第5話 私はミホの物
「ミホ、大丈夫……?」
「だ、大丈夫だから!! 集中してるから静かにね!!」
手に汗握る。
私もミホも。
今日は車を借りて遠出をしている。
夏だから海に行こうって。
ミホはペーパードライバーって自分で言ってた。
どんな意味なのかな。
スマホとかがあれば色々と調べられるんだろうな。
でも、私には必要の無い物。
海なんて久しぶり。
私は泳げないからちょっと怖いけど。
トンネルを抜けると、左手に海が見えてきた。
ミホに話しかけたいけど……集中出来ないよね。
「アキ!! 海だよ!! 見える!? 私の代わりに見ててね!!」
「うん、見てるよ。綺麗」
◇ ◇ ◇
海の近くに車を停めて、支度をする。
「アキ、こっち向いて」
「なに? これ」
「日焼け止めだよ。アキは色白だから、いっぱい塗ろうね」
そう言って顔や手足に塗りたくる。
勿論全身塗るみたいで……
「ミホ……そこは……」
「いいからいいから」
ヌルヌルしてるからかな。
とっても……
「アキ、厭らしい顔してるよ。どしたの? もしかして……」
「違うっ……クリームが……」
「可愛い♪ 続きは夜ね。今日はホテルに泊まるから、いつもみたいに声を我慢しなくていいからね」
「えっと……うん……」
あれこれ考えてしまう。
海の事なんか、どうでもよくなっちゃうくらい。
「よーし泳ぐぞー!! アキ、浮き輪あるから一緒に泳ごうね」
「わ、私はいいよ……? 怖いし……」
「そう……」
ミホが何か考えている。
少しニヤついて……
こういう時はお仕置きされる事が多い。
◇ ◇ ◇
砂浜は人で賑わっていて、私は一人でポツンと立たされている。
ミホが私に用意した水着は隠す面積がとっても小さくて……
恥ずかしい。
ただただ、俯くしかない。
すると男の人達に声をかけられる。
「君一人? 凄いの着てんじゃん。ソレ、誘ってんでしょ? あっちの岩場人がいないからさ。来なよ」
そう言って手を引っ張られる。
怖い。
これから自分がされる事を想像すると……
ミホは離れてこの光景を眺めていて、私が怯えているのを見て楽しんでいる。
前にミホが言ってた。
自分の物が誰かに取られる事を想像すると、ゾクゾクしちゃうって。
きっとこの事だ。
私……ミホの物になれてる。
そう思うと嬉しくなる。
でもやっぱり怖くて……
思わず涙が溢れてしまう。
「お兄さん達、その子私のツレだから。泣いて嫌がってるでしょ。警察呼ぶよ?」
既の所でミホが助けに来てくれた。
男の人達はブツブツ言いながらどこかへ行ってしまった。
「アキ、大丈夫── 」
「ミホ……怖かったよ……ごめんなさい……」
思わず抱きつく。
恐怖と安堵で全身が震えてしまう。
「ううん、ごめんね……最初は見ててゾクゾクしてたんだけど、いざアキが誰かに取られちゃうって思ったら凄く嫌になっちゃって。アキは私だけのものだから」
「うん……私も……」
「ホントごめんね。よしよし……これ上から羽織って。あとさ、私が手を握ってるからちょっとだけ海入ろ? 私、アキと入りたいな」
「……うん。さっきはごめんなさい、せっかくミホが連れてきてくれたのに……」
「私もイジワルしちゃったから。イジメたくなるほど可愛いんだよねー、アキは」
手を繋いで、浅瀬に入る。
怖いけどミホがいるから……
「キャー冷たい!! アキ、冷たいね!!」
「うん、冷たい」
ミホは足で波を蹴飛ばして遊んでいる。
楽しそう。
私も少しだけ真似をする。
足をとられてそのまま尻もちをつく。
「アキ!! 大丈夫!?」
「うん……わっ?」
大きな波が直撃して、また尻もち。
「アキ……ふふっ、楽しいでしょ? 海って」
「うん……しょっぱい」
海は怖くて、しょっぱくて。
ミホがいれば、ちょっぴり楽しくて。
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