Part.7

 アテレーゼ領での数日間の視察を終え、魔界帝国皇城の自分の執務室に戻って来たオズヴァルドを出迎えたのは、強欲、色欲、暴食、怠惰の悪魔達であった。

 「おう、お帰り」

 「お土産は?」

 「食いもんだと尚いいな!」

 「……サタン様」

 「……すまん、止められなかったわ」

 抗議の視線をサタンに向けると、溜め息とともに告げられた。

 釣られるように、オズヴァルドも溜め息をついた。

 「何で俺の執務室に七つの大罪が揃っているんですか。土産なんてありませんよ、全く……。あ、レヴィアタンとサタン様にはありますよ。ロゼから、紅茶のクッキーだそうです」

 「やった……!」

 「よっしゃ!」

 預かっていた包みを二人に手渡す。すると、他の悪魔達が群がっていった。

 「美味しそうー♡分けて♡」

 「やだ……」

 「ずりぃだろ、二人だけとか。俺様にも寄越せ!」

 「誰がやるか!というか、何で怠惰のお前まで来てるんだよ」

 「……お菓子食べたい」

 「それだけの為かよ!?なんでさ!?……っておい待て、食べようとすんなベルゼブブ!従僕の元に帰れ!」

 「もーらい!」

 「あっおいふざけんなお前食べ始めたら食い尽くすだろ「うまっ!!」ベルゼブブお前なぁあああ!!」

 ものすごく、騒がしかった。一言言ってやろう、と口を開きかけたその時、

 「失礼致しますっ!!」

 バンッ、という大きな音と共に、ロゼアリアが駆け込んできた。

 

 ゲホッ、ゲホッ、と必死になって息を整えようとするも、全速力で走ってきた為か、酸素が足りない。

 「お水……飲んで……」

 「あ、ありがとう、ございます、インディヴィア様……」

 一気に煽って、飲み干す。心配を掛けているのは理解しているが、それどころではなかった。

 緊急事態なのだ。

 「……何があった」

 サタンの問いに、一度深呼吸をしてから答えた。

 「ルナライト領の外れにある教会の神官が、申請を出さずに召喚式を行いました……!従属者は隣接する孤児院にいる、私と同い年位の女性、召喚に応じたのは、す、スペルヴィア様!傲慢の悪魔です……!」

 「……は?」

 その場にいた全員が、ピタリと固まった。

 七つの大罪、序列1位。他の悪魔達を取り纏める、傲慢の罪を冠する悪魔。

 そんな彼が、一人の少女によって喚び出されたのだ。

 時と場合によっては、勢力図がひっくり返る可能性がある。

 「……んの、クソ兄貴ぃいいいいぃ!!」

 

 その時のサタンの絶叫は、皇城全体に響き渡ったという。

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