第76話 戦闘支援
気配を消して襲撃現場に近付いた俺は、目視と探査魔法で状況を確認する。
襲われている馬車は三台、その周りには縦長の大きな盾が並べて立てられている。
それに隠れる様に騎士風のが五人ほど、内三人は地面に寝かされている。
負傷者らしいな。
それと馬車の一台に一人いる。三台の内の真ん中だ。外からは姿は見えないが、探査魔法では普通に座っているように見える。
残り二台には人は居ない。
近くに鞍を付けた馬も居るが、一頭は倒れている。生きてはいるみたいだが。
街道の先には、道をふさぐように丸太が転がされている。あれのせいで馬車が止められたようだ。
襲われている側は、みな同じような金属鎧を着けている。馬車に紋章も付いているし、貴族を守る騎士なんだろう。
襲撃者は雑多な装備で、いかにも野盗と言った感じだ。
馬車から少し離れた所では、騎士10人と野盗15人で交戦中だ。
周りには野盗が五人ほど倒れている。
騎士達は数で負けている割には善戦している様だ。
ちょっと派手な装備の女騎士みたいなのもいるな。
さらに離れた場所には木に隠れて、馬車の方へ弓矢を撃っているのが五人ほど。
それとは別に五人ほどが森に隠れるように固まっている。
こいつらは逃げるでもなく攻撃するでもなく、そこに留まっている様だ。
見物人ではないだろうし、あれがバリーさんの言っていた伏兵かな。
それとも関係のない他の旅人かなにかか。
うん。騎士の方が数で押されてきているし、助けに入った方がよさそうだ。
まずは、弓士をなんとかした方がいいだろう。
こっそり弓士の居る所に近付き、木に登る。魔獣に忍び寄るよりずっと簡単だ。
さて、どうしたものか。
流石に人にマジックミサイルを撃ち込む気にはならないが、、、
なにか非殺傷で無力化出来るやつ。、、スタンガン的な?
、、電気か。ゲームなんかで雷の球とかで麻痺の状態異常を起こす魔法があったな。
魔力を込めてイメージする。
放電する雷を火球っぽい感じでソフトボール大にまとめる。見た目はゲームでの見た目そのままだ。
威力は、、どうするかな。
そう言えば、雷撃は威力が中途半端で獲物を仕留めるには弱いって、ゴブリエルが言ってたな。
魔力を込め過ぎなければ大丈夫か。
木の上から、敵の弓士達の居る所に雷球を放り込む。
着弾した雷球が破裂して放電すると、弓士達がバタバタと倒れた。
素早く木から降り、確認する。
よし、生きてるな。気絶しているみたいだ。
倒れた弓士達を収納魔法に入っていた縄で近くの木に縛り付ける。
念のため、周りに落ちている弓と矢を収納魔法に放り込んでおく。
とりあえず、ここはこれでいいな。
よし、馬車の方に行くか。
馬車に近付いて、近くに居る騎士に話しかける。
「助っ人に来たぞ!」
「お、お前は誰だ!?それにいつの間に、、、」
流石に驚いている御様子。
俺は冒険者タグを見せながら言う。
「俺はオーマ、後ろの方にいる商人の護衛の冒険者の一人だよ。助っ人に来た。要らないなら戻るが」
「ひ、一人だけか?いや、一人でも助けは欲しい。だが、無理はするなよ?お前が命を懸けることじゃない」
「わかった。やばそうになったら退かせてもらう」
慌てているせいか、すんなり信じてもらえた様だ。
この騎士は結構若い。俺と同じくらいの年かもしれない。
俺は寝かされている怪我人に目をやる。
「怪我人の治療は?」
「回復ポーションを飲ませたが、まだしばらくは時間が掛かる」
飲ませたのは上級品じゃないらしいな?
矢が刺さったままの負傷者が居るのに気が付いた。
「あの矢は抜かないのか?あれじゃあ、ポーションとか使えないんじゃ?」
「刺さった場所が悪いんだ。無理に抜けば大出血ですぐ死にかねない。今は落ち着いて治療出来ないし、、」
「しかし、このままじゃあ、、」
絶対ヤバいだろうな。セインさんを発見した時の事を思い出す。
「分かってるよ!でも、矢を抜いて、ポーションを飲ませても、回復が間に合うかどうか、、、」
そう答えた騎士の顔は半泣きだ。
「俺がやってみようか?」
「お、おい?」
俺は矢が刺さったままでぐったりした男に近付いた。顔色はカナリヤバい感じだ。
収納魔法から回復ポーションを二本取り出す。、前にセインさんに使った奴だ。こいつの回復速度は確認済みだからな。
「お、おい!何をする気だ!」
俺は怪我人にポーションを飲ませると、刺さった矢を収納魔法に仕舞って除去した。
素早く矢傷の方にも回復ポーションをかける。
すぐに傷がふさがり、顔色もマシになって来た。エリクサーは必要なさそうだな?
「そ、そうか、収納魔法か。それにそのポーションは、、」
「ちょっと良いやつだよ。こいつを使ってくれ。代金は後で貰うから遠慮なく使っていいから」
俺は回復ポーションの小瓶が詰まったケースを渡す。在庫は多いから1ケースくらいは大丈夫だ。25本入りのお徳用だぞ?
「他の怪我人には、ポーションを飲ませてあるぞ?」
「まだ動けないんだろ?向こうの茂みの後ろの方に五人ほど隠れてる。伏兵かもしれない。警戒しておいてくれ」
「なんだって?」
「俺はちょっとあっちの助っ人に行ってくる。こっちがやばそうなら戻って来るよ」
野盗の本隊と交戦中の騎士達に目をやる。
女騎士が大柄な野盗二人を相手にしている。あれにするか。
相手二人はAランクには及ばないがかなりの強さだろう。
女騎士は、もっと強そうだが、二対一だからな。
相手二人の内、斧を持った方に奇襲を仕掛けるか。
俺は走って接近すると、相手の手前で地面を蹴り、一気に距離を詰める。
相手は、俺に気付くとニヤリと笑って武器を振り上げる。
「はっ!素人が!」
そう叫んで思い切り武器を振り下ろして来た。
確かにやたらと飛び跳ねるのは良くないけどな?これ飛行魔法なんですよ。
俺は攻撃をかわして飛び上がり、武器を振りぬいた相手の無防備な後頭部目掛けて降下する。もちろん防御魔法マシマシだ。
相手は地面にめり込む。
さらに、呆気に取られているもう一人に向かって飛行魔法で水平に突っ込む。
もう一人は簡単に弾き飛ばされて向こうの木に叩きつけられて目を回した。
「これで良し、と」
二人制圧完了だ。
「あ、あなたね!いきなり無茶な事を!」
女騎士が喚く。
「助っ人です。二人倒したのはサービスです」
「あのねえ!」
向こうで乱戦中の連中も呆気に取られている。
だが、別の方はそうではない様だ。一応、探査魔法で警戒していたからな?
「伏兵が動いたな」
「伏兵ですって?!」
女騎士の叫びを残して、俺は馬車の方に走る。
馬車の周りを固めていた騎士に注意を飛ばす。
「伏兵が来るぞ!」
「了解だ! 」
馬車の周りで横たわっていた連中も一斉に起き上がり、馬車の周りを固める。
俺は勢いのまま馬車の屋根に飛び乗り、そのまま防御魔法を馬車に掛ける。
伏兵の方は近くの茂みの裏まで近付いている。そのまま突っ込んでくる勢いだ。
迎撃は、、弓士に使った雷球でいいな。
茂みから飛び出して来た伏兵に向かって雷球を放とうとした時、連中がバタバタと倒れた。
あれ?まだ魔法撃ってないよ?
いや?伏兵とは別の反応がある。しかも強い?
俺は身構え直した。
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