王都グレイバーン

第79話 冒険者ギルド王都総本部


 アベルさん達と別れて大通りを歩き、教えられた建物の前に来た。

 ここが王都の冒険者ギルド本部か。


 近くで見ると、いっそう立派な建物に見える。ミドウッドの領主館よりも大きい。

 六、七階建ての様だが、床面積が広い感じで、横幅がある。

 石造りだが、中世ファンタジー感は無い。近代寄りの外観だ。


 目の前の目立つ建物以外にも、その周りに小さめの建物が並んでいる。

 それらも含めて、鉄格子の柵で囲まれているから、全部ギルド関連の施設何だろうな。

 流石、冒険者ギルドの総本部だ。規模が大きい。


 俺が、少々ビビりつつキョロキョロしていると、正面の建物に立派なドアが並んでいるのが目に入った。

 事務員風や冒険者風の人達が出入りしている様だ。


 ここから入ればいいみたいだな。

 さてと、、、


 俺がどのドアから入ったものかと迷っていると、聞き覚えのある声がかけられた。

「あら、オーマじゃないの。なにボーっとしてるの?」

 声の方に振り向くと、ノーラが居た。

 今日は革鎧は着けていない。都会風の町の人と言った感じの小ざっぱりした服装だ。、、やっぱ、美人さんなんやな。


「久しぶりだな!ノーラ!奇遇だな、こんなところで会うなんて」

「やあねえ。奇遇はこっちのセリフでしょ。私の今の活動拠点は王都のギルドだもの。それに入り口前で突っ立ってると目立つわ。またお上りさんが来たのかと思ったわよ?」

「ぐぬぬ。確かにお上りさんかもしれんけど」

「まあまあ、地方から来て、初めて本部を見た冒険者はみんなビビるものよ」

 ノーラはクスクス笑いながらそう言った。


「いや、ビビってないし?ただ入り口が幾つかあるから、どれに入るかちょっと迷っただけだ」

 俺はそう言い返したのだが、、

「全部、受付ホールの入り口よ」

 また笑われてしまった。


「ほら。中に入るんでしょ。案内してあげる」

 ノーラの後について、入り口の一つから中に入った。

 そこで振り向いたノーラが、にっこり笑う。

「冒険者ギルド王都本部へようこそ」

 ぐぬぬ、ポイントを押さえてくるなあ。


「そう言えば、あなた、依頼で王都に来たの?」

「それもあるけど、Bランクへの昇格申請をしに来たんだ」

「あら、すごいじゃない!もうBランクなのね!」

「これから申請するところだけどな」

「申請できる時点で、ほぼ昇格確定なのよ。これはお祝いしないとね!」

「はは、ありがとう」

 そういや、ギルドマスターも、ほぼ申請が通る的な事言ってたな。


「よーし、申請書類の提出ね!先ずはあっちの一般受付よ!」

 ノーラが張り切っておる。


「それと、手持ちの依頼が片付いてるならそっちもね。ちゃんと完了証にサイン貰った?」

「お、おう」


 ノーラに連れられて、一般受付に行く。


 一階フロアのエントランスは吹き抜けになっていて。両脇にそれぞれ二階に行く階段がある。

 壁際には落ち着いた感じの装飾がされている。

 バナーが下がっていたり、祭壇風に石像が飾られていたり、肖像画があったりとか。

 控えめな感じに花なんかも飾られている。


 その奥は、元の世界の銀行や役所なんかの受付みたいな造りだ。窓口の数が多いな。

 ここが一般受付らしい。


 窓口の一つで、護衛依頼の完了手続きをして報酬を受け取る。

 次に昇格申請の話をして、通信筒を預ける。


「確認いたしますので、少々お待ちください」

 職員の人は、棚から綴じられた紙束を取り出すと、ペラペラと捲って、何やら調べ始めた。

 手馴れた手つきで、とても速い動きだ。まあ、パソコンとか無い世界だからな。手仕事の熟練度が高くなるのも納得だ。


 職員さんは、通信筒のラベルと紙束の内容を確認すると、紙に何か書き込んだ。

 ここでは、通信筒は開けないらしく、そのまま返される。


「では、この書類で指定された個別受付に申請書類を提出してください」

「はい、どうも」

 別の書類も来た?


「昇格申請はあっちの窓口でやってるわ。さあ、行くわよ!」

 ノーラに先導されて、奥の方の衝立で細かく仕切られた窓口のある方に向かう。


 さあ、昇格申請だ。

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