからね?」
朝食を食べ終えると、父と母は礼服の着替えを始めた。
私は食器の洗い物を済ませ、玄関の掃き掃除や花壇の水やりをして時間を潰した。
7時半になると、着物を来たコトネさんがやってきた。
コトネさんは伯父さん伯母さんとは別に、私達と一緒に式場に向かうことになっていた。
「おはよう、ヒマワリちゃん」
「おはようございます、ボス。 着物、凄いですね。着物詳しくない私が見ても高いのが判りますよ」
「ふふふ、二人の晴れ舞台だからね。 とっておきのにしたの」
「流石、本家のお嬢は違いますな。セレブ感半端ないっす」
「もう朝からナニ言ってるのよ! 今日はヒマワリちゃんの結婚式なんだからね!」
全員の準備が整い出かける前に、玄関前で家族の記念撮影をした。
私達と両親、私達とボス、私とボスの3パターン撮影。
式場にはヨシムネさんの車と父の車の2台に分かれて向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます