朝は真実、夜は死、狭間に夢を見る物語
- ★★★ Excellent!!!
第一章完結、次章への引きが見事な興奮の幕切れでした。
この作品には大きくみっつの世界(主人公・銀鶏の日常と彼を侵食する女教皇との邂逅の場、そしてオンラインゲームD.D.T online)が登場し、そのすべてに銀鶏を翻弄する女性が登場する。
恋人のアイカは些細な亀裂から彼の日常を一変させ、女教皇は妖しく艶やかに、けれど威圧的に彼を取り込み、そして自身のアバターであるjane_doeは秘めた力を引き出すことができない。
このようにいかなる局面においてもままならない状況に煩悶し、仲間や協力者とも言い切れない曲者に囲まれながら夢に、現実(生業とは違う、真に生きるための絵)に、ゲームに求める「虎」を追いかける主人公・銀鶏の巡礼とも呼べる日々の前に立ちはだかる「K」とは如何なる存在なのか。
謎と謎とを一見それぞれの世界にばらばらな点のように見せかけて、実はリンクする線が巧妙に張り巡らされた構成と演出は解読し応えがあり、難解そうという懸念もゲーム世界における仲間たちとの三馬鹿的やりとりで緩和され徐々に解きほぐれていくことだろう。
空席の女教皇の椅子には、存在しないゆえに巨きな意思が存在する。何故ならそれを証明する方法は無いのだから。
でもまあ、ライトノベルという分野で男の駄目なところと女の嫌なところをこう生々しく書くのは珍しいですね。