純愛はセックスの後で

バネ屋

本編

#82 結婚式前日



 6月某日

 明日はヨシムネさんとの結婚式。



 で、流石に今日は忙しい。


 式は、市内の某所で行う為、私の父と母は昨日から追川家へ泊りに来ている。

 チロル先輩は、いつもより家に沢山人が居るのが落ち着かないのか、私の部屋に閉じこもって出てこない。



 朝からコトネさんもやってきて、細かいスケジュールの確認とかの打ち合わせが始まった。 美容室の予約の時間やら、何時に何台タクシー呼ぶやら、誰々はドコドコに宿泊してもらうだ。


 まぁ、実際に打合せしてるのはヨシムネさんとボスなので、打合せしてる横で、いかにも私も意見出してます!っていうテイで頷いてみたりしてたんだけど、直ぐに飽きちゃって、こっそり抜け出し庭の花壇いじりしてた。




 4月に植えたヒマワリ各種は、種類によっては蕾が出来始めてて、予定通り7月に入れば花を咲かせそう。


 去年パンジーとか植えてたスペースは、何植えよっかなぁ

 プランターも結局使わないままだし、もうちょっと派手目なの植えてみよっかなぁ


 なんて、雑草毟りながら呑気に考えてた。



 そしたら「ちょっと!ヒマワリちゃん、何してるの! 目離すと直ぐどっかに行っちゃうんだから!」ってボスに怒られた。


「いや、打合せっていっても、私、特に意見ないので、すること無いっす」


「それでも! 明日の予定、ちゃんと聞いてなくちゃ!」


(・・・ボス、ウチの母親より、口煩いな・・・)



 で、30分くらいは再び打合せに混ざってみたけど、やっぱり退屈しちゃって、トイレ行くフリして抜け出して、今度は玄関先とか家の前の道路の掃き掃除始めた。



 でもやっぱりボスに捕まってお説教されて、今度はヨシムネさんとボスの間に座らされて、両サイドからのがっちり監視の下、みっちり打合せに参加させられた。






 そして夜。


 ドラマとかだと式の前日とかって、お嫁さんは実家で両親に三つ指ついてこれまでのお礼とかしてるんだけど、ウチでは婿さんの家で焼肉食べてたね。 お父さんなんかは、私と喋るよりもヨシムネさんと釣りの話で盛り上がってたし。


 因みに、コトネさんも晩御飯をウチで食べて行き、一人だけ最初からビール飲んでた。

 それで、そんなに酔ってないはずなのに「ようやく式まで漕ぎつけれてめでたいめでたい!」って私に絡んではおっさんみたいな悪酔いしてた。


「ボス、あんまり飲むと明日持ちませんよ」って窘めても「いいのいいの!ヒマワリちゃんも飲みなさいよ!独身最後の夜なんだよ!」って無理矢理飲まされた。


 そしたらウチの母親まで珍しく「私も頂こうかしら」って言って、飲んでた。

 逆に父の方は、ヨシムネさんに気を遣ってるのか、一口も飲んでなかった。




 そっかぁ

 独身最後なんだ

 そんなことボスに言われるまで、忘れてた。


 12月から既に同居始めてたし、この家でのヨシムネさんとの生活にすっかり慣れちゃってて、自分が今日まで独身だっていう自覚なかったな。


 きっと、この家での生活がそれだけ充実してるってことなんだね。




 そんなこんなで、なんだか賑やかな結婚式前夜でした。


 明日は式当日で朝早いし忙しいので、9時前にはボスは帰って行った。

 私とヨシムネさんも、食事の後片付けが済んだら、さっさとお風呂に入って就寝した。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る