第81話 ラウンジ
ラウンジとやらは、二階の様だ。
壁際の階段を上がると、視界が開けた。
フロアの半分以上の広さのスペースが衝立や観葉植物でゆるく区切られ、テーブルと椅子が配置されている。
たくさんの人が話をしたり、くつろいだりしている。
ラウンジの端のカウンターで飲み物なんかも売っている様だ。
「オーマ!こっちよー!」
階段から近い位置のテーブルに居たノーラが、手を振っている。
「どーも、お待たせ」
「向こうの話は終わったの?」
「ああ。で、向こうでおすすめの宿を聞いてみたら、ノーラに聞いた方が早いって言われてな?」
「もー、ヒルダってば、丸投げなの?」
「いや、一応、王都ガイドブックは貰ったけど。えーと、、ヒルダさんと仲悪いの?」
「そうでもないわよ?よく組んで依頼をこなしたりもしたし。あっちは今は事務仕事が主だけど」
「Aランク冒険者の職員って多いのか?」
「多いと言うか、Aランクは大体ギルド職員になるわよ?」
「うん?どゆこと?」
「ギルド外からのAランク向けの依頼が少ないのよ。逆に冒険者ギルドからの信頼が無いと任せられない様なギルド関連の仕事は多いわ」
「ふむ?」
「だから、自分の依頼が無い時は職員として日常業務をしてる者が多いの。ギルド外で別の仕事に就いている者もいるけど」
「なんか、Aランクってメリットが無いんじゃ、、、」
「そんな事無いわよ。Aランクの職員は高給取りだし、管理職として出世の道もあるわ。そもそもAランク向けの依頼は高額報酬だから件数をこなさなくても稼げるし」
「そ、そうっすか」
「それにね、Aランク冒険者は社会的信用が高いから、ギルド外で仕事をするのにも有利になるわ」
「あー、商売とかか」
なるほど。アベルさんのパターンか。商才があれば稼げるんだろうな。
「ま、常時依頼扱いの賞金稼ぎを専門にやってる奴や、個人で情報屋、とかもあるわね」
「へー」
流石に詳しいな。
そう言えば、ノーラはどうなんだ?
「ノーラは職員じゃないの?」
「私も職員よ。外勤専門のね」
「そういうのもあるんだな」
それで受付カウンターとかに居ない訳か、
「まあ、職員の話はこれくらいにして、、、あなた、Bランクに昇格後はどうするの?」
「どうって?」
「ミドウッドに戻るの?」
「あー、いや、しばらく王都で活動しようかと?」
「あら、そうなのね」
王都で調べることもあるからな。
「じゃあ、王都に長期滞在ね。これは、宿選びもちゃんとしないと」
「あ、そうだった。よろしくお願いします、先輩?」
「ふふ、はいはい。どんな宿がご希望かしら?」
ノーラがクスクス笑いながら聞いてきた。
そうだなあ。
「安くて狭くて落ち着ける、信用できる宿、かなあ」
「あはは、ミドウッドの大鹿亭みたいな宿って事ね?」
ノーラが笑い声をあげた。
「高級で堅苦しい所はちょっとな?」
「なんとなく分かるわ。ギルド本部の裏に丁度いい宿があるから紹介してあげる。食堂は無いけど、いい宿よ」
「そいつはありがたい」
「でも、宿に行く前にご飯食べに行かない?ちょっと時間は早いかもしれないけど。いい店を知ってるわ」
「えーと、その、あんまり高い店は、、」
「やーねえ、近くの食堂街の店よ。そんなに高くは無いわ」
「それなら行こうかな」
「決まりね!」
早速、俺達はギルド本部を後にして、食堂街とやらに向かった。
王都の中心の方向に通りを進む。
「お店は中心街の高級店じゃなくて、食堂街の庶民の店だから堅苦しくないわよ」
「ふーん?中心街ってのは?」
「王都の中心部の高級店街よ。百貨店とか高級料理とか高級ファッションとかを扱ってる店が多いの」
「全部高級なのか?」
「そーよ!よく通るけど滅多に買い物はしないわね」
ノーラはクスクス笑った。
「俺には縁がなさそうだな」
「どうかしらね」
ノーラさん、笑いっぱなしですやん?まあ、いいけど。
「お店を教える代わりに奢らせようと思ってたけど、昇格祝いに私が奢ってあげるわ」
「え、いいのか?ありがとう」
「先輩冒険者の勤めよ」
ノーラはそう言って、ドヤ顔しておられるが、、さっきまで後輩冒険者に奢らせようとしてましたよね?
いくらか歩いて、次のブロックに入った辺りから、飲食店が増えて来た。食堂街に入ったらしい。
食堂や喫茶店以外にも、弁当の様なテイクアウト専門店や屋台なんかも並んでいる。
「さあ!ここよ!テンドン屋。ヤマト国料理なんでしょ?これ」
俺は固まった。
、、いや、王都で天ぷらが流行ってるって、ガモフさんが言ってたか。
「ほら、驚いてないで、入るわよ」
「お、おう」
さあ、何が出るのか、、
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