雪原とカラスと赤い空

 真っ赤に染まる空の下、雪原が照り返しを受け桃色に輝いている。

 雪原には小さな足跡が点々と続いていた。

 何故その空が赤いのかは分からなかった。

 太陽も月も、この空を照らし出してはいなかった。

 見渡す限りの雪原は空に解ける前にきらきらとした靄となり、消えていた。

 そこに私はたった一人立ち尽していた。

 私はカラスのひどく耳障りな鳴き声を聞いたかのような気がしたのだが、それも静寂の雪原へと吸い込まれてゆき、最初から何も聞こえないかのように、カラスなど存在しないかのように消えて行った。

 そしてその小さな足跡はやはり小さな私自身のものであることがわかると、わたしはこんなにも一人だということに恐怖した。

 いつの間にか足跡は消え雪原でたった一人、私は、幼い私は立ち尽していた。

 頭上には三羽のカラスが赤い赤い空を巡っている。

 すると、なにか途轍もなくが私に語りかけてくるのだ。


”おまえ、ほかの人が見ているようにせかいが見えるのかい?”

 だからわたしは正直に答えるしかなかった。

”いいえ、そんなことは一度だってありません”


 カラスはますます騒ぎ立て、私の上で旋回を続けている。

 遂にこの雪原に異変が現れた、不意に一本の枯れ木が目の前に現れたのだ。

 するとカラスのうち一羽がその枯れ木に泊まり、こちらを見て一声不快な声で鳴いた。

 再びは私に語りかけた。


”おまえ、悪いことがなされていても怖いから見ているだけかい?”

 だからわたしは正直に答えるしかなかった。

”怖いんです『連中』が本当に。だから見ているだけです”


 するとどうだろう! 枯れ木に泊まったカラスはの声、人語でこう話し始めた。

うつつこそ夢、夜の夢こそまこと」

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